辺境伯邸にて その3 魂識士とは
プロローグ章がもう少し続きます
「さ、話がそれたな。話に戻ろうか」
「何を話されるんです?」
「サラサさん。この世界に起きていること、我々の大義を話すよ。よし、マルファス、まずはそなたから頼む。それから事前に話をした通り、礼儀とか関係なしに質問などはしてくれて構わない」
「はい。説明いたします。とはいえ、どこから話をしましょうか・・・」
喋るのが上手なマルファスさんでも迷うことがあるみたい。
「まず、魂識士についてだな」
「今更ですか?」
「いや、多分知らないだろうから、聞いてくれ。私を含めて、現存する魂識士は3名。3人で世界中を旅しながら、各地で魂の鑑定儀式を行っている。なぜ、こんなことをしているのか、わかるかな?」
「そりゃあ、各国の国王からそう仰せつかっているからなのでは。なぁ、バトス?」
「ジャッジ、そりゃそうだが、それは手段であって、目的じゃない。確か、各国が勇者を探しつつ、黒い魂を持つ極悪人になりそうな人材を事前に見つけるため、ではなかったでしょうか」
「ジャッジさん、バトスさん。両方、正解だ、だがな、それだけではないのだ」
何を当たり前の話を。
とマルファスさんは言う。
「というと?他に目的があるんですね」
バレッタが先を促す。輝度☆3魔法職の彼女はかなり賢い部類だ。
勿論、知恵の指輪のおかげで皆賢くはなっているんだけど。
「流石だな、バレッタ嬢。勇者や、その仲間が全力で戦うためには、過去に使われた伝説の武防具に力を借りる必要があるんだ。だけど、伝説の武器は安易に使われないように、色々な形、普通の武器などの姿をしているんだ。逆に本物そっくりの偽物も多数あるしな。本物を探すのも我々の仕事なのだよ」
「な、なるほど。確かに物の魂が見れるならそれも出来るんですね」
「そうだ、だが私を含め、現存の3人の魂識士には、見つけることは出来ても、力を借りるとかまでは出来ないのだよ」
マルファスさんは探せるけど使えないという。
これはどうしたことか?とカレンも身を乗り出し質問をしだす。
「は、話が見えないです。では、なぜ、魂鑑定の儀式を行っているのです?」
「探しものがもう一つあるからだ。我々は、最高輝度の魂識士を探しているんだ」
「ん?勇者や、武具を探していて、さらに魂識士を探しているんですか、魂識士なら3人いるんでしょ」
「アッシュ君。正解だ。だけど、魂識士は他の型と違い、輝度によって全く違う性能なんだよ。また、魂識士は唯一輝度を上げることが出来ないんだ。要するに、私達現存する3人の魂識士では、目的を果たせないわけだ」
「そうなんですか、知らなかったです」
「魂識士にしか伝わらない情報だからな。まとめると・・・こんな感じだ」
マルファスさんは紙に何かを書き始めた。それを見ると
☆1 色、形を見ることができる
☆2 ステータス、その他情報を見れる
☆3 輝度を見れる
☆4 魂に干渉できる
☆5 魂に共鳴出来る
(一時的な魂の型、色のコピー)
魂を自在に操れる
魂の封印、封印解除が出来る
武器や道具の魂を対象に付与出来る
動きを把握、縛り、加速出来る
魂を指揮下に置くことが出来る
と書いてある。難しいな。
でも知恵の指輪のおかげか、何となくはわかる。
「魂識士を名乗れるのは輝度☆3以上で、かつ、透明、無型の魂を持つもののことなんだ」
「輝度がわからないと魂識士になれないからですか」
「そうだ。型と色は自分の物に対象の魂を映して把握し、輝度は自分のと比較するんだよ。それが輝度☆2以下は出来ない。だから輝度☆2以下は透明、無型でも魂識士とは言わない」
「なるほど、魂鑑定はそうやっていたのか・・・」
「マルファスさんは輝度☆いくつなの?」
「輝度☆4だよ。先程、リオン嬢にやってみせたのは魂への干渉だ。干渉では、一時的な輝度の付与、剥奪を行うことです。付与といっても、元に戻すだけだがな」
「い、一時的!?ねぇ、なら私は輝度☆4にいつ戻るの?ねぇ!」
「私が決める。最長で私が生きている限りずっとだな。まともにハートの魂を操れる清らかな心を持ったときに返そう」
一時的に血気盛んになったリオンだが、
すぐに輝度☆4に戻れないことを知ると、
青ざめて大人しくなった。
「つまり、私は魂識士の輝度☆4だ。伝説の武具に眠る魂を起こすには、輝度☆5の魂識士が必要になのだよ」
「じゃあ、他の魂識士の方も、☆4以下で足りないという話ですか」
「そうだ。我々は輝度☆5を持ち、透明、無型の魂を探していた。ちなみにその人材を我々は【魂指揮士】と呼んでいる」
「探していた?なぜ、過去形なんです?」
お父さんが聞いた質問にマルファスさんは答えず、
静かに僕を見ていた。