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世界の罪に泣きそうな夜だから  作者: まるめるも
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1 プロローグ

 空に輝く光の衝突を綺麗だと思えたのはいつまでだろう。

 本当の意味を知った時、私はその光が憎しみに変わった。

 この世界に夜の暗さはない。あるのは常に何かが爆けるような光と、そこから降り注ぐ粒子たち。

 まるで何かを讃えるかのよう舞い降りた天使の欠片。

 いつも世界は光に包まれている。だけどそれは私たちに罪をあたえ、抜け出すことのできない混沌とした日常を作り出している。


 もしあの時、私がほんの少しでも勇気があれば救えたのかもしれない。後悔しかないこの気持ちはもう一つの私の罪。

 その罰として私は生きて目的を果たさなくてはいけない。父として慕ったあの人の人生の続きを歩むことが私にできるたった一つの償いだから



 この世界に生きる私たちは気づかないうちに飼いならされた家畜だった。人間がこの世界を支配しているようで、その周りにはもっと大きな力が働いている。

 一つの証拠として『罪』がある。この世界の人々はなにかしらの『罪』をもって生まれてくる。それは自我の目覚めと共に気づき、その償いをするために生きている。それは義務であり、守らなくてはいけない掟として社会に根付いている。

 一番最初に罪に背いた人間を見たときのことは忘れられない傷跡として残っている。それは私の大切な友人であった。彼の『罪』は、毎日薬草を採取してそれを煎じて特効薬を作ることだった。

 そして『罪』を持つ人は必ず『罰』がある。

『罰』とはその人が持つ固有の特技、彼の『罰』は薬草の効能を本能として見分けることができ、それを利用して薬の効果を更に高めることだった。

 しかし彼は一度その『罪』に背いた。自分の母親を暴力で虐げる父親へ薬草と偽って毒草を紡ぎ、そして猛毒で父親を殺めたのだ。

 相談にいつものっていた私は、上部だけでいつかなんとかなると彼に話していた。しかし、彼は思いとどまれなかったのだ。

 彼は父親が苦しみ死んだとき私の家に逃げてきた。そして私の目の前で光の泡となって消えた。理解できなかった。

 身体中から光が湧き出し、綺麗な光の粒となって足元から崩れていったのだ。光の粒はまるで降り始めた雨のように土の中へ消えていく。そして一人になった私は彼が何をしたのか、何が起こったのかを理解して泣いていた。

 彼の『罪』が薬を作ることでなければこんなことにはならなかった。

 私は世界を憎んだ。そして自分もいつかこうなるのではないかという恐怖に怯えていた。

 私の『罪』は曖昧だ。1日に1回必ず踊りを踊るということ。どんな踊りでもいいので舞うことが義務付けられている。なので物心ついたときから踊りを皆の前で披露している。

 自分にはそこになんの意味があるのかはわからない。

 ほとんどの人の『罪』は人々の生活に役立つものだった。怪我人や病気の人を診なくてはいけない義務や、料理を毎日つくらなくてはいけない義務など、生活に密着している義務がほとんどである。私の『罪』は皆の何に役立っているのだろう?幼い頃には疑問に思わなかった。

 しかし友人が消えたときから自分の存在価値に疑問を持ち始めた。

 友人の力にもなれず、人々の役にもたてずに踊りを踊る。ただそれだけの毎日に何の意味があるのだろう。

 私は問う。なぜ世界はこんなにも残酷なのかと。

 もうすぐ成人を迎える今もただ自分の存在価値を見出せないでいる。それのどこが大人なのだろう。私は私の『罰』の一つである剣をとって月の下で舞っていた。


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