その9:オススメする加護、しない加護
今回は、エネミーに持たせる加護について解説していく。
特に、このコラムで解説するのは、「クライマックス戦闘でエネミーにもたせる加護」を想定している。ミドル戦闘で加護を使わせるのは応用になるので、参考にしつつ自分で考えてほしい。また、PCとエネミーでは全然役割が違うので、評価も全く変わってくる。PCのビルドの参考にはしないでほしい。
また、以下の加護については、「その5:火力で押すな、手数で押せ」にて解説済みだ。そちらを参照してくれ。
【解説済み加護】
・ 《タケミカヅチ》
・ 《ニョルド》
・ 《アカラナータ》
・ 《シアルフィ》
・ 《ミューズ》
・ 《オーズ》
・ 《ルドラ》
ちなみに、先に説明しているものから順に、おすすめ加護と思ってもらって構わない。では、順に挙げていこう。
◯《トール》
まず覚えておいてほしいのは、PCが使うときと違い、「エネミーが使うと、レベルが上がるとともに強力になっていく」かつ「防御役の価値を減じやすい」加護だということ。
なぜかというと、このゲームはFPを伸ばすのは限界があり、基本的に防御型PCは防御特技・回復特技・防御修正を上げる特技などで、耐久力を確保する。なので、防御特技と防御修正を貫通し、かつ(ボスの火力が十分なら)ブレイクまで追い込むこの加護は、PCが使うときより遥かに強力で、かつ防御役に有効なのだ。
ただ、ちゃんとビルドした防御型PCは《イドゥン》でFPを全快すれば、いかんなくその耐久性を表現できる。強力な回復役がいるなら、《イドゥン》をブレイクより先に切ることで活躍を確保できる。また、防御・回復役に効果的ということは、PL側が《オーディン》で打ち消す候補にもなってくるということだ。《トール》を打たれると防御役は即終了だから打つな、という話ではない。
なので、この加護を使うときは、ちゃんとクライマックス戦闘でのエネミーの手数を確保し、防御役が《トール》以外の攻撃も受けられるよう戦闘をデザインしてあげよう。むしろ、《トール》抜きの手数だけで防御役をピンチにしようとすると、今度はリアル時間が心配だ。1、2個ボスに持たせておくのはオススメである。
ちなみに、「対象変更ができない」特性を使って、防御役以外を早めにブレイクに追い込むにも有効だぞ。PL側からすれば防御役に打たれるよりマシなので、経験上《オーディン》も打たれにくい。
◯《ヘル》
個人的には、GMが使う分には《トール》より一段落ちる加護。
というのも、防御型PCの価値を減じやすいだけでなく、「チョイ足しで防御特技も乗せました」みたいなPCもまとめて価値を減らしてしまうためだ。「対象変更ができない」特性もないので、《トール》のような小粋な使い方もできない。
ただ、低レベルで極端な防御役がおらず、かつ少ない手数でPCを追い込むには有効。3Lv向けサンプルシナリオによく搭載されている理由は、このへんだと思う。
◯《ヘイムダル》
振り直し・達成値調整などの面倒をすべてすっ飛ばし、リアル時間短縮に協力してくれる便利な加護。1回や2回にとどめて、かつエネミーの手数が十分なら、回避型PCが「唯一の回避機会が《ヘイムダル》でクリティカルにされた!!」という不満も持ちにくい。
ただ、他エネミーを対象にできる関係上、大量に持たせた上でGMが丁寧に撃つと、回避型PCの活躍をまるごと潰せてしまう。PCの《オーディン》の数とも相談しつつ、1~3個のほうがいいのではなかろうか。
◯《バルドル》
GMが使う分には、『弱いヘイムダル』くらいの使い方がオススメ。
防御判定に乗せるのは、個人的にはオススメしない。ひとりにつき1-3回しか回ってこない攻撃の機会を潰すと、PLの不満の種になるぞ。
◯《ネルガル》
コラム8で解説したとおり、この加護の範囲と射程は、PC全員を根こそぎ対象にできるものだ。攻撃がきちんとPCに届けば、1手番でPCたちをピンチに追い込める優秀な加護なので、1つ持たせておくのはおすすめ。まあ、十中八九《オーディン》や《エーギル》などで潰されるだろうが……。
また小ネタとして、「打ち消されたときはメジャーアクションから宣言し直し」というFAQを利用する手がある。例えば、低威力広範囲の射撃と高威力単体の白兵をもたせておいて、《ネルガル》を使うことで白兵をPC全体に通す、という手法だ。PL側は打ち消しにかかるだろうし、これで「仕方ない、低威力の射撃で殴ろう」とボスに言わせると、PLに達成感を与えられる。
ただ、この加護も「位置取りによる有利陣形の構築」というスクウェア戦闘の楽しみを壊してしまう側面があるので、大量に持たせるのはやめよう。
◯《エーギル》
「PCの防御クリティカルを潰せる」という使い方に限って、おすすめの加護。スターゲイザーとかが混じった状況でゴロゴロみんなが防御判定していれば、1回くらいはクリティカルするもので、そこに「逃さん、《エーギル》」と言ってやれる。GM側はしてやったり感を得つつ、PL側は加護を1つ削れてWin-Winな気分になれるぞ。
ただし、余らせた挙げ句にPCの命中クリティカルに投げたりすると、一転して不満の嵐が吹き荒れる。PC側の防御判定が優秀な時に、1つ持たせるくらいがちょうどいいか。
◯《ヘルモード》
『初手で移動用に決め打ちする』という、限定された使い道でオススメする加護。
つまり、ボスの初期位置はシナリオ上不自然でない場所にしつつ、最初のイニシアチブで《ヘルモード》を使い、PC達が最も嫌がりそうな場所(マップ端とか砲撃PCと同一スクウェアとか)に移動する、という使い方だ。移動力や<エスケープアシスト>に特技をを回しているPCたちは、《ヘルモード》を打ち消さなくてもボスに対処できるので、加護1個分得をするという形である。本気で困るPCたちは《オーディン》すればよろしい。
ちなみに、リアクション用に使うのは、《バルドル》に書いたとおり不満の種なのでおすすめしない。
◯《オーディン》
原則、PCの《オーディン》を減らすためにある加護。
また、《オーディン》をボスが抱えている限り、PL側は「使った加護を打ち消された場合」を想定して作戦を立てなければならず、けっこうリアル時間に影響する(しかも、大抵出る結論は「PC側も《オーディン》を使う」に落ち着くので、あまり有意義な時間にならない)。
個人的な評価は低いが、PC側の《オーディン》を早く消化してリアル時間短縮につなげるメリットはあるので、好みで入れるのがいいと思う。なんか、悪そうでボス向きだし。
◯《スィン》
オススメしない。
基本的に《オーディン》で打ち消されて終わりだろうし、打ち消されなかった場合はクライマックスがとんでもなく地味な戦闘になる。あんまりいいことないと思う。
◯《ブラギ》
1個混ぜておくと、戦況に応じて強さの加減ができるので、公式で△認定されているなかでは唯一あり。
◯《フツノミタマ》
ボスに単純に乗せると、ただ単に手番を使ってPCひとりを確殺する、つまらない加護になる。それなら《トール》でいい。
使うとしたら、「FP全快の状態では意味がない」ことに理由を見いだせるときくらいだろうか。つまり、中ボスやライバルに持たせて「タイミングよく倒すと、加護を抱え落ちさせて有利になるエネミー」という使い方をする場合だ。
あとは、エネミーの設定上で使いたいときだろうか。
◯《ウル》
DoWを私が持っていないので評価不能。電子書籍化はよ。
◯《イドゥン》《ティール》《ジークフリート》
オススメしない。これをもたせるくらいなら、素直にFPをかさ増ししたほうがいいと思う。まあ、「《オーディン》しないと大惨事」という加護として使えなくはないが、それは事故率が上がってるだけでは?
◯《ガイア》
唯一、「シナリオギミックとして」出番がある加護。
つまり、「エネミーは世界・町を滅ぼす力がある、データ的には《ガイア》として扱う」とPC側に伝えた上で、「戦闘により《ガイア》を使わせて世界を救う」という形でクライマックスをデザインする手法である。「《ガイア》が使える」というエネミーの設定も組み込みつつ、シナリオそのものを《ガイア》に焦点を当てれば、けっこう面白いシナリオにできると思う。
万能加護として使うのはやめておこう。PL側があらゆる可能性を考え始めてリアル時間がクソ伸びるぞ。
個別解説という関係上、いまいちオチがつかないが、説明は以上。
一旦、解説したい内容は終わったので、このコラムは完結にする。「XXが知りたい!!」という熱い思いがある人は、なろうの感想か、Twitter(@NktAts)へ適当なリプを投げる形で連絡してほしい。
それでは、これにて。
このコラムに興味を持ってもらえたら、他のTRPGコンテンツも一度見てもらえるとうれしい。
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