一話【ゼオ】
この作品は作者が自由きままに書いている作品ですっ!
つまらないと感じたらすぐにブラウザバックを推奨します!
それからコメント欄を閉鎖している理由につきましては、小説家になろうサイトの民度低下に伴うトラブル回避の為ご理解ください!
『ハァハァ・・・!全く奴らは!』
背の高い草木に、空を覆うほどの木々の中、全速力で走る一人の竜人
頭に西部劇のガンマン帽子を被った竜人が走りながら後ろを確認する
『居たぞ!!こっちだっ!!』中年の荒々しい男声が森の中で響き、数人の歩く物音と共に迫りくる
竜人は布袋を落さないようにギュと握りしめ、弱音を吐くように『お前たちが俺達を住まわせないようにするから、こうするしかないのに・・・!』
重い荷物を持っている為、竜人の走る速度は遅く、後ろから迫り来る男に追いつかれた
男は全身に皮の防具を装備した傭兵で、腰に装備した走りやすさ重視の軽い20cm程度の短剣を抜刀して構え、竜人へと切りかかろうとする
竜人は攻撃される事を予知していたかのように前方へとジャンプして、背中の棒状の物に手を伸ばす
『お前たちが・・・!』焦りと怒りが混じった低いトーンの声で呟くと
棒状の物を背中から取り出して構え、切りかかる傭兵へと向ける
傭兵は、竜人が構えた物が剣では無い事を見ると、子馬鹿にしたように笑って
『はっ!そんな棒で何ができるっ!!死ね!!化け物!!』
傭兵は短刀を握りしめて勢いよく短刀を振り下ろした
ズガァァァァン!!!
大きな爆発音と共に傭兵の刃先は弱々しく竜人から逸れて地面へと向かい
そのまま傭兵は地面へと倒れる
傭兵は何が起こったのかと、振り返ると、木々の隙間からさし込んだ光が棒状の物にへと当たり、その姿が露わになった
剣とは違い、木を加工して握りやすいグリップが付いた鉄の筒
見た事が無い武器、それに先ほど響いた爆発音
傭兵は体を見るとレザー防具は貫通していて、血が噴き出ている
傭兵は訳が分からず、ただ声を弱々しく呟きながら『お前は・・・何なんだ・・・』
竜人は息を整えながら呟いた
『ハァハァ・・・僕はゼオ・・・それからこれは銃だ・・・お前たちから身を守る為に僕が作った・・・!』
ゼオと名乗った竜人の声は傭兵には届かなかった、傭兵の顔は青くなりすでに息絶えていた
傭兵の仲間は爆発音で驚いたのか、すぐに気配が消え、森が静かになる
『全く・・・なんて日だ』
------------
綺麗な川の水を手ですくい、それを大きな口で飲み干し
生き返るような声で一息吐く『プハァ!・・・生き返るぅ~・・・』
ゼオは一息ついて川の側で座り込むと、ポケットから傭兵と戦った時の戦利品である金貨2枚を見て寂しそうに呟いた『金貨か・・・本当ならどれぐらいの価値があるんだろうか・・・』
せっかく手に入れた金貨も竜人には役に立たない
何故なら使えないからである
ゼオはため息を吐いて金貨をポケットにしまい『金貨があればドラゴンハンター達から見逃してもらえるかもね・・・』
ゼオは立ち上がり木にかけていた重たい布袋の中身を見る
中身は岩塩やリンゴ、それから野菜などの食料
先ほどのドラゴンハンター達はこの盗んだ食料を取り返そうと追撃してきていた
ゼオはその食べ物を見て申し訳なさそうな顔をして『僕達も盗みたくて盗んでる訳じゃない・・・生きる為なんだ』
そう割り切るような言い方でゼオは罪悪感を振り払い食料の入った布袋を閉じて背中に背負う
そして歩きながらゼオは青い空を見上げて『そろそろ泊まる所探すかぁ』
ゼオは川辺を上るように歩いて行き、一時間ほど歩くと、対岸に丁度良い、一人入れるスペースのある穴があった
川幅は6mとても人間では飛び越えられない幅
だがゼオは当たり前のようにジャンプして川を飛び越え、自分の体を見て呟く
『竜人の体には本当感謝しないとね、この飛びぬけた力のおかげで今まで生きてこられたんだから』
穴に荷物を降ろして穴の壁によりかかると、さっきの走った疲れからか、眠くなってくる
------------
『ゼ・・・・オ・・・!・・・』
どこからか懐かしい声が聞こえてくる
『ゼ・・・オ!』
『ゼオ!!ほら起きなさいっ!』
懐かしい声の正体は母さんだった
赤い鱗に白い角の生えた母はエプロンを下げ片手にはフライパンを持っている
顔の表情からして寝坊した自分に怒っているようだ
母に謝るように苦笑いして『ご、ごめん母さん』
母親は仕方なさそうに腰に手を当てて呆れた様子で『もう・・・まったくあなたはお寝坊さんなんだから・・・朝ごはんできてるわよ』
『はーい!』返事をしてベッドから起き上がるとゼオの前には小さな窓があり、そこには竜人20人の程の小さな村が広がっていた
僕はこの村で育った、両親と食事をして、話して・・・勉強して・・・寝て・・・そしてまた次の日が来る、そんな日常を送っていた。
それと僕には生まれた時から前世の記憶が残っていた、何もかもが快適で移動には車を、空を飛ぶときは飛行機、大きなビル、だけど僕の記憶には個人の情報が一切思い出せなかった、自分が誰で、何なのか、友達、家族、家、生活。
前世の人物全てがおぼろげになってしまっていて全く思い出せなかった、でも前世で得た知識や技術は確かに僕の体に残っていた。
僕はこの知識と技術で皆の役に立ちたいと思って頑張った
緑色の鱗の竜人が手を振り、ゼオに物を頼むように『ゼオ、お前さんが言ってた井戸ってのは本当にバケツを落すだけで綺麗で新鮮な水が取れるのは本当か?』
ゼオは自信をもって頷き、胸に手を当てて誇らしげに言う『僕に任せてっ!皆が頑張って穴を掘れば水が出るっ!』
それからゼオ達、竜人達は井戸を掘り続け、水が湧き出た
村人達は驚いてゼオを見『本当に水が出た!』『ゼオはきっと神の知性をもった子に違いないっ!』
ゼオは皆に褒められて嬉しかった
その瞬間、急に頭痛がして、目が覚めた
----------
『ッ!!!』
ガバッ!と起き上がると周囲は固い石に囲まれた穴。
空はすっかり日が暮れて真っ暗になっていた
ゼオは自分の顔に手を当てると驚いた
『ど、どうして・・・心地よい夢だったはずなのに・・・涙と・・・これは・・・汗?』
自分の額から冷や汗のような物をかいていた、体全身が鳥肌立っているのが証拠だ
ゼオは体が震えて、牛革でできたマントで身を包んで体を温めると、震えが治まった
『この時々なる症状は何なんだ・・・?』
ゼオはこの症状が月に1回から2回程度起きる、ドラゴンハンターと戦闘して相手を殺すと必ず起きる
ゼオは自分の頭に手を当てて汗を拭い『こんな事を考えても仕方ない・・・体は問題ないし、いつもの事だ・・・』
そう自分に言い聞かせた
-----------
真っ暗に夜空に月とよく似た青く光る月明りの中、震えるゼオを崖から見つめる紺色の長いストレートヘアの少女が「ようやく見つけたのじゃ・・・星占いの当たり主が」
と満足気に微かに笑った
あらすじで全開ネタバレしてますね、内容からしたらこんな感じなのでお楽しみに!
【作者ページから【魔王の息子(竜人)に転生してしまった:※完結済み】もよろしくね!】