第5話「ノイリ…かわいいです!!」
「っと言うことですまないがまた留守番な」
「またですか…」
学校から帰ってくるとまず淳一は少女にこれからのことを話した。
「またなんですか…」
何度も悲しそうにつぶやく少女を見て少なからずも心が痛むが少女のためにグッとこらえるしかなかった。
「大丈夫なんじゃない?」
しかし、そんな淳一の決心を折るように歩音が横から口を挟む。
「だって唯依さんだよ?大丈夫だと思うな」
「確かにそうだけど…一応EDENに属してるんだぞ。もしかしたらがあるかもしれないだろうが」
「心配しすぎだよ、だって唯依さんは何も変わってないし。それにこの子が可哀相だよ。またお留守番なんて」
「いやでもな…」
しばらく二人の口論が続く。
しかし、それを止めるように少女が口を出す。
「ありがとうございます。淳一さんも歩音さんも」
「「え?」」
「二人とも私のことを考えてくれてありがとうございます。私は留守番でも大丈夫ですから、二人は行ってきてください」
そう言う少女の顔にはやはり寂しさが残っていた。
「…行きたいのか」
「えっ」
予想外な淳一の声に少女はすぐには答えれなかった。
「行きたいのかって聞いたんだよ」
「…は、はいっ!!」
「しゃあない、適当にごまかしてみるか」
「あ、ありがとうございます」
少女が勢いよく頭を下げる。
その風景を見て、歩音がクスッと笑う。
「なんだよ…」
「なんでもない。ただ、淳一はやっぱり淳一だなって」
そう言うとまたクスッと一つ笑う。
「わけわかんねえよ。はぁ……それじゃそろそろ行く準備するぞ」
「ほんと、素直じゃないだから」
「そうなんですか?」
「そうなの」
未だに不思議そうな顔をしている少女とクスクスと笑っている歩音を部屋に残し支度へと向かっていった。
「かわいい子ねぇ、でへへ」
「ふわわわわっ!!」
淳一たちが着いた時には既に唯依はこの調子であった。
今日の宴会会場―佐渡食堂は名前の通り遊理香の実家である。
小さな村に一軒だけある食堂で普段は客などいないのだがこのように宴会会場としてちょくちょく使われることにより今に至っている。
「なによなによ、この子はどこの子よぉ」
「え、えっと…」
酒が入った唯依は止められないと悟り少女には犠牲になってもらうしか手段が選べなかった淳一たちはそろって口を濁した。
それぞれ考えることは同じで少女の正体については隠しておきたいという意見は一致していた。
「まぁ本人に聞こうかな…名前は何て言うのかなぁ?」
後ろから頬をすり合わせるように抱き着かれながら唯依は尋ねる。
「ノストラン=イルミナード=リガスティです」
いつぞやのように淡々と丁寧に名前を告げる。
(あっ、口止めするの忘れた…)
思った時には既に時遅し、彼女は名前を放ってしまっていた。
「リガスティ…へぇ…」
しかし、唯依の反応は淳一たちが思っていた物とは程遠い落ち着いた反応だった。
「…?」
淳一たちとはまた違った反応に戸惑う少女。
「…ってかまた長い名前ねぇ。なんか代案ないのっ!」
突如テンションを戻す唯依。
その声に我に戻る淳一たち、どうにかその声に歩音が答える。
「代案って?」
「長くて呼びにくいし、なんか、こう呼びやすくてかわいいの」
「つまりあだ名…みたいなものか」
「そうそれが言いたかったの、さすが彩奏ちゃん」
「あだ名かぁ…確かに必要かもね」
「リ・ガ○ィ」
「待てさよ。それじゃあ量産型Ζだ」
マニアックなボケを華麗に突っ込む公一。
しかし、とうの本人は本気で言っていたのか軽く落ち込んでいる。
「ノイリ…とかどうかな?頭文字取っただけなんだけど」
そこで淳一が一つ意見を出した。
「…いいんじゃないかな、かわいいと思う」
「淳一にしては珍しく良い考えだな」
「珍しくってなんだよ…」
「それよりこういうのは本人が気にいるかだけど…」
遊理香が少女の方に向きながら言おうとしていた言葉を止める。
「それは必要なさそうだね」
少女は満面の笑みでうれしそうにしていた。
「ノイリ……かわいいです…ホントにかわいいです。ありがとうございます淳一さん!!」
心底うれしそうに感謝する姿を見て淳一は顔を赤くしながら顔を背ける。
「き、気にいったんならよかったよ」
「ありがとうございますっ!!」
「さてと、それじゃあこの子のあだ名も決まったことだし始めますかっ!!」
唯依が場を取り仕切って乾杯の音頭をとる。
「私の帰省&ノイリとの出会いを祝して乾杯っ!!」
そこから続く宴会は12時を回るまで飲み食い騒ぎ続けた。
「で、結局またこのパターンか…」
昨日に引き続き一人残された淳一。
また酒が入ったのか熟睡している面々のフォローをし始める。
「だからなんでおまえらまで酒を飲んでるんだよ……」
はぁ、と一つため息をつきながら借りてきた毛布をかける。
全員に毛布を掛け終え最後にノイリに毛布をかけ、隣の空いた席に座る。
「連れて来てよかったな」
隣を見ながら一言漏らす。
(結局昨日もちゃんと話せなかったし…それにとても楽しそうだった)
誰かが何かをするたびにノイリは本当に嬉しそうに笑っていた。
(そういえばノイリの名前を聞いたよね時、唯依さんが何かに反応してたな)
少しずつ眠気に襲われ始め思考が曇っていく。
(まぁ明日にでも…聞けばいいか……)
そうして、ノイリの横で同じように眠りにつく。
「で、急に呼び出した理由は?当分は休暇って聞いたけど」
ほの暗い少し広いぐらいの部屋に男はただ座って彼女を待っていた。
「すまないね。急な用なのだよ」
EDEN設立の張本人―西城隆之が椅子に深々と座りながら続ける。
唯依もそれをわかって口を挟まない。
「彼女からの依頼でね…まず、君にしかできないと思って君を呼んだ」
「へぇ…彼女からねぇ。元気にしてる?」
「さぁ?元気なんじゃない、こうして連絡がきてるんだから」
「まぁ、そうよね」
あっけらかんと言う隆之に唯依は呆れながら答える。
「それじゃあ内容は適当に読んどいてね」
そう言うと隆之は書類を目の前の机に投げ出す。
「へぇ…また懐かしい場所ね」
「今から出ればクリスマスの日にはつくだろう」
「いきな計らいじゃない久々に楽しんでくるわ。“休暇”としてね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。何か所望の品はあるかい?」
「そうね…私の手入れした子たちを連れていってもいい?」
「またなんともお金の使うことを…まぁ君には逆らえないよ。なんせ今こうしていられるのも君のおかげだしね」
そう言うと椅子から立ち上がりだらしなく掛けているだけの制服を一度整える。
「『轟雷の乙女』…君の好きなようにするがいい」
こんばんわ、林原甲機です。
皆さんGWはどのようにお過ごしでしょうか、自分は女の子と一緒にキャッキャッうふふしている…という夢を見ながら日々を過ごしています。
少し更新遅れました、楽しみにしていた(いてくれるのかな?)方お待たせしました。
いいわけではありませんが模試とか宿題の多さとかいろいろ大変ですが、更新ペースだけは乱さない様に頑張りたい思いますので、これからもよろしくお願いします。
あ、あと来客数が80を超えました。
なんというかキリの悪い数字を発表なんてしてしまってしまいましたがいつも来てくれている方々本当にありがとうございます。
さて、本編の方ですがそろそろ少女―ノイリの正体が見え隠れしてきましたね。
…これからは地の文の『少女』を『ノイリ』と書いては消すの行動を取らなくてすみます(笑)
GW中にもう1話…いや金曜日までですね。
ついでにキャラ紹介、設定紹介のページも作りたいですね。
名前でしか出てない『RS機関』についても書いておきたいです。
さて、今日もまた少し雑談です。
今こうして更新している間にテレビでただただバイクで運転しているだけの番組やっているのですが………バイクっていいですねぇ。
なんというか、きれいな景色を求めて行くあてもない旅ってのをしてみたいです。
まぁ、今年はそんなことも言ってられないのかもしれませんが…orz
それでも自分のペースだけは折らずに過ごしていきたいです。
それでは、また次回。林原甲機でした。