午前中のみの仕事
時差出勤で午後からという日がつづくので、午前中に派遣の仕事を入れる。逆に、会社に「午後からにしてくれ」と言ってしまうくらい。朝からの出勤になることを期待してはいけない。どうせ午後からにされるなら、午前中に仕事を入れてしまったほうが賢明であった。そうでもしなければ、食っていかれなかったのだ。昼礼で唱和する社訓「社員とその家族の生活を守り、生活の安定をめざす」、糞食らえだ。言わされるたびに腸が煮えくりかえっていた。リーマンショックをスポンサーにするんじゃねえ。
午前中のみの現場はいくつかあったが、どこも作業内容は同じだった。デバンニング、コンテナからの荷下ろしである。本業でやっていたのはバンニング、コンテナへの積みこみ。これら一連の仕事はつまり、本業の背理であった。積みこみと積み師という生きかたについては、章を設けてじっくりと語りたい。
40フィート海上コンテナ。シャーシ13メートルのトレーラーに満載された荷物を、ひたすら下ろす。どこかの国から海を渡ってきた、舶来の荷物。家具だったりアパレル用品だったりアイスキャンディーだったり。やることは同じだが、アイスキャンディーの荷下ろしだけは不思議な感覚だった。保冷倉庫のなかだから、ひじょうに涼しい。シャーシは冷凍ユニットが入っているから肌寒い。アイスキャンディーを売るのは夏。動いているうちに、体は熱を帯びる。荷物と床に張る霜。季節感がまるでない。
こういう作業は慣れたもので、時間まえには終わらせてしまう。ほかの派遣労働者が慣れていなかったりするので、私が手ほどきをしたりする。こうやれば楽だ、と。どんな仕事も要領である。たとえば、作業員が四人いる。四人で個々に荷下ろしをするよりも、作業を分担したほうが効率的である。二人で荷物の壁を崩して、うしろの二人に荷物を手わたす。うしろの二人がパレットに積みつける。ラップを巻いて、ハンドリフトでコンテナの外へ。その間にも作業が止まらぬよう、パレットは用意しておく。すべてのデバンニングでパレットをなかに入れるわけではないから、すべてそれで対応できるわけではない。だが、要領は同じである。いかに効率的に作業するか。
「So what?」しか書けない芥川賞の三流選考委員が、「肉体労働者への讃仰うんぬんかんぬん」と書いていた(彼女のファンのひと、ごめんなさい。私はあの選評の、上から目線の駄文が大嫌いなのです。彼女の作品は、ほんとうに暇だったら読もうかなと)。バカじゃなかろうかと。労働を肉体とか頭脳とかで分けられると思っているあたりが。頭脳をつかわない労働などあるわけがない。
バンニング デバンニングの 労苦など 露も知らずに 積み師の世界




