勇者召喚に巻き込まれて能力がアイテムボックスしかなく、嘘をついたら城を追放されてしまった。そのあとに冒険者ギルドで絡まれるがアイテムボックスのチート能力で逃げ切れた件。
この作品を読んだ機会に、僕の他の作品も読んでもらえると嬉しいです。
「よくぞ参られた勇者たちよ」
王冠を頭に乗せ、煌びやかな赤いマントを付けた絵に描いたような王様が両手を広げ俺たちを歓迎する。
「さあ、歓迎しよう!我がテーキィトゥン王国に!」
「ツイフォーン王よ、お待ち下さい!召喚に予定していた人数よりも一人多いようです」
「なに?うむ、オーヨ大臣の言う通り確かに一人多いようだ…」
王様は周りにいる俺と、同じ学生服を着た男女を見る。
「むぅ…つまり一人は巻き込まれたということか」
「……」
巻き込まれたって…最近のラノベでよくあるやつだ。
そんでステータス見たら能力がゴミ、もしくは職業がカスの奴が追放されるんだよな。
「王よ、ステータスを見れば直ぐに分かるかと…」
「うむ、そうだな。召喚された勇者たちよ、この世界に召喚した目的を話す前に先ずはお主らの中にいる勇者ではない者をハッキリとさせておきたい」
「では召喚されし勇者よ『ステータス』と念じてみてくれ」
キタキタキタ…!これで俺の命運が全て決まる。
俺の周りの四人が「おぉ・」とか「なにこれ…?」など驚き始める。
俺も心の中でステータスと念じてみる。
吾唯手 武士17歳
職業 仕立て屋
能力 アイテムボックス
【あらゆるものを無限に出し入れ出来る】
ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇっぇぇ!!!
仕立て屋って!俺じゃん!!絶対に追放される奴、俺じゃん!
「僕の職業は勇者でした」
「うむ」
「俺は格闘家だ」
「うむ」
額に冷や汗が大量に流れ出す。俺より下の職業なんて存在するのか?
「私は聖女でした」
「うむ」
最後はメガネをかけたオドオドとした女の子だ。ワンチャン、もしかしたら最後の女の子が村人だったら俺がロケット鉛筆の原理で上にいけるかも…!!
「わ、私は女神でした…」
ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇっぇぇ!!!
メガネの少女は顔を赤くして答える。
いや女神って!職業じゃなくね?!そこは盗賊とか魔法使いじゃねぇ?!
寿司、なにが食べたい?って聞かれてみんなが「マグロ」とか「ホタテ」って言ってるのに「大将」って言ってるようなもんだぞ!寿司を握る大将を言うなんて反則だろ!
「女神…おおおぉ!このテーキィトゥン王国は安泰じゃあああ!!」
周りの兵士や大臣が拍手をする。
しばらく拍手が続き、静まり返ると王様は俺を見つめる。
「すまなかったな、してお主の職業は?」
完全に俺に対して興味なくなってるじゃねぇか!
「俺は…」
どうせ元の世界には帰れないのが鉄板の流れだ。
ここで仕立て屋なんて言えば、勇者の服や王様の服を仕立てるだけの人生を送らなければいけなくなる。
それならば村人とか言って外の世界に出て俺の地球の知識を使って無双した方が良いに決まっている。
「村人です」
「此奴をつまみ出せ」
兵士二人が俺の両腕を掴んで持ち上げると城の外へと投げ出される。
「これで一ヶ月分の金と数日分の服だ。有り難く受け取れ」
俺に金の入った汚い袋と汚い布を投げ捨てる。
「はぁ…」
まあ予定通りだ。これであとはマヨネーズの作り方とか美味い料理でも作れば俺の人生は安泰だ。
「ラーメン美味しいよ〜」
「お好み焼きいかがですか〜」
ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇっぇぇ!!!
あるの?!!マヨネーズあるの?!ラーメンあるの?!
こんなことなら王様の仕立て屋になれば良かった!
「こういう時は冒険者ギルドだ。すみません、冒険者ギルドってどこですか?」
「冒険者ギルド?この先を真っ直ぐ行ったらカレー屋があるから、そのカレー屋を右に曲がってしばらく行くと寿司屋が見える、その隣に冒険者ギルドがある」
「……ありがとうございます」
日本の飲食店がほぼ全部ある。俺が飲食で無双するのは夢のまた夢だな。
説明された通りに道を進んで行くと大きな建物に到着した。
中に入ると筋肉隆々の半裸や薄着の男たちが酒を呑みながら話していた。
「冒険者になりたいんですが」
カウンターに居た20代ほどの可愛らしい女性に話し掛ける。
「名前と職業は?」
受付嬢は無愛想に質問してくる。
「タケシです。職業は仕立て屋です」
「仕立て屋…?正気ですか?冒険者になる人は基本…いえ、アナタも色々あるんでしょう」
受付嬢は紙にスラスラと書いていき、金属のプレートを机に置く。
「銀貨5枚になります」
「これで」
王からもらった手切れ金の入った袋から金貨を一枚取り出す。
「お釣りです」
数十枚になった銀貨を受け取りポケットに突っ込む。
そういえばアイテムボックスに仕舞えるのでは?
俺はアイテムボックスに入るように念じるとポケットの中に入れた銀貨が消えた。
取り出したいと念じると手に銀貨の感触が伝わる。
「おい待ちな!」
冒険者ギルドを後にしようとしたら後ろから声を掛けられる。
振り向くと、全身を鎧で包んだ男と腰に剣を装備している汚い格好をした男が立っていた。
これは冒険者ギルドあるあるの、絡んできた奴を倒して実力を冒険者ギルドに見せつけるイベントだ。
「こっちに来てもらうぜ」
逆らえるわけもなく俺は、冒険者ギルドの外の路地裏に連れて行かれる。
俺の巻き込まれ異世界生活オワタ。
「有り金全部出してもらえるかな?」
鎧で包んだ手を出してくる。
最悪だ。今、全財産を失えば俺は生きていけない。アイテムボックスに隠して嘘をついたところで、こいつらは俺が大金を持っていることは知っているから直ぐにバレる。
「俺が優しくしている間に渡した方がいいぜ」
最悪だ。アイテムボックスなんてあっても意味がない。こんなものなら魔法が使えるだとかのチート能力が欲しかった。
「兄貴、一発殴って分からせてやった方が良いんじゃないですか?」
「そうだな」
アイテムボックスなんて、なんでも出し入れ出来るだけじゃないかよ。
「それじゃあ一発…」
なんでも出し入れ?それって人の物もいけるんじゃねぇ?
俺は男の全身鎧を見つめる。
「おら!」
男が振り下ろした拳をギリギリで避ける。
この可能性に賭けるしかない!
「くらえ!収納!」
全身鎧を着ていた男がシャツとパンツ姿になる。
「なんだ?!俺の鎧が消えた?!」
「やった!成功した!」
男は自分の姿を見て驚いている。
このまま戦っても勝てるかどうか分からない。ならばここは…。
「逃げる!!」
俺は男たちが慌てふためいている間に走り去る。もう一人の男の横を通り過ぎる瞬間に剣や服も収納する。
「ざまあみろ!正義は勝つのだ!」
おすすめの宿屋やクエストについて聞きたかったので、もう一度冒険者ギルドに戻ってきた。
「あの…」
「カーマッセから逃げてきたんですか?!」
「カーマッセ?」
「さっきのレベル6の実力の冒険者ですよ」
たぶんマックス10と考えると中々強いんじゃないのか?
「とりあえずクエストとおすすめの宿を教えてください」
「でしたら、このゴブリンの討伐がオススメで宿屋はここから出て左に真っ直ぐ行くと【羽休め】っていう宿屋がありますよ」
「どうも」
俺はクエストの書類を受け取り、冒険者ギルドを後にする。
次の日、テーキィトゥン王国から出てクエストの書類に書かれている場所へと向かうとゴブリンが数体歩いていた。
「なんでも取り出せるんだよな…」
俺はゴブリンの胸元に神経を集中させる。
「収納」
ゴブリンが血を吐きながら倒れる。すると周りのゴブリンが騒ぎ出す。
「成功した」
俺がアイテムボックスに収納したのはゴブリンの心臓だ。
俺のアイテムボックスは最強だ。相手の装備だろうが心臓だろうが何でも収納出来る。
「俺の巻き込まれ異世界生活安泰だ!」