執念の結末:水面に映る「敗北者の顔」
「……関係ないんだよ、こんな顔」
森の泉。水面に映る自分の顔を、ユウキは泥を投げつけてかき消した。
白銀の髪も、タレ目の大きな瞳も、異世界の化け物にとっては「食いやすそうな肉」の目印でしかない。
五回負けた。五回死にかけた。
その事実は、どんなに見た目が可愛かろうが、レベルが0であればこの世界では「ゴミ」と同じだという現実を、ユウキの心に刻みつけていた。
「油断なんて期待しない。あいつらは、殺しに来る」
ユウキは震える指先で、自作の重層罠を確認した。
敵が「可愛い子供だから」と隙を見せることなど万に一つもない。むしろ、全力で噛み殺しに来る。
だからこそ、ユウキも「人間」であることを捨てて、獲物を確実に仕留める「罠」の一部になりきった。
非情な「間引き」
「ギチギチ……」
赤い瞳の群れが、一分の隙もなくユウキを囲む。
一斉に地を蹴る音。
ユウキは表情一つ変えず、ただ淡々と、計算し尽くしたタイミングで仕掛けを解放した。
ドッ……!!
崩落した地面の底、逃げ場のない粘着沼に、ウサギたちが次々と飲み込まれていく。
だが、奴らは止まらない。仲間の背を足場にして、地獄の底から這い上がろうとする。
その「ガチの生存本能」に対し、ユウキは容赦なく次の仕掛け――重い岩を吊り下げたバネ式の打突罠を放った。
メキッ、と嫌な音が森に響く。
悲鳴を上げる暇も与えず、重質量がウサギたちを沼の底へと叩き伏せる。
知恵比べですらない。これは、生き残るための「作業」だった。
勝利なき生存
「……はぁ、はぁ……っ」
すべてが終わった後、ユウキは膝をつき、激しく喘いだ。
檻に追い込んだウサギたちは、なおも檻の鉄線を食いちぎらんばかりに凶暴な目を向けてくる。
勝った。だが、心に爽快感など微塵もない。
「……レベル0のままかよ」
ステータス画面は変わらない。
これだけ命を削って、知恵を絞り尽くして、ようやく一晩を生き延びた。
ユウキは、白銀の髪を乱暴にかき上げ、再び泉の淵に座り込んだ。
「可愛い顔してても、死ぬときは一瞬。……次は、悪魔か」
水面に再び映り始めた自分の顔を、ユウキは今度は見つめなかった。
その瞳には、すでに次の「死地」を見据えた、冷たく硬い光が宿っていた。




