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世界の罪に泣きそうな夜だから  作者: まるめるも
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4 山狩り

 父が帰ってきた翌日、私は父とルーク様と3人で山へ出かけた。

 今夜は父がご馳走してくれるらしい。ルーク様は「また魔物肉か」と苦笑していたが、私は父の料理が好きだった。王都には魔物を食べる習慣がないらしい。魔物といっても獣型の魔物で、リューク弾きのジークの唄によると元々は獣だったものらしい。臭みはあるが香草といっしょに燻すことによって、それは芳醇な香りへと変わっていく、やっぱり臭いけど。

 ルーク様が昔、父に無理やり魔物肉を食べさせられた話をしていたが、田舎育ちの私にはなぜそんなに嫌がるのか分からなかった。

 私は父とルーク様に連れられて一度王都にいったことがある。そこはとても華やかで、レンガの積まれた建物がひしめき合っていた。これが都会なのかと興奮したのを憶えている。そのときルーク様が振舞ってくれた料理は未だに忘れられない美味だった。

 しってる? 獣の肉はいい香りがするんだよ! 

 振舞われた肉は牛という家畜らしい。私の知っている魔物以外の肉は、鹿とウサギくらいだがこの牛というのは同じ肉とは思えないくらい脂が乗っていて口の中で溶けていった。いつかまた食べてみたいが王都はイルミナス王国との戦争によりいつ危険に見舞われるか分からないため、当分おあずけである。

 私たちは馬に乗り山へと向かう。私は父に前に乗せてもらい、その後ろをルーク様が追っていた。二人はいつも馬に乗ると競争である。私を乗せているのだから少しはスピードを落として欲しいものである。いつも目的地につくと私はその恐ろしさのあまり震えているのだ。

 困った者である。父もルーク様もまだまだ少年の心を失っていないようだ。


 山の入り口に着き、私たちは馬を降りる。地面に足がついた時、まだ私の足は震えていた。

 その光景を見て二人は笑っていた。私は顔が赤くなるのが分かるが、呆れ口調で「はやくいきましょう」と先に歩いていく。

 この山に名前はない。だから皆、山と呼んでいる。山にとっては可哀想なものである。

 鮮やかな緑につつまれたこの山は、自然の実りに溢れていた。父は魔物を一人で狩りにいく。魔物といっても危険視されるようなものは殆どいない。

 しかし全くいない訳ではないのでルーク様は私と一緒に行動してくれる。それはとても幸せなことだ。私は木の実や果物、香草を採取する。自然の恵みは私たちに豊かな生活をもたらしてくれる。それを荒らすのが魔物のため、下級の魔物であっても退治することは狩猟を生業にする者たちだけでなく、戦士や騎士たちの仕事なのである。

 またこういった見通しの悪い場所は盗賊たちが潜んでいる可能性がある。そんな環境であるがゆえ、ルーク様は私を護ってくださるのだ。

 そんなとき一匹の魔物が目の前に姿を現した。とても愛らしい姿をしたウサギのようだが角が生えており鋭い牙がある。私は腰にかまえた剣を抜く。いかに可愛らしい姿をしていようと魔物は魔物であり、人に害をなす。

 私は剣舞と共に剣術を学んでいる。そして父やルーク様が戻ってきている際は、稽古を積んでもらっている。それが辺境の地で生きるための自衛の術であり、将来的に狩りにも応用できるからだ。

 私の剣を見ても、魔物は怯まない。より一層唸り声を上げている。私は呼吸を整え、しっかりと相手を見据える。そして魔物である一角兎が動くより前に私は土を踏み込んだ。

「おみごと」

 ルーク様は私の剣技に感心した。相手が動く前にしとめたのだ。先手必勝が戦いにおいての基本であると父に教わっていた。相手が自分に敵意を持っているのならば躊躇う必要はないというのが父の教えであった。でもそれが人間であったら? いつもそれを考えてしまう。父は戦士だ。人を殺すことはきっと当たり前なのだろう。しかし、私にそれができるとは思えない。きっと私は目の前にいる人間に敵意を向けられても躊躇する。でもきっとそれが命取りになることも分かっている。私は父やルーク様のような強さがほしい。だから剣を振るうのだ。

「アシュリーの剣は美しいな、まったく無駄のない動きと殺気すら感じる間もない綺麗な剣だ。それを忘れちゃいけないよ」

 ルーク様は私の剣を褒めてくれる。思わず笑顔が溢れてしまう。私はこの人に褒められるのが好きだ。きっとこれが私の初恋なのだろう。でも私はルーク様が亡き奥様を愛しているのは知っている。だからこの想いは心の中に閉まっておくのだ。

 一通り目ぼしい物は揃った。今年は本当に豊作である。父の帰りを待つ間、ルーク様と父の話で盛り上がった。しかし気になることがある。父がなかなか戻らないのだ。もしかして事故にでもあったのではないか、心配になってくる。ルーク様も父の帰りが遅いことを少し気にしているようだが、私のために奮起しているのだろうと穏やかな顔で言っていった。


 ほどなくして父が戻ってきた。しかし私達はすぐに異変に気づいた。父は腕に傷を負っていたのだ。

「父さん、どうしたの!?」

「イーデンどうした? この傷は切り傷だな」

 私達は父に駆け寄って問う。父は重そうに口を開いた。

「ちょっとな、上級魔物がいた。人型だ」

 父は今まで見たことのないような表情を浮かべている。

「なっ!? 人型の魔物だと? 魔人ではないのか?」

 ルーク様は父に詰め寄る。人型の魔物とは、上級の魔物が人のような形に化けているという。言葉を喋り、姿は完全に人間とは同じではないものの、知能がありそして人間を襲う。

 また魔人とは亜人の種族の一つで、角や翼があるなど魔物のような特徴が見られるが、あくまでも人間であり、人に対して無差別に襲ってくるようなことはしない。

「ああ、魔物だったよ。戦いの最中、変身を解いて狼のような顔と魔術を使ってきた」

 父は淡々と話す。私は震えが止まらなかった。私の村の近辺で上級の魔物がでたという例は1度もない。それくらい珍しいことなのだ。

「魔術か……、それは厄介だな」

 ルーク様も見たことのない燻しい顔をしている。

「ああ、でも大丈夫だ。しっかりと殺したよ。首だけは持ってきたが、体は燃やしておいた。こいつは食えたもんじゃないしな」

 父は大声で笑う。でも違う無理やり笑っていた。私にはその意味が分かる。イルミナス王国は魔物と手を組んでいる。つまり、上級の魔物がここにいるということは敵国が攻めてきている前兆なのではないか? 偵察? 私は自分の顔が蒼白になるのが分かった。

震えで立っていられない。

私は地面に尻餅をついてしまった。それをみたルーク様が手を差し伸べてくれる。その顔は無理やり作った笑顔だ。きっと私を安心させようとしているのだろう。

「安心しろアシュリー、お前の考えているようなことは起こらない。きっと迷い込んだのだろう。大丈夫だ、俺たちがいる。お前は安心して村に帰るんだ」

 父は私に先に帰れといっている。きっと二人でこれから山を詮索するのだろう。そしてそこに私は邪魔なのである。

「だけどアシュリー、村の人たちには今日のことは話さないであげてほしい。要らぬ混乱を招いてしまうかもしれないからね」

 ルーク様は、私を諭すように話す。このことは絶対に話すな。それを念押されている気分になった。きっとこれは異常事態なのだ。でも私を心配させまいと二人は気を使っている。でもそれが私をより一層不安にさせた。


 私は父の馬で先に帰ることにした。一応これでも馬を操ることはできる。父やルーク様ほどではないにしろ、村の中では1番の乗り手だと自負している。

 思った通り二人は山狩りをするようだ。もし他にも上級魔物がいたとしたら、それはもう危機的状況にあるということだ。気持ちが落ち着かない。村に戻ったらいつも通りの私に戻って、剣舞を舞わなければ。

 焦る気持ちを抑えきれないまま馬を村へと走らせた。

初めまして、まるめるもと申します。

拙い文章を読んでくださりありがとうございます

初めて書く小説です

続けていきたいと思いますのでよろしくお願いします

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