その6:セッション中に加減をするコツ
今回は、『セッション本番で、強さの加減をする方法』について説明する。
なに? イカサマは不誠実だ? 気持ちは分かるが、まあ聞いてほしい。
大前提として、GMも人間だ。ルールミスもすれば計算ミスもする。
しかも、プレイヤーと違って一人でやっているのだから、考えつく作戦も少ない。結果、有効な作戦を見落としたり、逆に最善手以外が頭から抜け落ちたりする。
時間だって限られている。様々な戦術を踏まえたメタガ戦闘のテストなんて、数時間単位でかかるだろう。君もGMなら、シナリオで出すSFギミックの設定考察を詰めたり、ヒロインの萌え描写を妄想して一人でハァハァするのに忙しいはずだ。私も忙しい。ゆえに、戦闘のテストなんて、30分程度PCたちの動きを推測する程度で御の字だろう。
結果、このコラムをどんなに遵守して事前準備しても、『全員が全特技を1回ずつ使って、ほどよくPCがブレイクし加護が程良く残る」なんてことには、なかなかならない。(手間が無意味という話ではない。手間をかけても100%にならない、という話だ)
なので、GMに多少の想定外があっても、『プレイヤーの喜ぶ戦闘』という大目標を達成するために微調整のマージンを残そう、というのが今回の趣旨である。
そう、これはプレイヤーのためだ。仮に裏での微調整が罪だとするなら、GMは世界を幸いに導くため敢えて大罪を受け泥にまみれる”堕天使”なのだ。おおピカレスクロマン。
これ以上書くとバカであることがバレそうなので、本題に入ろう。いくつか手法を紹介していく。
1. NPCから追加で加護を渡す・増やす
シナリオのストーリーが許すなら、これが一番楽だと思う。渡す加護は、PCが原則最後に使用する加護、具体的には《ブラギ》か《イドゥン》を1-2個がおすすめだ。
どのような効果があるか? 経験上、追加加護を抱えてクライマックス戦闘を終えた時、プレイヤーはこう感じる。
・PCの加護も余る……(追加加護は話題にも上がらない)
・PCの加護残1-2……(追加加護のことを忘れて)ギリギリだったな!
・PCの加護残0……ハードな戦闘だった。追加加護のおかげで安心して戦えたが。
・追加加護まで使い切り……危なかった!XX(加護をくれたNPC)のおかげで勝てた!
とまあ、こんな感じで、プレイヤーに悪感情を与えることが少ない。データの誤魔化しもないのでフェア感もあり、おすすめだ。
ちなみに、ルールに従って「《ブラギ》をNPCが使うから、対象加護を相談して決めてね』としたり、雰囲気重視で《ガイア》を渡すのは、個人的にはお勧めしない。プレイヤーを悩ませて時間を食う挙句、結構な率で《ミューズ》のようなオフェンス加護になって即切りされ、セーフティとしての加護ではなくなってしまうぞ。
また、追加加護が余りそうで寂しいからって、敵を強くする行為もやめたほうがいい。アクセルとブレーキを一緒に踏んではいけない。
2. 敵の思考をルーチンやダイスに頼る
事前準備の時に、「敵が最善手を取った場合」を想定してバランス調整をしつつ、セッション本番ではダイスやルーチンで行動を決定する、という方法である。
なに? 「今回のボスはクレバーな勇将だから頭の悪いことはしない」? そもそも、詳細な敵データや敵配置、正確な戦場の地形まで全部俯瞰したうえで作戦を立てているプレイヤーが異常なのだ。
遭遇戦なら、地形把握のために雑魚を前進させる。PCとの初戦なら、データ収集のために分散して殴る。これも十分にリアルでクレバーな振る舞いだろう。仮にGMがダイスで対象を決めていたとしても、敵将には遠い未来まで見通した深遠なる作戦があるのかもしれない。そういうことにしよう。
ルーチンについては、SRPGが参考になる。対象決定だけ、いくつか例を挙げる。
・ 因縁のあるPCを必ず対象(ライバル属性持ちとか)
・ サイズが大きいPCを優先(目立つんだろう)
・ 近くにいるやつを優先しつつ、なるべく均等に(群体奈落獣とかだとそれっぽい)
・ ヴァレットやミーレスを優先(弱そうな奴から叩くのは自然だ)
ダイスで決めるときも、常に均等にする必要はない。「1~4でダイスロール。1ならPC1に単体攻撃、2~4ならPC2~4に範囲攻撃」だって立派なランダムだ。
また、常にダイスや1つのルーチンにこだわる必要はない。敵だって脳みそはあるのだから、『回避型PCを何回か殴って、当たらないと気づき対象から外す』『1回ずつPCを殴った後、弱点は分かったとばかりに1体に集中攻撃』 といった形も十分に納得感がある。
ただし、一度ダイスからガチ思考に切り替えてしまうと、もうダイスには戻せない点には注意しよう。
3. ボスのFPを隠す
古参オフセ派にはわりと馴染みがある手法かとおもうが、わりとコツがいる。
というのも、本当に完全に秘密にしてしまった場合、プレイヤーは『この攻撃で倒せなかった場合』を考慮して、常に余力を残す場合があるのだ。爽快感がそがれてしまうし、戦闘の進捗が見えないままリソース管理が続くのはストレスになる。
ということで、オンセでやるなら以下のような方法をお勧めする。
推定FPの範囲は、『事前に見込んだFPの80%~120%』がオススメだ。つまり、見込み250なら、200~300。これで、PCの手番1~2回くらいの範囲で調整が効く。
オフセなら、「まだまだ余裕」「半死半生」「もう動いているのがおかしいレベル」といった形で、ざっくり残りFPを伝えるのが望ましい。
なお、この手法を取った場合、敵のFPに関する話は卓内・卓外問わず絶対にしないこと。プレイヤーとして卓に参加した場合も同様だ。曖昧な中に雅を感じる和の心を忘れずに。
4. 加護を隠す
加護を隠しておき、いざというとき裏で差し替える、という手法である。《タケミカヅチ》《ニョルド》あたりに差し替えれば、ブレイクや《イドゥン》と1対1交換にしやすい。《トール》なら抱えたまま死んでも不自然でない状況は多い。逆に難易度を上げたい場合は《ネルガル》にする、という感じだ。
しかしこの手法、FPを隠すより一層難易度が高い。というのも、《イドゥン》《ティール》《オーディン》あたりが隠れている想定でプレイしだすと、猛烈に時間と手間がかかるからだ。かといって、「XXではないよ」を個別に言っていては手間がかかってしょうがない。
幸いオンセなら、”りょーさん”とかいう有志が「加護カード」なるもので加護を色分けしてくれている(https://nktats.booth.pm)。これを使いつつ、隠す加護を1-2個に絞り、「隠れている加護は赤か黄のいずれかだ」と伝えれば、バランス調整の余地を残しつつ明確に伝えられるぞ。
5. 敵を増やす・減らす
あえて、オススメしない手法も1つ。いくらバランスをミスったからといって、突発的にやるのはやめておいたほうがいい。
突然必要になっているということは、GMが時間的にも精神的にも追い詰められている可能性が高く、その状況で敵を増やしたり減らしたりすると、事態が悪い方向に流れる可能性が高い。『ボス弱すぎたな』→『敵追加』→『やりすぎて死人発生』とか、惨事極まりない。また、GMがデータの把握と検討に手いっぱいになって、描写や設定も薄っぺらくなるだろう。
どうしてもやるなら、プレイヤーに一言断って10分以上休憩をとってからやろう。『敵が強すぎた』パターンの場合、プレイヤーをハラハラさせたまま放置して休憩することになるが……。
最後に、細かい注意を1つ。
上に挙げた方法を見直してほしいのだが、2. 以外はミドルフェイズでの戦闘だと使いにくい。キャンペーンではない場合、お互いのPCができることをよく知らない可能性も高いだろう。
そのため、ミドルフェイズは緩めを特に意識して作るのがよいとおもう。ダメージ役が1回ずつ殴って、防御役が1回攻撃をくらうくらいのバランスでもいいんじゃないだろうか。
今回のコラムはここまで。
次回は、他に思いつかなかったら『エネミーと地形配置のコツ』について書く予定。お楽しみに。