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修吾に彼女が出来た?

 

 ある日の学校──朝っぱらから修吾の甲高い声が学校中に響き渡った。


「修吾、彼女出来たのか!!」

「そうなんだよぉ!!はっはっは!」


 異常なまでの狂った笑いにみんな引く中、金城と義威子だけは話を聞いていた。

 そして聞いていないのにいきなり写真を二人の前に突き出してきた。


「この子なんだ!!可愛いだろぅ」


 その写真には清楚で写真からもその茶色くサラサラな長髪が分かり、整えられた綺麗な顔が特徴な女の子であった。服もキラキラとしたダイヤが散りばめられたドレスを着ており、美人であり金持ちなのが丸わかりであった。

 その写真に金城も義威子も唖然としていた。


「マブイじゃねえか」

「この子って確か最近転校して来た子よね。隣のクラスの」

「マジ?最近!?」

「そうよ。来た日は男子が血眼になって教室に張り付いていたのよ。名前はノリコちゃんよ」

「そんな事あったっけ?」

「あったのよ」


 まだ高笑いを続ける修吾は更にテンションが高まって来た。


「今週の土曜日、二人でデートなんだよ!!最高のデートにして、ノリコちゃんのハートを鷲掴みにするさ!!」


 いつになくハイテンションな修吾は高笑いをしながら教室を出て行った。

 周りの生徒達が気味悪がって離れる中、金城はその写真をジッと見つめていた。


「どうしたの?金城もその子に惚れたの?」

「この女、何か裏がありそうだなぁ」

「写真だけじゃ分かんないわよ。嫉妬はよしなさいよ」

「俺の感で、修吾に危機が迫っている!!こいつはやばい顔をしている!」


 金城が言うと義威子がニヤリと笑う。


「なら、日曜日二人を追うかい?」

「良いねぇ。追うか」


 二人は手を握りしめて、硬く約束を交わした。


 *


 さらに次の月曜日──二人が修吾のデートを見に行った事を蓮と大知に話していた。


「何か良い収穫はあったの?お二人さん」

「あったあったよ」

「へぇ、どんなの」


 だが、金城の顔はどこか不満そうな顔であった。


「ショッピングショッピングショッピングショッピングショッピングショッピングショッピングショッピングゥゥゥ!!三時間だぞ!?三時間も同じ店でショッピングだぞ!!それでデート終了!」

「そりゃあデートなんだから、何に時間かけてもいいだろ」

「だからってシャーペン一本で一時間同じところにいたんだぞ!喉が詰まる所だったぜ」


 義威子も金城の意見に反応する。


「デートした事ないあんたに分かる訳ないわよ。あんな事していても一時間なんてあっという間に過ぎもんなの。モテないあんたにゃあ一生涯分かんないわよ」

「おめぇに言われたかねぇわ」

「そうねぇ」


 二人が睨み合っていると朝のチャイムが鳴り、二人は大人しく席へと戻って行った。

 そしてホームルームが始まる直前に修吾がのっそのそとおぼつかない足取りで教室に入ってきた。

 周りの生徒達が挨拶するも軽く手をあげる程度で、そのまま椅子に座り込んだ。


「遅いな修吾。またデートでお疲れかい!」

「……いや……寝不足でね……一時間も寝てないかもしれない……」

「一時間しか?何でだ!?」

「それがな──」


 *


 土曜日の夜──深夜にもなり勉強中だったが、流石に寝ようとベッドに横たわり電気を消そうとした修吾。

 そんな時にスマホが振動し、突如連絡通知が来た。


「ん?金城からか?」

『修吾君。今度のお昼一緒に食べる?』


 それはノリコからのさりげない連絡であった。


「ノリコちゃんか……もう寝るから朝返信しよ……」


 眠い為、連絡を入れるのはやめて電気を消して布団を被って寝ようとした。

 その時──再びスマホが振動した。


『修吾君。貴方私の連絡無視して、寝ようとしているわね』

「えっ!?」


 まるで名探偵のように当たられて思わず周りを見渡す修吾だが、もちろん誰も確認出来なかった。


「き、気のせいだよな」


「修吾君!!」

「ふぇ!?の、ノリコちゃん!?」


 修吾の上に跨っていたのは、ナイフを首元に突きつけていたノリコであった。その目は限界まで見開いており、歯を激しく噛み締めていた。

 何が起きているのか理解出来ない修吾は、必死に説得しようとする。


「ど、ど、どうしたのノリコちゃん!?と、とりあえず落ち着いてよ!!」

「私の連絡無視して彼氏が務まると思うのぉぉぉ!?」

「いやいやいやいや!訳が分かんないよ!」

「務まらなきゃあ!殺す!」

「色々矛盾しているよ!!」



 *


「てな訳なんだ……」

「こりゃあ傑作だ!はっはっはっは!」

「笑いことじゃあ──」


 ツッコもうとした修吾だったが、力なく椅子から転げ落ちた。


「おいおい大丈夫か?」

「頼む金城……あの子から引き離してくれ……あの子、お前の彼女にしていいから」

「そんな危ねえ奴、彼女したくねぇよ。それよりも報酬だよ。報酬」

「報酬……守り切ったらお年玉の残り5000円と購買部の100券5枚あげる……だから──」


 そう言うと修吾は再び椅子から転げ落ちて、机の角に激しく顔をぶつけた。痛いの一言も言わずに、死んだように眠りについた。

 慌てて義威子が拾い上げた。


「修吾君!?寝ちゃった?」

「ふっ、その依頼!!承った!!精鋭を連れて守り抜いてやる!!」



 *


 その日の夜──金城は精鋭を何人か連れて修吾の家に集まった。

 だが、修吾の方は何処か曇っていた。


「精鋭を連れて来るって言って期待したが、何だよ……」

「他の奴ら誘っても、断られたんだぜ。しょうがないだろ」


 部屋の隅に座り込んでいたのは蓮と大知であり、どちらとも不満そうにしており、大知が金城に指差して怒りを表した。


「修吾の家で遊ぶって聞いて、喜んで来たらこれだよ!!危険なメンヘラ女から修吾を護衛だぜ……」

「僕だって、誘われて喜んで来たら護衛なんて……」


 修吾はすぐに土下座をして説得を始めた。


「お願いだから、お願い!俺に安眠をくれぇぇぇ!」


 必死の説得に二人は渋々護衛をする事になった。

 すぐに大知は


「おいおいこりゃあ……思った以上にやばいなぁ」


 大知が部屋の隅から発見したのは小型のカメラであった。


「それってカメラ?」

「あぁそうだ。テレビとか使う隠しカメラの類だ。修吾、ノリコちゃんを部屋に連れてきたことは?」

「まだない」

「つまり、いつの間にかお前の部屋に侵入して、カメラを仕掛けたって訳だな。それも大量にね。探せば、まだまだあるだろうな」

「マジかよ……」

「しかも、この音声も光景もノリコちゃんに筒抜けだな」


 何とか部屋の中にある計87個の小型カメラを全て取り除いた。

 金城は呑気に棚から適当な漫画を取って読んでいた。


「お前はよく読めるな。こんな状態で。ノリコちゃん来るかもしれないんだぞ」

「んなもん大丈夫だって。来たって俺が追い返してやるからよ。安心しなって」

「お前の想像を絶する子なんだよ……」


 それから30分の間何も起きず、大知が窓の外に家から持ってきた複数の監視カメラを設置して、ノートパソコンで異変がないか確認していた。


「大知、何か異変は?」

「今のところないよ──ん?」

「どうした?」

「いや、カメラの一つが故障したのかな?映らなくなった?」


 突如監視カメラの一つが映らなくなり、外を覗こうと立ち上がった。その時、別の監視カメラも映らなくなり、更に設置した全てのカメラが瞬時に映らなくなった。


「何が起きているんだ?」

「ま、まさか……」


 修吾は前日の記憶が蘇って震え上がり、恐怖に慄いて布団の中に隠れてしまった。

 金城達もこの異様な事態に、部屋の中には重苦しい空気と緊張感が漂った。

 身体に寒気が走った。全員が思った。この近くにノリコがいると。


「みんな分かってると思うが、来るぞ」

「うん」


 気を張る3人。

 その時突然窓ガラスが割れ、邪悪な笑みを浮かべたノリコが部屋に飛び込んできた。


「キタァ!!」

「修吾君んんん!仲間を呼んだのねぇぇぇ!!それにカメラまで見つけて!」

「ひぃぃぃ!!」


 まるで猛獣が狩をする時のような鋭い目と捕食しようとふる牙。爪を立てて修吾に近づこうとするが、その前に金城が立ち塞がった。


「おいおいヒステリック!そこまでだ!」

「あんたは修吾君の何よッ!!」

「俺らは修吾の用心棒だ。痛い目遭いたくないならとっと帰りやがれ!!」


 そう言って金城は臆せずバットをノリコに突きつけた。だが、次の瞬間、突然持っていたバットの先端が切り落とされた。ノリコの手にはナイフが握られており、そのナイフによって切り落とされた事を理解し身体中から冷や汗が流れて先程の威勢は消え去った。


「……えっ?」

「貴方らがいると修吾君の悪影響なのよ!!死んでもらう!!」


 鬼のような恐怖の目つきにビビり、部屋の隅に逃げる金城。そして慌てて手招きをして隠れている大知達を呼ぶ。

 だが、誰も来ず蓮は嫌々首を振っていた。


「蓮やれ!!」

「い、嫌だよ!!やっぱり来るんじゃなかったぁぁぁ!!」

「とにかく行け!」


 無理矢理蓮を引っ張ってノリコの前への投げ飛ばした。

 蓮はナイフをチラつかせてからノリコを落ち着かせようと、ゆっくりと近づいた。


「の、ノリコちゃんさん。とりあえず落ち着いてね。まず深呼吸。スーハー、スーハー」

「邪魔よ!」


 蓮は軽々と投げ飛ばされて押し入れに突っ込み、そのまま一撃ノックアウト。

 そして金城にナイツを突くノリコだが、金城はノリコの腕を掴み、無理矢理受け止めた。だが、パワーはノリコの方が上で、ナイフは徐々に金城の首へと近づいて行く。


「くっ!この女パネェパワーだぜ!」

「中々やるわねぇ。あんた!」

「俺が押さえている内に何とかしろ!!って誰もいねぇじゃねえか!!」


 部屋にはノリコと金城以外誰もおらず、二人っきりで戦闘を繰り広げていた。


「へへへ!あんたは裏切られたのさ!死ね!」


 ナイフを喉に力強く押し込もうとしたした瞬間──


『こちらは警察である!!貴様はすでに包囲されているぞ!!』

「警察だと!?チッ!!」


 部屋の中に響く警察の警告の声。ノリコは危険を察知して、咄嗟に窓ガラスを突き破り、修吾の家から逃げるように猛スピードで走り去って行った。

 静まり返った修吾の部屋。金城は今起きた出来事に恐怖して数分間の沈黙が続いた。


「これは大知の仕業だな」

「その通り……何とか作戦成功だね」


 天井裏から出てきた大知と修吾。二人共埃まみれながらも安堵の表情を浮かべていた。


「奴は逃げたようだが、警察っていたのか?」

「いや……僕が念の為に録音しておいた音声だ。これが功を奏したって訳だ」


 大知がスマホを取り出し、そこに録音しておいた警察の音声をノリコは勘違いして逃げて行った訳であった。

 安心したのか、修吾は気が抜けてぐっすりと寝ていた。


「呑気に寝てやがるぜこいつ……」


 ヘトヘトになっているのは修吾だけではなく、蓮は恐怖でパニックになっていた。


「にしても、どうするの?あの子怖すぎだよ!!修吾君を守れても僕らの身がもたないよ!!」

「たしかに……あんな女、まともにやり合ったら勝てる訳ないよな。どっか遥か遠くに飛ばせれば、帰って来れないだろうけどなぁ」


 その言葉に大知も頭を悩ませていた。


「そんなもん、ある訳──待ってよ、一つだけ当てがある!」

「本当か!?」

「あれの威力は強力だ。上手く行けば……」


 *


 次の日──学校に行くと、ノリコは普通に修吾に接しており、昨日のことはまるで無かったように楽しそうに話していた。だが、修吾の顔は常に引き攣っており、不安そうな顔が見て分かる。

 その間、金城と蓮は図工室にてある物を調達していた。


「勝手に拝借して大丈夫なの金城君?」

「良いんだよ。平和のためなら、一つくらい別に大丈夫だろ」

「そうかなぁ?」

「失敗したら次こそ殺されるしかないんだぞ」


 そして屋上にいるパソコンを弄っている大知と合流した。


「あの物は持ってきたか?」

「あぁ、これだろ。ペットボトルロケット」


 金城らが持ってきた最後の秘技──それはペットボトルロケットである。


「これであの女をドカーン!っとぶっとばす訳だな」

「そう。ペットボトルロケットは威力次第では人間だって飛ばせる威力を持つ!それであの子を黒腹市から遠い町へと飛ばすって作戦よ!」

「今日の夜、決行するぞ!」


 夕方──四人は人気のない公園にて集結した。

 それはまるで密会のようにこっそりと、トイレの裏にて行われた。


「修吾、お前を助けるのは癪だが、俺らにとってもあの女は脅威だ。だから、この町から消えてもらう事にした」

「え?消えてもらう?」

「なぁに、手荒な真似はしないさ。多分な」

「……あんまり良い予感はしないが、今はもうお前に託す……」

「分かった!」


 *


 そして夜──修吾は一人、部屋でゴロゴロしていた。

 修吾は10時になるのを確認すると、立ち上がり外へと出た。

 外へと出ると、やはりノリコの気配を感じて、やや早歩きになった。だが、それに合わせてノリコも速度を上げていく。

 そして修吾が角を曲がると、そこから金城と蓮の二人が現れた。


「ノリコ!お前がいるのは分かっているぞ!俺らを捕まえたみろ!」

「そ、そうだぁ……」

「お前の修吾は逃げたぜ!俺達を捕まえたら教えてやるよ!」


 そう言うと二人は一斉にノリコから逃げるように走り出した。

 すると屋根の上から見張っていたノリコが飛び降りてきて、爪を立てて金城らを猛スピードで追いかけ始めた。


「コロス!!」


 そのスピードは凄まじく、瞬く間に金城らとの距離を詰めてきた。


「予想以上早いよ!あの子!」

「くっ!これは予定より早く学校に到着するしかないぞ!」


 金城は走りながら学校にて準備している大知へと連絡を入れた。


「準備はまだか!」

『まだ時間かかるよ!やっぱりぶっつけ本番はダメだって!』

「そんな事言ってたら、修吾も俺らも命がいくらあっても足りねえよ!」

『とにかく後20〜30分は掛かる!』

「分かった!時間を稼ぎつつ、学校に逃げる!」


 電話を切ると、蓮の顔を見て悟った表情をした。

 蓮からすれば嫌な予感しかしなかった。


「蓮よ、尊い犠牲になってくれ」

「え?」


 走りながら蓮を突き飛ばして、そのまま学校へと走って行った。


「金城君!!」

「生きて帰って来たら、ラーメン奢ってやる!大盛り無料でな!」

「それ僕があげた券だよ!」


 蓮は背後から気配を感じた。

 それは紛れもないノリコであり、その姿は今の蓮にとっては悪魔のように見えた。


「お、落ち着こうよ。ノリコちゃ──」


 ノリコは蓮の足を掴むとタオルを振るように軽々と振り回した。


「うわぁぁぁぁぁぁ!」

「消えろ!」


 ノリコに軽々と投げ飛ばされた蓮。オリンピック選手真っ青な威力であり、空気が抜けた風船のように飛んでいく。

 金城を簡単に追い抜かして、学校にへと飛んでいった。


「一足先にご到着かよ。ってことは俺だけ!?」

「キシャァァァ!!」

「うわぁぁぁ!!」


 金城は更に速度を上げて学校へと逃げた。

 学校へと到着すると、転がっていた大きめの石を投げてガラスを割って校内に無理やり侵入し、大急ぎで適当な教室へと逃げ込んだ。


「何処よ!あのガキャア!」


 ノリコは色んな教室を荒らしながら、金城を兄の形相で探し回っていた。

 金城は教卓の下に隠れて、隙を見つけて大知へと電話をかけた。


「まだか!ノリコ、学校破壊し回ってるぞ!」

『もうすぐで出来るから踏ん張ってくれ!』

「んなこと言ってもよぉ!」


 その瞬間、嫌な気配が感じると教卓が簡単に持ち上げられて、目の前から笑みを浮かべたノリコがいた。


「い、いやあ……こんばんわ」

「修吾君は何処ぉぉぉ!!」

「ギャぁぁぁ!!」


 電話は金城の悲鳴と共に途切れた。

 その声はまさに断末魔の叫び声で屋上にいる大知と一足先に着いていた修吾、そして投げ飛ばされたはその声に慄いていた。


「金城君やばいんじゃない!?」

「……」


 修吾は震えながらも、屋上から飛び出して下の階へと降りて行った。

 突然の行動に大知も驚いていた。


「嘘だろ、修吾!?」


 金城が大ピンチになり、ノリは馬乗りになりながら金城にナイフを再び突き立てていた。

 ジワジワとナイフが迫り、今度こそ覚悟した。


「シネシネシネ!!」

「いやぁぁぁ!!」


 その時、教室のドアが勢いよく開いた。

 そこには修吾がいて、覚悟を決めた顔をしており、ノリコも修吾を見るなりナイフが止まった。


「修吾君……」

「ノリコちゃん。俺は君が嫌いだ!」


 その言葉にノリコは固まり、全ての力が抜け落ちていた。

 修吾は一心不乱に走り始めた。

 我に返ったノリコは顔を真っ赤にして全速力で追いかけた。

 金城も何が起きたか分からず、静まり返った教室で呆然としていた。


「……急いで、屋上に向かおう」


 修吾の足の速さは学年一。ノリコから何とか逃れている。そのまま屋上へと逃げて行き、屋上へと出ると足を止めて、ノリコの顔を見つめた。


「やっぱりノリコちゃん。君の事が好きだ!」

「えっ?やっぱり……修吾君は私の事を──」


 一瞬だけ乙女な表情を見せたノリこ。その時、ノリコの真上から降り注いだ鉄製の網。奇襲攻撃にかわす事は出来ず、見事に網に引っ掛かった。

 最初の作戦は成功し、修吾も思わずガッツポーズをした。


「よし!!」

「修吾君!!何よこれ!!」


 ノリコは必死に網を引き裂こうと暴れるが、暴れれば暴れるほど網はよりキツく絡まり、身動きが取れなくてなって来た。


「それは動物用の鉄網だ。ライオンの牙や爪ですら効かない代物さ」


 屋上ドアが開き、金城が腕を組んで見下すように現れた。


「ようよう、ノリコさんよぉ!!さっきはよくもやってくれたな」

「また貴方ね!!貴方は修吾君の何よ!!何なのよ!!」

「言ったろ。俺は雇われ用心棒だ」

「キィィィ!!絶対に貴方をコロシテやるぅぅぅ!!」

「へっ、殺せるもんなら殺してみやがれってんだ!!」


 ペットボトルロケットに網を括り付けて、準備万端。

 大知の準備も整い、いつでも飛ばせるようになった。

 金城はキザな顔をして、ノリコの前に立って言う。


「このペットボトルの周りには火薬が使用されていてジェット噴射口を付けていて擬似的なロケット噴射が可能となっている。これで普通のロケットよりも遠くへと飛ぶ。お前は遠く遠くへと旅が出来るぜ」

「準備完了だよ、金城くん」

「よし、ならすぐさま発射!!」

「あいあいさ〜!!」


 更に空気を入れて、ぱんぱんに空気がペットボトルに溜まり、プルプルと震え始めた。

 修吾は静かにノリコ前に立ち、呟いた」


「修吾君……」

「君は暴力的で嫌いだ」


 そして本物のロケットが発射されるように水が底から噴射し、さらにはペットボトルの周りに取り付けたジェット噴射口から火が激しく吹き出して、空へと勢いよく飛び始めた。

 ペットボトルロケットと共に、網に掛かったノリコも一緒に空高く飛んでいった。


「二度とこの町に来るんじゃねぇぞぉ!」

「覚えてろよぉぉぉ!!」

「嫌でも忘れてやるよ!」

「キィィィィ!!」


 ロケットの勢いは凄まじく、ノリコもいるのにも関わらず猛スピードで山の向こうを超えて、すぐに姿が見えなくなった。

 姿が見えなくなると、全員力が抜けたようにその場に座り込んだ。


「ふぅ……討伐成功か」

「あぁ、でも……これ、どうすんだよ」


 四人の不安は消えたが、新たなる不安が目の前にあった。

 学校が半壊していて、その光景に直面した四人はまた無言になり、固まってしまった。


 *


 インド洋のどっかの孤島──ノリコはワカメをクビに巻いた状態で、漂流していた。


「あの糞共めぇ!!絶対に復讐して、修吾君をあたしの物にしてやるぅぅぅ!!!」





作者の一言

本当の性格は長年一緒にいて初めて見せてくれるものです

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