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真約 メフィストフェレス  作者: 三文士
29/60

Whatever

まだまだ更新!


天使編まもなく終焉!!!

「あっぶねええええええ」


魔列車に飛び乗ったあたしとタケルは何とか車内に潜り込む事に成功した。


「いやあ。今回ばかりは流石にヤバいと思ったよメフィスト」


タケルが貫かれた肩を押さえたままあたしにそう言った。


「タケル様、大丈夫ですかい?その肩」


あたしが指をさして言うとタケルは意外にも微笑んでいた。


「いや、最初はびっくりしたんだけどさ。なんかコレ、あんまり痛くないんだよ。びっくりするよな。こんなデカい穴が空いてるのに。今は何ともないんだ」


その言葉で、あたしの方が心底驚いていた。痛くない?天使に攻撃されて、痛くないと言いやがる。あたしの同胞である哀れなマスターはそれで消し飛んだんだ。コイツ、一体どうなってるんだ。頭が混乱し始めていたので、あたしはすぐさま考えるのを止めた。今はそんな場合じゃない。


「いやいや、助かって良かった。二手先をいってたんだな。お前って奴は本当に策士だ」


タケルはすっかり安堵の表情をしていた。あたしはすぐさま体制を整える。


「まだホッとする段階じゃありませんぜ。油断してると今度こそ廃になりますよ」


「あん?どういうこった?」


タケルとの会話の最中、あたしは違和感を感じ始めていた。どうも変だ。先ほどより車内が明るく感じる。どころか、間違いなくどんどん明るくなっていっている。


そのうち奇妙な事に気が付いた。タケルが座り込んでいる場所から二、三歩離れた場所に、妙な隙間が空いてるのだ。見落としていたのか。さっきまでなかった気がする。そして不思議な事に、それは次第に広く大きくなっていく。


「タケルさま。すぐそこから離れてください」


「え?なんで?」


「死にますよ」


「ハイーッ」


タケルがこちら側に来た途端、車内の床から天井まで光の線が入ってゆきそれが徐々に辺りに広がっていった。光の線だと思っていたのは切り筋で、車内はそこから完全に両断された。誰かが、魔列車を車両ごと切断しやがったのだ。


「メフィストォォォォォォォォ」


タケルが驚いて雄叫びを上げたが、あたしは至って冷静に奴の頭を引っ叩いてやった。


「静かにしてくださいご主人様。もうすぐクライマックスですよ」


あたしは全身のエネルギーを一点に集中させた。別に何をするってわけじゃないが、こうすると落ち着く。


切り離された向こう側の車両はその場で歩みを止め、どんどん視界から遠退いていった。そして、何処からともなくガブリエルが飛んできてあたし達のいる車両に降り立った。


「せめて入り口から入って来たらどうだい天使サマ。あんまり行儀が良すぎるぜ」


最早あたしの事の言葉は届いていない様子だった。唇は何かをボソボソと呟いていたがとても会話できる状態じゃない。ガブリエルは完全に壊れていた。


「さあ、お終いにしよう。今こそ断罪の時だ。今ここで、お前たちが塵になる事が主の御心に沿うことなのだ」


「何ムチャクチャ言ってんだよ。テメエが頭にきてるから追っかけてきてんだろ?神の意志なんて今のテメエには関係ねえさ」


「お終いにする。主の御心。ワタシの為に」


ガブリエルは再び剣を構え、大きく振り下ろした。


あたしはこの短期間で考えを巡らし頭をフル回転させ、ひとつの賭けに出てみる事にした。


あたしはタケルの襟首を掴んで、ガブリエルの放った衝撃波から身を守る盾にした。


「えー!な!ちょ!おまーーーー」


タケルは完全にビビっていたが足掻くにはあまりに刹那の出来事過ぎた。


そして、物事はしっかりあたしの思惑通りになった。


「アレ?」


衝撃波を全面に受けた筈のタケルは無傷だった。


「なんだと!?」


これには流石のガブリエルも正気を取り戻した。


「やっぱり。思った通りだ」


「メフィスト!なんだ!何が起きた?」


あたしドヤ顏で驚愕する二人に説明をしてやる事にした。つまりはこういう事だ。


「ガブリエルの持つソレ。つまり神楽器ことデュランダルは神に仇なす者を徹底的に駆逐する武器なんだろ?だからさ。てことは逆に神に対して反逆の意志が無い者を傷つける事は出来ないってことだよな?この男には神へ反逆する意志なんてない。あたしらを敵と見なしてるのは、あくまでそちらさんの一人相撲だからな」


「ほう!なるほど!」


「確かに主は、自らの子を誤って傷付ける様な稚拙な武器をお造りにはならない。だが、しかし‥」


ガブリエルは解せない、という顔だ。あたしがその疑問を晴らす。


「だからって悪魔のあたしまでスルーってのはおかしいかい?おうともさ。あたしも驚いた。おそらく普段なら問答無用で塵になってたけどあたしは今、当のその神サンと賭けの真っ最中なんだ。神サンともあろう方が、勝負の途中で相手を塵にしちまうなんてズルイ事はやらないだろうと。そう踏んだのさ」


それだけじゃない。今のあたしはタケルの召使いだ。魂の契約をしてる。そこらへんも大いに関係あるだろう。タケルの魂が、本当の意味であたしの盾になったとも考えられる。


「そういうワケだからガブリエルちゃん。アンタのその武器じゃあたしらを傷付けるのは無理だ。諦めて天界に帰りな」


あたしは勝ち誇ってそう言った。やっぱり物事ってのは、何でもやってみるもんだ。真に勝利を勝ち得る為には、危ない橋を全力で駆ける事だって必要なのさ。


「さあ、タケル様。前の車両に行きましょう。ここじゃあんまり風通しが良すぎる」


あたしがそう言って後ろを向いた瞬間とてつもなく鈍い音と共に、全身に響く程の衝撃が襲ってきた。だがそれは天界の武器から繰り出されたものではなく、慣れ親しんだステゴロの触感だった。


「誰が帰っていいと言ったんだ?腐れ悪魔め。諦めろ?寝言を言うな」


「メフィスト!」


あたしは即座に体制を整えようとしたのだが、何しろガブリエルの攻撃が重すぎた。簡単に立ち上がれそうもない。


「武器が効かないのなら拳で殴れば良い。簡単な話だ。例え神がお前たちを許しても、私は絶対に許さない。原型が無くなるまで殴り倒してやるぞ」


最早天使とは程遠い悪どい顔つきになっている。


「あたしらをステゴロで殺るってか。例えそれが、『主の御心に反して』いてもかい?」


あたしは倒れ伏したまま問いかける。


「主の御心は関係ない。私がそうしたいだけだ。お前らを殺す!」


やったね。上出来だ。


その言葉をずっと待っていた。


「あははははは」


思わず笑いがこみ上げてきて止まらなくなってしまった。


「なんだ。あまりの絶望に壊れたか?」


「おいメフィスト!しっかりしろ!」


ここにきてやっと、あたしは勝利を確信した。あたしの考えが正しければ、ここでフィナーレだ。


「さあ。どっちから肉塊になりたい?悪魔からいくかい?」


ガブリエルが詰め寄ってくる。あたしは余裕のひと呼吸をして、タケルに呼びかける。


「タケルさま。どうやらタケルさまは天界や地獄についてあんまり無知の様ですからひとつこの場でお勉強といきましょう」


「なんだおまえどうした!?ああ、本当にメフィストがダメになってしまったのか」


タケルは頭を抱えて嘆いている。


「良いからお聞きなさい。良いですか?依然話した『完璧な試作品』と『不完全な完成品』そして『不完全な試作品』の話は覚えていますよね?」


「ああ、天使と人間。それから悪魔だろ?」


「ご名答です」


「それがどうした!!お喋りはいい!ぶっ殺して殺る!」


ガブリエルが息巻く。


「落ち着けよ優等生。ここからが良いところだ」


あたしは指で相手を制する。


「もうひとつこれら三つの種族に関わりが深く、しかしその中でも落ちこぼれで中途半端な種族がもう一つ存在するのをご存知ですか?」


「なんだそれは?」


二人が揃って同じ質問をする。


「御覧なさい。今、タケルさまの目の前におります。あの者がソレです」


あたしはガブリエルを指差す。


「へ?」


あたしの言葉に、二人の動きが停まる。


「あの者が、『不完全な不良品』」


「堕天使です」


ガブリエルの美しく純白な筈の右の翼が、付け根の辺りから漆黒に染まり始めていた。


奴は感染してしまったのだ。「堕天」という、天使のかかる不治の病に。



続く

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