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真約 メフィストフェレス  作者: 三文士
13/60

Holla Holla

まだまだまだ、お付き合い下さい。最近ポイントが増えてきて素直に嬉しいです。皆様ありがとうございます。

三人目だと?マジでしつこい展開だ。良い加減話を進めさせてくれねえのかコイツらは。


「2Pカラーの次は隠しキャラか?まさか四人姉妹とか言わないよな?」


「我々は三姉妹です。というか、貴女がどういう方か存じ上げないし何を仰っているか理解できませんがこの状況から察するに、貴女は我々の敵でしかもかなりお強いとみた。」


「まあね。お察しの通りさ。だが間違っている事もある。あたしはお前さんたちの敵じゃない。喧嘩吹っかけてきたのはそちらさんだ。」


「いやいや、だとしてもやっぱり貴女は我々の敵だ。」


「なんでだよ。違うってんだろ。」


その言葉に少女は可愛い顔を歪ませて血管を浮き立たせる。


「何が違う?おうゴルァ?最初どうあれ身内の二人がここまでヤられてんだ。ここまで来ちまったらどっちが先ぃ手ェ出したなんざどーでも良いんだよ。テメエをヤらなきゃ、落としどころが見つからねえんだ。」


ヤバい。コイツは多分ヤバい。


実力は勿論だが、イカれ具合も断トツだ。


今度の少女も同じ様におかっぱ頭で浴衣だったが、その色がひときわ印象的だった。それは鮮血の様に紅く地獄の新鮮な炎の様で、息を飲む程に綺麗だった。帯は蒼く、目には白以外の色が無かった。黒目があるべき場所も白く、ただの不気味な2つの白い空洞が開いているようだった。


「おい害虫。」


「あたしの事かよ。随分だな。」


「事実だろ。なにしにここへ来た。なんで妹らをブチのめした?」


「あたしはオーナーに会いたいんだ。コイツらが勝手に絡んできたんだ。ていうか、この質問はもう3回目なんだ。良い加減うんざりしてんだ。」


もうコイツらってば同じ顔で同じことばっかり言ってる。まだ幻惑術が効いてんのか?


「そうか。悪いな。だがこっちぁテメエが何しに来たか知らねえから聞いたまでだ。ここを仕切ってんだからそれくらい当たり前だろ?」


「その割には妹たちは大したこと無かったなあ。あたしが察するにお前さんが馬鹿みたいに強いだけか?コイツらはそれを後ろ盾にして偉ぶってるだけの小物なんじゃねえか?」


「見当違いだな探偵さんよ。確かに妹たちは弱い。だが私も同じくらい弱いんだ自慢じゃねえけどな。」


コイツ、やっぱりイカれてる。


「じゃあなんで雑魚を仕切れてるか。よろしい。種明かしといこう。」


そう言うと真っ赤な少女は思い切り息を吸い込んだ。


「マシロォォォォォォォォ!アオイィィィィィィィィ!起きろ!ゴミ溜めのクソになりてえか!!!」


その一声で、さっきまで伸びていた二人はヨロヨロと立ち上がった。


「すんません‥今、起きますんで‥」


「ゴメン、ウチら油断してたんだ‥ゴメンよ」


どうやら二人はこの紅い少女に酷く怯えてるようだった。


「それで良い。早くしろ。‥やるぞ。」


三人が等間隔に列を作って並ぶ。一番前にイノシシ。真ん中にアオイ。そして奥に紅い少女。


もしかして三人で縦に並んで突っ込んでくると攻撃する隙がなくて無敵だぜアタック的な?踏み台にしないと勝てないジェットストリーム的な?


それは無いか。


「マシロとアオイは油断してたんだ。最近は私ら三色姉妹に喧嘩を売ってくる奴がいなくてね。自分が強いと過信していたんだ。」


「うす。」


「そうだね。」


「だけど私は油断しねえ。過信しねえ。初っ端から全力だ。三人でね。」


そう言うと紅い少女は馬鹿デカイ声で叫ぶ。


Satand(サタウンド)『jam』発動」


「マズい!マジかクソがっ!!」


あたしは急いで源田と自分の周りに防御結界を張った。


まさか地上でSatand(サタウンド)を使っちまう奴がいるなんて。オヤジが知ったらなんて言うか。


Satandは悪魔にとって必殺技みたいなもんだ。自らの魂の琴線に触れ、身体中のエネルギーを具現化し音にのせて放つ。その能力は実に様々で、かなり多くの種類があると言われている。funk、soul、bluesと言った名前がついている。コイツらの言うjamってのは初めて聞く名前だ。


ともかく、奴らがSatandを発動させた以上どんな能力にせよ用心するにこしたことは無い。


あたしは結界を維持したまま身構える。


正面でアメフト選手みたいな勢いでイノシシ悪魔が突っ込んでくる。


「なんだよ!結局やることは同じか!?芸がねえなあ!!」


その瞬間、世界が歪む。イノシシの姿が消えて辺りはサイケデリックなグジュグジュした景色が広がる。


ヤバい。さっきの幻惑術だ。しかも気のせいか、さっきよりも強力に脳ミソに侵入してきている気がする。


突然、物凄い衝撃があたしを襲った。身体は吹っ飛ばされ危うく意識が飛びかけた。


『どうだい?これじゃ避けれねえだろ?』


『悪いね。こうなったらもう後戻りは無しだ。』


イノシシとアオイの声だ。


「へっ。どうしたって二番煎じに過ぎないさ。だったら四方どの角度から突っ込まれたって当たらない様な速さで動きゃいいだけだ!!」


あたしは様々な場所へ凄まじい速度で移動を繰り返す。端から見てたら瞬間移動してるみたいに見えただろう。


攻撃できなくったって当たらなければしばらくは凌げる。その間に何か手を考えなきゃ。


しかしそんな其の場凌ぎはすぐに打ち砕かれる。


『マシロ、三秒後に南へ20度方向。そのあと一秒後に斜め右。』


あたしが自分でブレーキをかける前に先ほどと同じくらいの衝撃に身体を撃ち抜かれた。


そのうえ吹っ飛んだ先で再び衝撃を喰らう。


「があっ!」


あたしはサイケデリックな地面に膝をついて倒れ込む。


「クソっ。どうなってやがる。」


『音楽ってのはさ。単音だけじゃ音楽として未完成な物なんだよ。』


どこからか紅い少女の声がしたかと思うと、目の前に突然その姿を現した。


『私たち姉妹も音楽と同じ。マシロが力強いドラムの如くリズムを刻み、アオイがサックスの様な妖艶なメロディーを奏でる。それぞれは凡庸な音でしかないが、合わさる事によって上質な音楽に昇華する。しかも姉妹がゆえ各々が持つ個性を崩すこと無く即興で呼吸を合わせる事が出来るんだ。もちろん、それは私というベースが効いて初めて成り立つセッションなんだが。』


「即興か‥それでjamってわけね。クソっ。多勢に無勢だ。」


姿は見えてるがコイツはもちろん本体じゃない。紅い少女は頭から二本の大きな角を生やしていた。とても立派な角で冬の木の枝の様に美しくしなやかであり、どこか神々しさすら感じるほどだった。


『さて害虫さん。どなたか知らないがせっかくここまで来たんだ。せめてお別れに教えてあげましょう。私のこの二本の角には左右それぞれに能力があるんですよ。左はレーダーの様に生体エネルギーを感知する力。右は私の望む相手の能力の強化。』


「どうりでさっきよりタックルや幻惑術が強力なワケだ。」


『実際この力は戦闘向きじゃない。だが、我々三人が集まる事により無敵に近い実力を発揮する。これがjam。我々のSatandです。』


どーしてこう悪魔ってのは親切にペラペラ自分の事を話すのか。それはね、悪魔ってのは目立ちたがりなのさ。


『さようなら。次で最後です。何か最後に言いたい事は?』


「お前さんも悪魔ならそういう喋り方は止めた方が良い。それじゃまるで天使だ。」


『くたばれクソビッチ。消し炭になんな。』


へへ。そうそう。それでこそ悪魔だよ。


思ったより大ピンチな場面だったが不思議と冷静だった。


何故だか自分でもよくわかってなかったけど、あたしは絶対助かると思っていた。そしていつも通り、助けは突然やってきた。


「ゥオラアアアアア!アカネェイ!」


「お父様!?」


「パパ!?」


「オヤジさん!?」


それはまるで、落雷のような音だった。


突然幻惑術が解け、目の前ではマヌケ面した少女三人が怒号によって固まっている。


声の方向に視線を動かすと、酒の瓶を片手にくわえ煙草で歩いて来る男が見えた。


男は長身で長髪。歳の頃は三十代前半に見える。黒い革のライダースジャケットを素肌に着込み、身体中のそこかしこに彫られた刺青がチラチラと見えている。


男が時々口をつける酒の瓶のラベルには『スピリタス』と書かれているのをみると、それをラッパ飲みしてる時点でコイツが人間じゃない事がよおく解る。


衣服や肌についた酒に時々煙草の火が引火して火の玉が発生しているみたいだったがこの男は全く気にしていないようだった。


「おい、アカネ。テメエいつまで俺を待たせんだ?テメエが『三分で戻ります』って言うから待ってんのに、もう五分も経ってんじゃねえか!!消し炭にすんぞコラ?」


男は紅い少女に煙草の煙を吹きかけ凄まじい勢いで睨みつけている。


「申し訳ありませんお父様。しかし、あと一撃で、あと一撃でも当てれば終わりますので。」


「あと?一撃だ?」


男はこっちを見て、あたし状態を確認しているようだった。


「はい!もうチェックメイトです!」


「おい。くだらねえこと言ってんじゃねえぞ。テメエら三人揃ってんだ。ハナっから一撃で仕留めろよ馬鹿野郎!息する隙を与えてる時点で、テメエらの負けだろうが!」


そう言うと男は身体中から凄まじいプレッシャーを解き放ち、三人の少女達を圧倒した。


「テメエらは負けたんだよ。真剣勝負で一撃必殺が出来なかった時点でな。そこになおれ。俺が消し炭にしてやる。」


男は突然手に持っていたスピリタスを少女達にブチまけた。信じられるかい?そんな理由で燃やされてたまるか。


「お許しください、お父様!」


「ゴメンなさいパパ!」


「オヤジさん、勘弁して下さい。」


少女達は必死に陳謝する。


「緩いこと言ってんじゃねえよ。」


あたしは別にこいつらを助ける義理はないんだけど、ひとまず火あぶりは後回しにしてもらって先にあたしの話を聞いてもらうことにした。


「あのーお取込み中んとこの悪いんだけど、アンタさんがここのオーナー?」


「ああん?」


男は火の着いた煙草を投げようとした手を止め、物凄い迫力でガンつけてきた。


「ソイツですパパ!そのビッチがアタシらにこんな事をしたんです!パパの知り合いだとか嘘までついて浸入しようとしてきたんです!」


「はあん。コイツかよ。ウチで暴れてるって世間知らずは。」


男はこちらに向き直り、ゆっくりと歩いてくる。


「ここが誰のハコだか解ってんのか?テメエだって悪魔の端くれなら『楽園の蛇』って二つ名くらい聞いたことあんだろ?」


「『楽園の蛇』。かつて原始の人アダムの妻イブをそそのかして、二人に知恵の実を食べさせ楽園追放の原因となった蛇。通称失楽園事変の立役者。それが『楽園の蛇』でしょ?」


「見た目と違って勉強家じゃねえか。良い心がけだな。驚くなかれ。テメエは今、その伝説的存在を目の前してるんだぜ?」


「と言うと?」


あたしは努めて冷静に反応した。だが反対に、心は昂りを感じている。


「俺がその立役者、アマル様だ。恐れ敬え、小娘。」


男は決め台詞を放ちこの上ないドヤ顔をあたしに向けていた。


「へぇ。」


あたしはなるべく心を込めずに言った。少しだけ、悪戯心が働いてね。


案の定男は烈火の如く怒った。顔中に血管が浮き出るくらいに。男の目が爬虫類の様に鋭くなってあたしを射抜いた。


「テメエ。俺を舐めてるな。あんだその顔は?クソ腹が立つ。テメエから消し炭にしてやる。今すぐだ。」


男があたしにスピリタスの瓶を投げてきたのでサクッとかわしてやった。あたしは終始、目を逸らさずに相手の爬虫類みたいな瞳を見つめていた。


「おい。良い度胸だな。いっちょまえにガンくれてんのかよ。コイツら三人にも勝てねえのに俺と喧嘩する気か?イイねえ。イかれてるよお前。」


「‥‥‥」


あたしは沈黙する。ただじっと、相手を見つめている。


「ダンマリか?気に食わねえなあ。いよいよ。‥しかし‥なんだあ?どっかで‥」


男の表情が怒りから疑問に変わってゆく。さあ、果たして気がつくのだろうか。


「待てよ‥テメエの顔は知らねえ。だがその目だ。その炎の様な目はどっか会ったような‥」


「オヤジさん。ホントにコイツと知り合いなんで?」


「うるせえ。黙ってろ。今思い出してる。」


男は考える。イライラしながら。頭を掻いて思い出そうとする。


そしてハッと、顔を上げる。


「お前‥もしかしてメフィストか?」


あたしは思わず顔がニヤけちまう。


やっぱり。この人なら思い出してくれると思った。


「久しぶりだね。アマル叔父さん。」


あたしは伝説の立役者、『楽園の蛇』にハグを要求した。



続く

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