敗北と、泥を啜るような作戦
ユウキは村外れの川原に倒れ込み、激しく咳き込んだ。
自作の石斧は、スライムのぶよぶよした体表に弾き返され、挙句の果てに粘液でボロボロに溶かされた。
右腕には、スライムの酸に触れた火傷の跡が赤く腫れている。
「なんだよあれ……。物理攻撃が効かないなんて、ゲームの設定だけにしてくれよ……」
アニメの主人公なら、ここで隠された魔力が覚醒して一撃で仕留めるはずだ。
だが、ユウキに起きたのは、ただの**「敗走」**だった。
逃げ惑うユウキを見て、遠くから薪割りをしていた村人が鼻で笑った。
「勇者様が、泥だらけで逃げ帰ってきたぞ」
「レベル0が調子に乗るからだ」
冷たい言葉が突き刺さる。信頼など、マイナスからのスタートだ。
ユウキの作戦会議:武器の改良
「くそ……。見てろよ、絶対あいつをブチのめしてやる」
ユウキは地面に図を書き始めた。
現代の知識を必死に絞り出す。
スライムは液体に近い。なら、斬るのではなく、中にある「核」を壊すか、体質そのものを変えるしかない。
武器の熱強化
「石斧じゃダメだ。もっと鋭くて、溶かされない素材……。村の鍛冶屋のゴミ捨て場に、使い古しの鉄屑があったはずだ。それを拾って、焚き火で熱して叩く。形なんてどうでもいい、鋭い杭を作るんだ」
弱点の推測
「あいつ、水辺にいたけど火には弱くないか? もし油があれば、火をつけた杭を叩き込める。村の食堂から、使い古しの廃油を盗む……いや、交渉して手に入れるしかない」
ヒット・アンド・アウェイの徹底
「今の俺の体力じゃ、3分も戦えば息が切れる。1発入れたら全力で走って距離を取る。アニメの華麗なコンボなんていらない。泥臭く、1ミリずつ削るんだ」
暇が生んだ「執念」
「……あーあ、なんで俺、こんなに必死になってんだろ」
ふと、ユウキは自分の手のひらを見た。
豆が潰れ、泥と血で汚れている。元の世界ではスマホをいじるだけだった指先が、今は何かを作り、戦うために震えている。
「でも……これしかやることないしな。異世界に来てまでニートはもう飽きた」
ユウキは立ち上がり、鍛冶屋のゴミ捨て場へと向かった。
次は、負けない。
たとえ「レベル0」のままでも、知恵と準備で殺してやる。




