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向日葵の声  作者: 橙月
7/7

緩み、解け、繋ぎ合う



『お疲れ様』

『おぅ、大和。お疲れ』

『…通話に切り替えていい?』

『あー、なら、俺から掛けるわ』


LINEのトーク画面が消え、通話の呼び出し画面に切り替わる。

大和は、3コール分を使って深呼吸をすると、通話を開始した。


心音が、うるさく鳴り響く。


「タカ兄さん、時間を割いてくれてありがとね」

【いいんだよ、気にすんな。それより、話があるんだろ?何だった?】

「……」

【…大和、どうした?】

「………………………………………あのさ」

【おぅ】


大和は開きかけた口を噤んだ。

決断したのだから、言わなければ。

好きな人を待たせてしまっている。早くしないと。…頭では分かっていても、やはり怖くてたまらないのだ。拒絶されることや、幻滅されることが…


【大和。何を俺に話すつもりかは知らないけど、一度落ち着け。俺は、お前に「タカ兄さんなんか嫌いだ」とかさえ言われなければ、大丈夫だからさ】


大和を落ち着かせるように、タカアキが笑いながら言う。

その声音は、いつも通り柔らかくて、温かくて。

出そうになった涙を、必死に飲み込んだ。


「…ごめん、落ち着いた」

【そっか】

「…話したいのは、僕の…ッ」

【ん?】

「………好きな人のこと、なんだ」

【……うん】

「…タカ兄さん、」

【うん、どうした?】








言え。






「僕が好きなのは、タカ兄さん、だよ」


【…………うん、………………え?】

「…ッ」


明らかに動揺している声で「え、嘘だろ?マジか…」と呟いているのが、イヤフォン越しに聞こえる。大和は大和で、「とうとう言ってしまった」と緊張で震える両手を握り込んでいた。


【大和?】

「…」

【やーまーとー】

「……」

【寝たのか?】

「起きてる」

【声震えてる】

「震えてないし」

【返事はしような?】

「ハイ」

【……で】

「?」

【色々と、質問させてほしいんだけど】

「おぅふ」


まだ少し動揺の残る声が、大和の耳に届く。


「き、拒否権は」

【あると思うかい?】

「デスヨネー」


大和は、若干遠い目をしてタカアキの尋m…質問に答えていったのだった。



【なるほどね…奏クンと別れて、割とすぐに俺を好きになってくれたんだ?】

「………………仰る通りです」

【ふーん…………………、大和?どうした?】

「………ッごめん、なさい……ッ」

【えええ何で泣くの!?俺何かした!?】

「違ッ………だっ、て、タカ兄さ、に…迷惑掛けちゃうから…(´;ω;`)ブワッ」

【待て待て待て待て!早とちりするな!】

「でも……ッ!!」


嗚咽は抑えられないし、涙も止まらない。大和は枕に顔を埋めて泣いた。告白の前に我慢した涙が、際限なく溢れてくる。

「大和が自分を好き」、この状況を未だ受け入れられていないタカアキにも、これだけは分かる。


大和の気持ちが、本物であること。

伝えるまでに、相当悩んだであろうこと…


【…あー、大和?とりあえず泣き止んでくれ】

「………グズッ」


大和が落ち着くタイミングを見計らって、タカアキが口を開いた。


【………大和、俺、今信じられないくらい嬉しい】

「…!」

【今までずっと「妹」として見てきてさ、でもいつの間にか大和を一人の女性として見ていて。最初は戸惑ったけど、これはこれで1つの恋愛の形だし、悪くないと思う。大和が泣くほど悩んで、素敵な気持ちをプレゼントしてくれたんだ。…俺も、きちんと返さないとな】

「…え?今、何て…」


頭の整理が追いついていない大和を、今度は意に介さず、タカアキが続けた。


【好きだよ、大和】

「…え!?」

【妹としても、恋愛って意味でも】

「!?!?」

【驚いたか?】

「驚くわ!!!!!!」


声を荒らげる大和の様子に、タカアキが楽しげに笑った。


「何で!?だって…奥さんは!?子供は!?」

【もちろん愛してるよ。それでも、大和に惹かれたんだ…俺も、「いけないことじゃないのか」とか、結構悩んだりしたんだぜ】

「…」

【真っ直ぐで、素直で、困難を乗り越える強さを持った大和は本当に素敵だよ】

「…そんなこと、ない」

【そんなことある。こんな素敵な女の子に想われて、俺も想うことが出来て、幸せだよ】


拒絶されなかった。そのうえ、まさか同じ気持ちだったなんて。

止まっていた涙が、また溢れ出した。


【俺達は恋人にはなれないけどさ】

「……うん」

【それでも、大和のを好きでいていいか?】

「……うん……ッ」

【…だから、泣きすぎだって。目玉溶けるぞ?w】

「タカ兄さんのせいだ僕は悪くない」

【突然のジャイアニズム】




悩んで、泣いて、最後には笑って。

そうやって、少しずつ変わっていく。


太陽に顔を向けて咲く向日葵のように温かい声が、言葉が。

冷えて壊れた心を繋ぎ止めた。


「タカ兄さん、大好きだよ」

【大和が大好きだよ。俺の誇りだ】


2人で笑い合う。


悪くないな、と思えた。

初めまして、橙月です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


衝動的に書き始めた物なので、脈絡はかなり変だと思います。

少しでも楽しんでいただけたなら、作者冥利に尽きます。


…し、精進します:(っ'ヮ'c):


橙月

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