プロローグ
夕焼け空の下に、一人の少年が立っていた。
少年の瞳には、石でできた小さな墓が映されている。
「久し振りだな……」
立派な口ひげを蓄えた白髪の紳士が、少年に声をかけた。
「そうだな……本当に久し振りだ」
少年はそう言って紳士を振り返ると、懐かしそうに目を細めた。
「変わらないな……お前は」
紳士は少年を見て、ハハッと笑った。
「……まぁな。お前は老けたな」
「当たり前だ」
「だが……」
少年は言葉を続ける。
「変わってないよ、お前も……」
「…………」
「子供はいるのか?」
「いた。だが、死んだ」
「――!?」
「でも、孫が一人いる。娘に似た可愛い女の子だ」
「そうか……」
少年はふうっとため息を吐いた。
「その子なんだな……?」
少年が問う。
「あぁ、そうだ。俺もこの五十年間、必死に研究をまとめ続けてきた……それに、あの子には才能がある。あの子なら大丈夫だ。だから……お前の力を貸りたい」
「何を今更、改まってるんだ? そんなこと、とっくの昔に約束済みだろう?」
「……そうだったな」
紳士は苦笑した。
「結局……」
少年が言葉を紡ぐ。
「結局……同じことしてたんだろうな、俺たちは……五十年間……」
「……あぁ」
少年は墓に向き直った。
「楽しみにしてろ。お前にも父さんみたいな最期を迎えさせてやる」
「まるで、俺が親の敵みたいだな」
紳士が爆笑する。
「ありがとう。楽しみにしてるよ――」
『ぱんでくてん!』というホームページで掲載している作品になります。PC向けのホームページでは携帯から読みにくいだろうと思い、こちらに投稿させていただきました。
なお、現在『ぱんでくてん!』は休眠中でございます。もっぱら、なろう様で更新しておりますので、よろしくお願いいたします。