2話【出会い】
久々に小説書きたくなって投稿
『やる事が無い』
真顔で呟くゼオ
基本的にゼオの生活スタイルは食料にゆとりがある時は、これと言ってやる事が無いため暇になりがち
ゼオは背中に背負った2丁のマスケット銃を見て呟いた『そういえばコイツのメンテナンスもしてやらないとな』
【マスケット銃】
銃口から火薬を入れて、次に1cm程度の鉄球を入れる、そして銃を水平に持ち、コックハンマーを起こしてハーフコック(撃鉄を半分起こす)にする、その間に薬室に火薬を入れ、フリズン(薬室を閉じ込める蓋)を閉じ、コックハンマーをさらに起こす、こうしてトリガーを引く事でスプリングの力でコックハンマーが薬室へと火打ち石で点火する事で薬室からバレルへと引火して鉄球が発射される
この世界における火薬はブレイズフラワーと呼ばれる赤い貴重な花から採取される液体で、その液体を沸騰させ水分を飛ばす事で可燃性の高い粉ができる
ゼオのマスケット銃は装填しても鉄球と火薬が落ちてこないよう、銃口と薬室にロック機構が付いていてロックを外すピンを取る事でいつでも即時使用可能となる
ゼオは腰につけたポーチから、火薬と鉄球がそれぞれ別々になるように包まれた紙をたくさん取り出す
指さしで数を数えていくと、12セットしかない
ゼオは残念そうな声を出して『12発かぁ・・・ブレイズフラワーなんて滅多に手に入るもんじゃないもんなぁ』
マスケット銃を自分の膝にのせて、バックからハンマーと鉄の細い棒を取り出して、マスケット銃の金具に鉄の棒を当ててハンマーでカツーン!と叩くとマスケット銃の金具を固定していたピンが抜けて、マスケット銃が分解される
それぞれパーツ事に分解して動物の毛で作ったブラシでゴシゴシパーツを磨いて、火薬の燃焼によって付着した炭や汚れを落とす
一通りブラシが終わったら川の水で洗い流して、乾いた布でふき取る
再び組み立ててメンテナンス完了
ゼオは完成したマスケット銃に元々入っていた火薬と鉄球を詰めて、ロックピンのピンを掛けて背中に背負い、青い空を見上げ、懐かしむような顔で『空の色だけは前世も異世界も変わらないなぁ』
ゼオは使った道具をすべてバックにしまい、立ち上がるとゼオは何かの気配を気取る
『人・・・?3人ぐらいかな・・・昨日の逃げたドラゴンハンター達か?』
ゼオはすぐに物陰の多い茂みへと走り、逃げようと走ると
ヒュンッ!!スガッ!!
真横の木に矢が刺さる
ゼオは意識よりも体が先に反応して、走り始める
『っ!!』
『!?、ドラゴンハンター!?』
左の茂みに逃げようとすると茂みに立っていた木に矢が刺さる
右にしか退路が無いため右に逃げるしかなかった
ゼオは後ろを確認しながら冷や汗をかいて歯ぎしりする『まずい・・・誘導されている・・・』
茂みを抜けると正面は崖で、振り向くと茂みから笑みを浮かべたドラゴンハンター3人が現れる
崖は数十メートル、落ちれば即死の高さだ
逃げるにしても退路は無い
ゼオは戦闘する事を決心し、マスケット銃を2丁手に握り、臨戦態勢を整える
追い詰めていたドラゴンハンター達が茂みから姿を現す
一人は顔を布で隠した女性で、手には弓を持っている
もう二人は短剣を所持した傭兵だ
周囲の空気が凍てつき、殺伐とした雰囲気へと様変わりする
ゼオは立ち振る舞いから今回のドラゴンハンター達は手練れだと分かった
相手からしてみればたかが竜人一匹。
相手は一人、この状況だと素人は優位な状況から油断しているケースが多い
だがコイツらは違う、目はしっかりと自分を捕らえ、確実に仕留めるという強い殺気を感じる
ゼオは自分のマスケット銃を見て
『この武器がギルドの上層部に聞き届いて手練れをよこしたのか・・・?』
そう思うのも無理ない、ゼオが殺してきたドラゴンハンターは先日のも含めてこれで17人
ゼオは生唾を飲んで覚悟を決め、マスケット銃を構え
『先手必勝一撃必殺!!』
引き金を引き、コックハンマーがフリズンへと振り下ろされ、カチンッと音が鳴ると同時に
薬室から火があふれ、その火はバレルへと流し込まれる
ズガァァァァン!!
先手必勝
ゼオの考えはこうだ
相手は手練れ、こちらの武器も実際こと細かく把握している訳ではない、そこを突き、一撃で仲間を確実に一人消す事ができれば、手練れと言えど動揺するはず、すかさずもう一人を2発目で仕留め、逃げる
ゼオが放った8mmの鉄球は弓を持ったドラゴンハンターの脳天を貫き、血しぶきをあげて地面を血に染める
『次っ!!』
だが、狙うはずだったナイフのドラゴンハンターが居ない
『!?』
『後ろだよ、坊主』
ゼオは1秒も無いわずかな時間で振り返ると
背後にはナイフを突き立てたドラゴンハンターが不気味な笑みを浮かべ、自分の背後に立っていた
死
ゼオは目を瞑った
『っ!!』
だがゼオの体には痛みは無かった
『・・・?』
目を開けると、切りかかっていたドラゴンハンターは白目を向き、こっちに倒れてきた
ゼオは何が起こったのか判別できずフリーズして、倒れてきたドラゴンハンターの下敷きになる
ピシャーンッ!! ガゴコゴ!!!
と雷鳴が響き、次々とドラゴンハンター達が倒れていく
『主、大丈夫かのぅ?』
ゼオは目を疑った
一人の小さい女の子が立っていた、しかも少女の着ている服は
京都で見覚えのある和服と瓜二つな見た目だったからだ
紺色の滑らかな生地に、和服ならではの紅葉の葉っぱ柄
着付けがしっかりできておらず、少しだけ胸にエリや裾が乱れていて、髪型も江戸スタイルではなく、適当に髪を縛ったせいか、ブラウン色の束ねた髪が左に向いている
足の靴もブーツに近しい和のデザインをしたブーツ
膝から腰にかけて綺麗な素足が和服から見えている所から下は短いショートパンツの類だろう
身長は140cmくらいで自分よりも60cmも低いため、とても小さく見えた
ゼオは立ち上がって少女の目を合わせると
少女も青い瞳でゼオの目を見て、目を合わせる
しばらく両者見つめ合う状況が続き、ゼオが折れて話しかける
『た、助けてくれて・・・あ、ありがとう?』
少女がジト目で太々しく
『なぜ疑問形なんじゃ』
ゼオは戸惑い、あたふたしながら、意味もなく手をワサワサ動かして
『ひ、人と話した事が、あ、あんまり、な、ないから・・・』
少女はため息を吐いて、気を紛らわす為か、10cm程度の棒に笛の口付け部分と、筒の先に皿がついた
江戸時代のタバコのような物を吸い
『人間に親しくされるのは初めてで、まだワシの事を敵かと勘違いしている・・・そうじゃろ?ゼオ』
教えてもいないのに自分の名前を知られていた事に呆気に取られていると少女が口から煙とため息を同時に出して
『全く、状況認識力が掛けた馬鹿じゃのぅ・・・貴様、スケイルディプライフ・・・ギルドの連中が血眼になって探している奴で有名人じゃからのぅ』
ゼオは少女から目をそらして『し、仕方ないじゃないか・・・殺されないために自衛しているだけなのに・・・』
少女もそこは同感したらしく、頷いて『そうじゃな、確かに貴様が、故意に人を殺しているとはいいがたい・・・が、貴様は現に15人殺している、その武器で』
ゼオの背中のマスケット銃に目を向け、暗い声で呟いた『17人だ』
少女は感心するように頷き『罪の意識もしっかりと持つのもよろしい、じゃが、貴様このままでは敵の憎悪ばかり買ってしまい、終いには勇者の耳に入るぞ』
ゼオも詳しい事は知らないが、竜人達の噂で耳にした事はあった
勇者生まれ来る人間達の中に極まれに恐ろしいほどに強い肉体を持った子が生まれるという
その子は剣を一太刀振るえば大気が震えるほどの力を出すと言われている
そんな化け物にターゲットにされたらどうなるのか、ゼオは冷や汗をかいて生唾を飲んだ
ゼオの顔を見てニヤニヤと少女が楽しそうに笑い『ワシがその疑惑晴らす手伝いをしてやろう』
『そ、そんな都合の良い話、信じるか!そっちにメリットなんて無いし・・・それに僕は竜人なんだぞ!?』
竜人大昔に邪竜が打ち倒され、砕け散った邪竜の破片が人間に当たった者が竜人となった、その伝承から人々は無意味に竜人を嫌い、疎まれていた
少女はタバコの吸い殻を、皿から落として、新たな粉末を入れて吸い始め
煙を吹いて言った
『ワシの目的は・・・竜を救う為にこの地に派遣されてきた者じゃ』