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信じられない棒人間!

 


 夕日が赤く沈みかけてゆく学校帰り──いつもの三人は近くの公園に寄って、ジュース片手にベンチに座り、たわいも無い事を駄弁っていた。

 今日も金城が修吾に熱く口を振るっていた。


「隣町の江路村(えじそん)高校でさ。実験動物が逃げたってさ」

「実験動物?」

「それがさ──」


 話をしている途中に近くから怒声と悲鳴が聞こえてきた。そこには倒れている一人の少年と、その少年を囲む二人の不良であった。


「おいコラぁ!!」

「ひえぇぇぇ」


 不良はスキンヘッドと長い金髪の二人組であり、少年は金城の同じクラスメイトの蓮であった。

 不良に襲われている蓮を見て、金城と大知は


「また蓮の奴、量産型ヤンキーに襲われているぞ。今週で何回目だよ」

「今週で5回目だよ。過去最短記録」

「ヒュー。不幸の星に生まれた少年蓮君可愛そ」


 楽しそうに喋る二人に対して、憐れんだ目で見てくる修吾。


「あのなぁ。少しは助けようとは思わないのか?」

「そんな偽善者めいた事は嫌いだ。だが、俺は優しい人間だ。蓮に恩を着せてやる」


 金城は重い腰を上げて、腰からスマホを取り出して蓮の元へとゆっくりと向かった。

 蓮は丸くなって不良らから身を守るので精一杯であった。そんな中、蓮の前にスマホを持った金城が立ち塞がった。


「き、君は……金城君」

「お前、またやられてんのか?」

「う……」

「下がってな」


 蓮は立ち上がり、そそくさと修吾らの元へと走って行った。


「き、金城君。大丈夫なの?」

「あいつの事だから、絶対に倒すまで追い詰めるなら大丈夫だろ」


 ヤンキー共は二人肩を並べて金城へとガンと飛ばして、威嚇する。だが、金城は表情一つ変えずに不良を見つめていた。


「誰だてめぇ。ヒーロー気取りか?」

「腐れヤンキー共。武力で解決してはお前らと同じだ。俺は精神的の追い込むの大好きだ」

「んあ?」

「はぁ!」


 金城は怖がる様子もなく、むしろ強気な顔でスマホを突きつけた。


「今、お前達の悪行を全世界に生配信されている。もうすぐでその顔や制服から、すぐに学校が特定されるだろうよ」

「んなもんで俺らが引き下がるとでも──」

「この動画が広まれば、SNSは勿論、ニュースで"いじめ生配信で学校謝罪"と広まるだろう。そして見かねた学校は厄介払いとしていじめていた生徒は強制退学。更にはネットの正義マン共が住所を特定し、自宅にいたずら電話が掛け、出前の注文も入るだろう。するとどうなる?お前らとその家族はネットの攻撃に耐えきれず、精神的に追い込まれ、その内──」

「いやいや、もうやめろ!!」


 話している内に不良の顔がどんどん青ざめて行き、耳を塞ぎ始めた。


「聞きたくねぇそれ以上!!」

「お前卑怯だぞ!!そんな戦い方に、そんな言い方!!」


 意気揚々な金城は更にスマホを突き付けながら進み続けると、不良は自分の制服で被り、顔を隠して漫画の雑魚敵のように逃げ始めた。


「覚えてろよ!卑怯者!!」

「卑怯とも言われようとも、世の中勝ちゃいいのよ。手段は選べねぇぜ。腐れみかん共!」


 ヤンキーが走り去ると、スマホを空高く振り上げてキメたポーズを取って修吾らの元へと戻った。戻ると大知がハイタッチを交わして来た。


「流石金城!」

「おうよ。楽勝だぜあんなん」


 二人がタッチを交わしていると蓮が寄って来た。


「き、金城君!」

「どうした?俺は当たり前の事をやっただけだ。じゃあな」


 と言って背を向けて何も語らず去ろうとする金城。蓮から見れば、漢の文字を掲げた真の男の背中だった。光り輝き、憧れるには十分であった。

 だが、当の金城は笑いを堪えるので必死になり、肩を小刻みに震わせながら歩いている。


「ま、待ってくれ!!」

「何だ」


 蓮が突然金城の前に走って来て、頭を地面に擦り付けながら土下座して来た。


「僕を強い男にして下さい!!」

「はぁ?」

「俺は弟子はつもりはないぜ」

「でも……僕」


 後一押しだと感じた金城は更に渋る事にした。


「だから、俺は──」

「なら、僕のなけなしのお礼を」


 蓮の懐からコソッと渡されたのはお年玉袋であり、明らかにいっぱい入っており、その分厚さに金城はよだれを垂らした。

 その分厚さに色々と妄想した金城は蓮の肩を叩き、達観した顔で言った。


「貴様の気持ちは受け取った。真の男にしてやる」

「あ、ありがとうございます!!」

「今後、俺の事は"金城さん"と言いな」

「はい!金城さん!」

「なら、明日から修行だ。放課後この公園に来るんだ」

「はい!!」


 蓮はプレゼントを貰った子供のように嬉しそうにスキップしながら帰って行った。

 姿が消えたのを確認すると、金城はニヤリと欲張った顔でお年玉袋を見つめていた。


「へっへっへ!!この分厚さはヤベェぜ。めちゃ、金持ちじゃんあいつ!」

「そこまで入ってるとは思えないけどな……」


 その分厚さに修吾だけは不安になるも、大知が開けるように促す。


「中身見ようぜ金城!」

「あぁ!後でみんなでラーメン食いに行こうぜ!」


 意気揚々にお年玉袋を開けると、その中には大量の札束が入っており、全部取り出すとそこには千円札が入っており、枚数を数えて行くと──


「千円札ぅ!?一枚、二枚──あ」


 三枚目を捲るとそれは1000円札──じゃなくて近くのラーメン屋さんの大盛り無料券であった。


「え!?え!?」


 焦りからか、それとも信じたく無いからかずっと全部調べるも全部ラーメン大盛り無料券だった。落胆した金城は口を開けたまま力無く膝をついた

 修吾は哀れに見えた金城に慰めの言葉を掛けた。


「ラーメン……食いに行くか?」

「あ、あぁ」


 そう言って金城らはラーメン屋へと足を運んだ。


 *


 ラーメン屋はと行き、大盛り無料券を使ってラーメンを堪能した三人。その頃には金城の機嫌もだいぶん良くなり、笑顔が取り戻されていた。


「まっ、9割がラーメン大盛り無料券だけど、蓮のトレーニングを手伝い、やるの?」

「あいつに俺の偉大を伝えると共に、トレーニングでヤンキーにどれだけ通じるかを試すチャンスでもある。どんな手段でもな。ヘッヘッヘ」


 不気味に笑う金城に修吾は大知に耳打ちをする。


「現代に生きるマッドサイエンティストだな」

「蓮と言う名のフランケンシュタインでも作る気だな」


 *


 次の日──放課後、三人は蓮を呼んで訓練の準備を始めた。蓮を触らせて、説明を始めた。

 大きなボードを用意して体力・力・素早さ・防御・技術・技の文字が大きく描かれていた。


「人のステータスは体力・力・素早さ・防御・技術・技の6種類に分けられている。どのステータスも一つでも欠けていたら、ヤンキー共や野球部には勝てんぞ」

「う、うん」

「なら、質問だ。力に自慢はあるか?」

「こんな身体だよ。ありそうに見える?」

「……それもそうだな。なら、次は技術面だ。何か格闘術やスポーツの経験は?」

「ないよ」

「……」


 頭を抱えて、金城は力と技術にバッテン印をつけた。

 この重苦しい空気感に修吾も手伝おうと口を開いた。


「力がなくても体力やら素早さがあるなら、敵を翻弄出来るかもね」

「そうだ、力だけが全てじゃない。体力や素早さも大事だ。蓮、シャトルランは何回だ」

「え、シャトルラン?」


 いきなり関係ないことを聞き、戸惑う修吾だが、蓮は素直に答えた。


「28回……だよ」

「28回!?俺より多いじゃねえか!!」

「え?」

「俺は毎年23回なんだよ!」


 呆れ果てた修吾だが、蓮も同じく気持ちで口を挟んだ。


「俺は57回だけど、俺でも学年ワースト3だぜ。30回行かないのはお前と蓮だけだぜ」

「お前らが少な過ぎるんだよ。運動音痴か」


 30回行かない事を馬鹿にされた金城は怒りを表した。


「んだとオラぁ!!シャトルランマウントかぁ!?はぁ!」

「そんな事してどうするんだよ……」

「とにかく、シャトルランがダメなら体力も素早さもダメダメだな。


 6個の内、5つの項目がダメダメ」

 困り果てる中、最後の質問を蓮に問う。


「なら、最後の項目だ。必殺技はあるか?」

「必殺技?」

「なんか手から炎をブワァ〜って出したり、風を撒き散らしたりぃーとか、氷を変幻自在に操れたりぃ〜とか」

「そんなフィクションな事、出来る訳ないよぉ」

「必殺技もダメか……」

「いや、一つだけあるよ」

「本当か?」


 そう言って蓮は三人から距離を取り、一呼吸をして一礼をした。

 そして蓮は一歩を踏み出して拳を突き、更に一歩踏み出して蹴りを放ち、また一歩を踏み出して拳を突いて、無言の無表情で徐々にこちらに向かって来た。

 この謎の光景に金城ですら、困惑していた。


「な、何やってんだあれ……?」

「演舞?」


 一分が経ち、蹴りと拳を突きながら迫り、三人の前まで到達した。そして拳を強く握りしめて何秒かの溜め時間を得て、大声を上げて勢いよく拳を突いた。


「ほわたぁぁぁ!!」


 あまりにも謎な技に誰も何も言えずに固まるだけであった。

 苦笑いをする金城が蓮の肩を叩き、一言。


「蓮、今のは……何だ?」

「僕の必殺技、"神拳一龍の嘆き"」

「必殺技もダメダメだな。オール0、お前は本当にダメ人間だな。これじゃあ何にも勝てないぜ」

「う、うわぁぁぁぁぁぁん!!」


 突如として泣き出した蓮は女の子走りをしながら、公園から走り去ってしまった。突拍子なく起きたので、金城らは口を開けて固まった。


 *


 1人逃げて、何時間も走りに走った蓮は気づいたら隣町の公園まで走っていた。空は夕焼けが沈みかけ、公園には子供1人いなかった。

 蓮はベンチに座り、石像の如く固まった俯いていた。


「はぁ……やっぱり僕はダメで弱い人間なのかな」


 自分の弱さや情けなさに嘆き、意気消沈となっていた。

 そんな蓮の前に一匹の子猫が歩いて来た。子猫はしっぽをゆらゆらと揺らしながら、蓮の足にすりすりと自分の顔を擦り付け始めた。


「子猫ちゃん。今日残した給食のパンあげるよ」


 カバンから出した半分のコッペパンを一口サイズにちぎり、全て子猫へとあげた。子猫は嬉しそうにガツガツと食べ始めて、健気に食べる姿を見て蓮に笑顔が戻り始めた。


「君も1人か。僕はずっと虐められる弱い人間さ。君も1人だけど、君は1人で戦えるかい?」


 そう言ってまだ食べている子猫の頭を撫でようとした瞬間、猫が警戒して蓮の手を噛み付いた。


「痛っ!」


 猫はそのまま草陰に逃げていった。

 自分の手を見ると、手には猫の歯形がくっきり残って、そこから血が少しだけ流れた。だが、蓮はそんな猫には怒らなかった。


「君は僕よりも強いし、とても羨ましいな。僕は自分より大きな人間に立ち向かう勇気なんてないさ……もう帰ろうかな。お母さんもお父さんも待っているだろうし」


 猫も一生懸命、弱肉強食の世界を生き残っている。どれだけ自分より大きな相手にも恐れずに挑む勇気がとても羨ましかった。そんな猫を見たら、自分も大きな相手に対しても挑もうと決心をつけた。


 *


 次の日──学校で金城は一人席につき、ボケーッと窓の外を眺めていた。

 すると修吾の楽しそうな声が廊下から聞こえ、修吾と共にポニーテールの元気の良い女子が教室に入ってきた。


「うぃっす金城!修吾君から聞いたよ。蓮君のトレーニングしたって本当?」

「義威子か……あぁ、そうだよ。途中で逃げちまったから、トレーニング中止になったがな」

「どうせ、報酬要求したんでしょ。何円?」

「それはちょっとね……ところで蓮の奴らまだ来ないなぁ」


 本当は大量の札束だと思ったらたったの2000円とラーメン大盛り無料券だとは恥ずかしくても義威子には言えず、話題を無理やり晒した。


「たしかに、蓮君いつも早いのにねぇ」

「そ、そうだなぁ」


 修吾も近づき、金城の耳元で囁いた。


「昨日から蓮が家に帰ってないらしいんだ」

「マジかよ?探しに行くか」

「下手をすれば警察に捜索してもらう事に」

「……」


 どうしようか考える金城。

 その時、登校してきた大知が大慌てで教室に滑り込んできた。


「き、き、き金城!!」

「何だ?」

「れ、蓮が!!」

「え?」

「そ、外に来い!!」


 慌てた様子の大知に連れて行かれ、金城らは学校玄関前に出た。

 そこには大量の生徒に囲まれている中に一際目立つ2mを超える大男の姿が見えた。

 ボディービルダー真っ青な筋肉と、サイズが合わずピッチピチの服を着ているマッチョな男。その顔に金城らは見覚えがあった。


「あれって……蓮なのか?」

「あ、金城さん!」


 やはりその男は蓮であり、金城を見つけるなり、大きな足音を鳴らしながら金城らの前に立った。

 顔は昨日の蓮のままだが、身体はバッキバキのマッチョで、はっきり言って不気味の一言である。


「いやぁ、金城さん」

「お、おぉぉぉ!蓮、お前成長したな!」

「これも金城さんの修行のお陰です。昨日は逃げ出してすいません」

「いいんだ、いいんだ。俺の力がこんな結果を生み出すとは」


 修行した言っているが、これは明らかにおかしい成長度合いであり、金城以外の全員が違和感しか感じなかった。

 修吾は嬉しさのあまり目をキラキラさせている金城に耳打ちした。


「異常成長過ぎやしないか?」

「俺の修行のお陰だからな」

「あんな修行でこんなんなる訳ないだろ!お前、何もしてないだろ!」

「いや、俺の的確な助言と蓮の努力が実った結果だ。2人の力だな。はっはっは!!」

「はぁ……お好きにどうぞ」


 義威子も蓮の筋肉を触って、本物か興味津々で確かめていた。


「作り物の筋肉じゃなさそうね。心臓の鼓動も感じるし、本物の筋肉ね」

「当たり前だよ!全ての僕の身体さ!」


 みんなが蓮に興味を示していると、校庭の方から野球ボールが飛んできた。


「あ、危ない!」


 金城達へ飛んでくる野球ボールの前に蓮がいち早く感知して、立ち塞がった。そして一度深く息を吸い、腹を凹ませた。

 そしてボールが胴体に迫った瞬間──


「ふん!!」


 耳の奥まで響く声と共に勢いよく胸を張った。その瞬間、辺り一帯に衝撃波を放ち、金城達も弾き飛ばされ、学校全体のガラスも一斉に割れ散った。そしてボールはその胸の張りで消し炭になっあ。

 あまりのパワーに全員が唖然としてしまった。


「す、凄え!!胸の張りで、ボールを掻き消した!!」

「胸の張りで、ボールを消すって人間じゃないでしょ。衝撃波まで発生したし……」


 蓮は倒れた金城へと手を差し伸ばした。


「すいません、力を出しすぎちゃった」

「良いんだよ!これくらいのパワーがなくっちゃ!よし、この力でヤンキー共をぶっ倒すぞ!!」

「はい!!」


 そう言って蓮は金城を肩に乗せて意気揚々に学校内へと入っていった。

 その日の学校生活は予想外のことが起きまくりだった。起立と言われて立ち上がると勢い良すぎて天井に顔を突っ込んだり、雑巾掛けすると廊下の隅から隅まで一瞬で吐き終わったり、給食でカレーが出た時、スプーンを持てば軽々とへし折ったりと、時間ばかり起こし続けたのだ。


 *


 そして放課後──学校裏に不良を呼び出し、戦う事にした蓮。金城らも付いていき、義威子は教室の窓から呑気に見ていた。

 不良らは昨日の


「さぁ、始めましょうか」

「こ、こいつ……弱虫蓮か!?」

「たった二匹の蟻が恐竜に勝てると思いますか?」


 昨日の蓮とは違い、余裕のある笑みを浮かべて腕を鳴らす姿。まさに強者の一言と威圧感。

 これには金城も満足気にうなづいていた。


「昨日とは大違いで、弱虫から帝王へと格上げしたな」

「変身でもしたら、本当に帝王になるかもな……」


 そして蓮は武闘家の如く拳を構えて、目を尖らせて戦闘態勢に入った。常人にも関わらず、蓮からはオーラが放たれて、周囲が歪み始めた。

 不良達もこれには異常性を感じ、怖気付き始めた。


「あ、あぁ……悪夢だ」

「さぁ、行きますよ」


 蓮が足を一歩踏み込み、地面を裂いた瞬間、蓮の身体の中で異常な事が起き始めた。心臓がバクバクと鼓動を早め、頭が裂けるような痛みが襲い掛かり、蓮は突如として倒れて頭を抱えて始めた。


「う、うぉぉぉぉ!!うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 金城らもこれにはびっくり仰天し、助けに入ろうとするも、怖すぎて近づけずに遠くから眺める事にした。


「本当に変身する気なのか!?」

「ちっちゃくなったら、それはそれでいいかもしれんが……」


 蓮の身体が縮んだり、大きくなったりと繰り返しサイズが変わり、誰がどう見てもおかしい光景が目の前に広がった。


「何が起きているんだ!?」

「奴の身体が異様な進化を遂げている。この世の終わりか!?」


 金城らですら、もはやどうする事も出来ずに見ているだけで精一杯であった。

 こんな光景に不良らは恐れ慄き、冷や汗掻きながらとっととこの場から逃げ去って行った。


「こんな奴らと居たら、殺されるぅ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」


 逃げ去っていく背中を見つめながら、金城はガッツポーズを取り満足気であった。

 呆れ果てる修吾の後ろから急足の大知が現れた。


「大知?どこ行ってたんだ?」

「隣町の江路村高校の友達に連絡取ってたんだ。そいつ発明部に所属しているから、今回の件について聞いてみたんだ」

「何て言ってたんだ?」

「あの薬は薬一日くらい効き目があるみたい」

「だから、薬切れって訳か……」

「そうだ。だから、あれは異常な進化じゃなくて、退化している」

「あぁ、だから蓮の奴には内緒にしよう。本当のこと知ったらショック死するやもしれなん」


 蓮が元の姿に戻るまで、3人はその場にとどまる事となった。


 *


 それから数日後──教室内に二人の笑い声が広がっていた。


「いやー良かった、良かった。お前はこれならいじめられることはないな!」

「ありがとうございますよ金城さん!」

「これからは俺を見習ってくれよな!」

「もちろん!」


 蓮本人と金城はゲラゲラと楽しそうに笑っているが、周りの生徒達の雰囲気は暗く、誰一人笑っていなかった。

 教室の天井は穴が空いており、窓も当たるところが割れていた。廊下には蓮の足跡が大量に残されていた。

 修吾と大知も二人から離れながらひそひそと話していた。


「やっぱりあいつは現代に生きるマッドサイエンティストかつ、独裁者の素質があるな」

「蓮自身はあの時の記憶はないみたいだし、気づいていないみたいだけど、あの事件のせいで、不良どころかこの学校含む近隣学校の全生徒が恐れるようになったって話だぞ」


 その後、蓮に近づく者は全くいなくなり、平和な雰囲気が学校を包んだとさ。



作者の一言

弱気な性格な子が怒るほど怖い事はないでしょうね。

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