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向日葵の声  作者: 橙月
6/7

「彼」は

【タカアキside】


「真っ直ぐ」


これが、大和の第一印象。何に対してもひたむきに取り組む姿は、それこそ俺には眩しくて。透き通って響くような歌声に、引き込まれるほどの演技力。「とんでもない子が妹分になったものだ」と苦笑した。明るく、自分や周りを慕う彼女は、間違いなく温かい存在だ。


そんな彼女の異変は、やはり歌声に出ていた。


搾り出すように紡がれた声は苦しげで、投稿される曲も悲しい雰囲気の曲ばかり…

本能が、「まずい」と訴えた。

いつの間にかLINEにメッセージを打ち込んでいて、自分でも驚いたことを覚えている。


大和の独白は、文字で、声で、彼女の涙が枯れ果てるまで続いた。


大和は優しい。だから、ずっと弱いところを見せないように振る舞ってきたのだろう。泣き方も忘れ、全て飲み込んできたんだ。


あまりにも、不憫だった…

どうしてもっと早く、気付けなかったのか。

悔しくて拳を握りしめたこともあった。


そんな大和も、今では…完全にとは言えないけれど…ちゃんと立ち直っている。

新しく好きな人も出来たらしく、俺も喜んだ。

人を好きになることを恐がっていた大和が、再び誰かに想いを向けられるようになったことが嬉しかった。


…同時に、「羨ましい」と思ってしまう俺自身に気付いてしまった。


俺には、もう大分前に他界している妻と、今も一緒に暮らしている子供がいる。2人のことを愛していない訳がない。とても大切な人達だ。そして、俺と大和の間には、19もの年齢差。

大和は「兄さん」と呼んでくれているが、正直俺はもう中年のおじさんだ。見た目年齢は結構若いらしいけどな。


これが「許されないこと」であるとは、俺自身よく分かっている。

それでも大和に惹かれてしまう自分は、おかしいのだろうか。温かく、真っ直ぐで、本来の芯の強さを取り戻した彼女に……。


悔しいことだけれど、大和はきっと俺を「兄貴分」としてしか見ていない。

……それでも、いい。

大和が慕ってくれるかぎり、俺は彼女を妹として(好きな人としても)守っていくと決めているから。


なぁ、大和。

俺は、皆にこんな風に接している訳じゃないんだ。

「お前だから」なんだよ。



物思いに沈んでいた夜。

俺のスマホが一件のメッセージを受信した。

「…!!」

それは、遠く、年若い想い人からの。




『タカ兄さん、話があるんだ』


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