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労働哀歌  作者: 錫 蒔隆
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元日に働く

 2011年の元日、なぜ働きに出たのか。12時から17時の5時間だけ、おせち製造に出向いた工場で働いている。時給800円、特別手当などはない。朝はゆっくりできるし、短いからよいと考えたのかどうか。そんな年があってもよいと考えたのか。手帖を見ても、当時の心境はわからない。苦役のあとの帰り道、古本屋で2時間ばかり立ち読みしていたのをおぼえている。なにを読んだのかきれいさっぱり、忘れてしまっている。

 1月3日も、同工場へ働きに出ている。今度は20時から3時。時給は850円、22時からラストまでは1063円。休憩なしの7時間、日給5952円。

 1月2日を空けた理由は、ちゃんとおぼえている。テレビ東京で毎年恒例の、新春時代劇をやっているからだ。その12時間だか10時間だかをテレビのまえに鎮座し、小説を書く……毎年の恒例行事で、それだけははずすわけにはいかなかったからだ。

 大好きだった新春時代劇は年々、縮小されていった。12時間だったのが10時間。10時間だったのが6時間。いまはやっているのかどうか、チェックすらしていない。時間が短縮されたときにはさみしく思ったものだが、いまではそんな情すらも消えさっている。


 ここ3年の元日は、妻と日帰り温泉に行っている。備忘のために書いておく。

 2014年は、お台場の大江戸温泉物語。駐車料金から入場料から、とにかく高かった。縁日めいた飯屋でも、私の食指は動かなかった。とにかくごみごみしていて、外国人も多かった。高料金に見あった設備とは思えなかったが、場所というのも加味しているのだろう。遠いので二度と行くことはないだろうが、よい体験であった。

 2015年は、茨城県境町の御老公の湯。家から車で20分ほどの近さ。テレビのテロップで観たのを、妻に懇請した。ここはすばらしい。2200円と強気の値段設定であるが、その価値はあった。とにかくひろい。客が入っていても、窮屈感がまるでない。ゆったりとできる。劇団をかかえていて、大衆演劇も観られる。食事券5000円つきの10枚綴り2万円の回数券を買ってしまうほどに、私はここに憑かれた。

 2016年は、大宮のおふろカフェうたたね。まづ、つくりが洒落ていた。オープンセット調のカフェレストラン。ハンモックがある。蔵書の量質ともに、意識が高い。浴場に椅子とテーブルがあって、そこに将棋が置かれている。持参した本であれば、湯に浸かりながら読んでもよい。人目が気になって、その自由を満喫できなかったが。


 生きているかぎり私たちは、金銭の奴婢である身からは自由になれない。存在を削って金銭のために働き、存在を削って得た金銭で娯楽をあがなう。死ぬまで、それはつづく。


 たのしめど くるへるやう くるしめど くるへるやうに おどろおどろし

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