紐なしバンジーとドラゴン
第二話です。
雲一つない晴天と言ってもいいほどの青空の中、千優は絶賛落下中である。
「ちょ、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
千優が今わかるのは、自分が今落ちていること。
そしてこのままでは地面に落下してトマトケッチャップになるということだけである。
千優は腕を鳥の羽のようにバタバタさせるが、もちろんそんなことでスピードが緩まるわけがない。
むしろ、体力の無駄使いと言ってもいい。
――もしかしたらここで死ぬのかなぁ。という考えまで浮かんできた。
倉庫で凍死するかと思ったら、今度はいきなり上空にきて落下死である。
――結局、ロクでもない人生だったなぁ。千優は思った。
幼稚園の頃から勉強ずくしの毎日だった。
様々な習い事も文句ひとつ言わずにこなした。(と言っても文句を言ってもやらされたと思うが……)
自分の人生の大半は勉強だったと千優は思う。
それでも、高校に入学するまではまだよかった。
なぜかといえば、その頃は勉強でも運動でも一番だったからである。
お金持ちの子供ということもあって、友達もそれなりにいた。
両親も成績さえ良ければ何も口出ししなかった。
しかし、高校に入学したあたりから生活は激変した。
成績も伸び悩み、二年生になってからはテストが連続で二位になった。
そのせいで両親からの風当たりが強くなり、先ほどのように倉庫に閉じ込められてしまった。
――できればもっと遊びたかったなぁ。
それは、千優の紛れもない本心である。ゲームセンターやボウリングなどもしてみたい。
体に悪いと言われて食べさせてもらえなかったお菓子も食べてみたい。
そう思うと、やっぱり死にたくない!という思いが強くなった。
我が生涯にたくさん悔いあり!とでもいうように顔に生気が戻る。
その時、近くを『なにか』が横切る気配がした。
――飛行機か!?と思った千優は気が付いてもらえるように大声を出した。
「だぁぁぁれぇぇぇかぁぁぁ!たぁぁすぅぅけぇぇてぇぇ!」
大声で助けを求めるが周りに人はいない。
――いや、『人以外の生物』ならいた。
千優はなにかに包まれ、スピードが緩まったのを感じた。
――助かった!と思い、顔に笑顔が浮かぶが、途端に凍り付いた。
何故なら見てしまったからだ。
赤いウロコに覆われた爬虫類を思わせる身体、鋭い爪と牙、縦に割れた黄金の瞳、千優を包み込めるほどの巨大な三つの指でできた手、そして背中から生える翼。
――そう、ドラゴンである。
「ガウッ」
千優は思った。
――あ、オワタ。
自分のことをチキンだと自己評価している千優はその瞬間、ドラゴンに食べられる自分を想像してしまい、白目をむいて壮絶なアヘ顔をさらして気絶した。
「ガウ?」
そこには、アヘ顔の少年と不思議そうな顔をした身長六メートル程度の赤竜という、大変シュールな光景があった。
小説書くのって難しいですね……。
こんなのを毎日書いてる人には頭が下がります。本当に。