10.不貞の子の心内
昨日投稿と繋がっています。
まだ読んでいない方はそちらからお願いいたします。
あとがきにお知らせがございます。
よろしければ最後までお目通しください。
「子どもだけこんなところにいちゃ、気になるでしょう」
「いいよ。団長が部下を寄越すからって言ってただろう」
「じゃあ部下の方が来るまでいるわ」
ブラントは私がリリアちゃんに害をなすと思っているのか、警戒心を剥き出しにしている。
確かに私はダリオもシアラも許さないし大嫌いだ。だが、だからといって自分に関わってしまったこの子がどうにかなればいいとは思わない。
「私が先に帰って、もしなにかあったら寝覚めが悪いわ」
「俺がリリアを守るから大丈夫だ」
「あなたもまだ子どもでしょう?」
立派なことを言っても、ブラントもまだ12、3歳だ。
普段ならば学び舎に通っているはずの年齢なのに、途中退学して騎士の見習いをしている。
「あなたも、リリアちゃんも、まだ庇護されるべき子どもなの。本来なら、大人が守らなきゃだめなのよ」
「大人なんかいなくても、金が貯まったらリリアを連れて俺が一緒に暮らすから」
「まだ12、3の少年がどれだけのお金を稼げるというの」
「騎士として生きて行く! 大人なんかには頼らない!」
「その発想が既に子どもだわ」
顔を真っ赤にしたブラントは、怒りに震えて次の言葉が見つからないようだった。
「騎士として生きて行く。立派なことよ。でも、騎士は無傷じゃいられない。騎士を続けられなくなったらどうするの? 足を怪我して歩くのも困難になったら? 学び舎で学を修めていないあなたはその後生きていくために何の仕事ができる?」
ブラントは唇を噛みしめる。
リリアを守る、その心構えは立派だ。だが、それだけでは生きていけない。
「リリアちゃんを守りたい? 立派だけれど、理想論でしかないわ。この先きちんと学を修めた素敵な男性が現れたら、12歳までの基礎知識しかないあなたは負けるわよ」
まだ子どもに対してきつい言い方かもしれない。
だが、理想論と現実は違う。
守るということは、物理的なものだけではないだろう。
「知識を得ることは、間違った大人にならないためにも必要よ。あなたが大人を嫌いなのは分かったわ。けれど、何がよくて何が悪いか、正しいことは何なのか、知識が無いと判断できない。
学び舎はその知識を得るために行く場所よ。行けるうちに行っておきなさい」
俯いて膝小僧を抱えたブラントは、必要以上に虚勢を張って気を張って大人を憎むことで生きている。
そうさせたのは両親だ。
偽りの愛で結ばれ、許されざる子を産み落とし、責任を放棄した身勝手な大人。
そんな悪い見本を見せた両親に対して、他人事ながら腹立たしい。
「……だって、頼れる人なんていない。俺たち子どもは大人がいないと何もできない。でも大人は誰も気にかけてくれない。俺たちを憎みはしても、好きにはならないだろう……?」
それは、子どもが抱えるにしては重たいものだった。
不貞の子を憎みはしても、好きにはなれない。
それは私自身がよく分かっている。
ブラントの言葉に返せるものが無い。
「大人は勝手だ」
けれど、そう言える分、子どもをうらやましいと思う。
憎む相手がいることで、行き場の無い気持ちを発散できる。子どもだから、それが許される。
「違うよ」
私の目頭が熱くなりかけたところで、小さな声がした。
「勝手なのは大人じゃなくて、リリアのママとパパなの。エルシーさんは悪くないの」
膝小僧を抱えてぎゅっとしているリリアは、分かっているのかいないのか、私をかばうような言葉を口にした。
「きっと、リリアが悪いから、ママもパパもいなくなっちゃったの。でも、本当はね、知ってるの。待っててもママは来ない」
ずっと前を見てリリアは言う。声は震えているが、泣いてはいない。
「エルシーさんはね、優しいの。たぶんリリアのことあんまり好きじゃないけど、でも、優しいの。一緒にいてくれるの。嘘つかないの」
けれど、感極まってしまったのか、頬にぽろりと雫が伝った。
「大人はみんな、いつかママが帰ってくるって言ってる。でも、エルシーさんだけは言わなかった。リリア、知ってるのに。もう、ママとパパは帰ってこないって知ってるのに!」
うわぁああああん、とリリアちゃんは大泣きしてしまった。
膝小僧を握り締め、鼻水まで垂らし、涙をボロボロ零しながら泣いている。
この小さな子が、どれだけの思いを抱えていたのだろう。
それに私がリリアちゃんに対して複雑な気持ちを抱いているのを見破られていたことに羞恥が走る。
「な、泣くなよ、リリア。お、俺だって、父さんも母さんもいなくなった。友だちだっていたのに、離れ離れになった。一番の友だちは、父さんの本当の子だった。俺のこと知られて、離れて、たぶん、き、嫌われた……っ」
グズッ、と、ブラントまで泣きだしてしまった。
しかも何とも切ない言葉まで交ざっていたような気がする。運命というものはいつだって残酷で容赦がない。
「なんで……なんでだよぉ……! なんで俺たちが嫌な思いをしなきゃいけないんだよ!」
「うわあぁあああん!」
二人の大合唱に途方に暮れる。泣きたいのは私も同じだ。
不貞することで楽しいのは本人たちだけだ。
周りにいる者はとばっちりで傷つけられて心に痛い傷を負う。
生まれてきたからには幸せになる権利が誰にでもあるはずなのに。
その後やって来たダガートさんが寄越した部下の方に抱っこをされて、リリアちゃんはまだぐずったまま詰所の寮内へ帰って行った。
ブラントは泣いてしまったのが気恥ずかしいのか、しばらく門に留まっていると耳を赤らめて言った。
寮内に戻った私は、このままここにいてもリリアちゃんのためにならないと思い、ある決意をした。
数日後、夕食を食べ終えて騎士団長室の扉をノックする。
「ダガートさん、お話があります」
私の表情を見たダガートさんは、一瞬目を見張り、言いたいことを察したように真剣な眼差しになった。
皆様お久しぶりでございます。
リリアちゃんのお話も少しずつ進めて参りましたが、ここでお知らせがございます。
まず、昨年夏頃連載のご案内をさせていただいた「お飾り妻の心得〜きみを愛することはないと言われたので、旦那様の恋を応援します!〜」
こちらが、エンジェライト文庫様より配信が決定いたしました。
4/16(木)、電子書籍取り扱いの各サイト様で配信開始となります。
web掲載時より倍くらい加筆しておりますので、興味のある方はよろしくお願いいたします。
カバーイラストはちょめ仔先生です。
詳しくはエンジェライト文庫様の公式Xなどでご確認ください。
次に、現在カクヨム先行で、小説家になろう、アルファポリスの三サイトにて
「死に戻った私は、冤罪で殺された娘の幸せだけを求めます」を連載中です。
現在本業多忙につき不定期更新しておりますが、こちらも併せてよろしくお願いいたします。
そして、本題です。
なんと!
騎士の夫、続刊が決定いたしました!
紙、電子で発売予定です。
1巻の打ち合わせの際、番外編更新中でしたので、好評でしたら続刊の可能性はありますか?とお尋ねしていたのですが、ご購入いただいた皆様のおかげで続刊することが決定いたしました。
本当にありがとうございます!
ちなみに初回イラストカード付紙書籍(帯に付いたQRコードにも番外編アリ)は、各種書店様にて発売されております。在庫切れのところもあるようですので、各サイトにてご確認いただいたり、通販をご利用ください。
ぜひ紙書籍もお手に取っていただけると嬉しいです。
次巻の構成はまだ未定ですが、内容は番外編を中心としたものになると思います。
web連載は発売前に完結予定ですので、変わらぬ応援をよろしくお願いいたします。
さらに、騎士の夫、コミカライズ企画進行中です!
小さい頃から漫画家になりたかった私ですが、自分が考えたお話を漫画家さんにお手伝いいただいて発表できる機会をいただけたことがとても光栄で、今から楽しみです。
詳しく決定したらまたお知らせいたしますので、楽しみにお待ちください。
エルシーさん、リリアちゃんのお話は引き続き、不定期更新して参ります。
重い内容なので、新連載を挟みながら、落ち着いたら定期連載する予定ですので、引き続き二人を見守っていただきますよう、お願いいたします。
以上、お知らせでした。
長々と読んでいただき、ありがとうございます!
(こちらの内容は、後程活動報告にコピペします)




