表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結/書籍化】騎士の夫に隠し子がいたので離婚して全力で逃げ切ります〜今更執着されても強力な味方がいますので!〜  作者: 凛蓮月
リリアちゃんの番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/63

2.数奇な出会い

リオンの番外編の投稿場所を間違えましたので、割込み投稿していきます

また、1話のあとがきでネタバレしてしまっておりましたので、ネタバラシのための第2話を投稿します

 

 諜報員は「不貞の証拠と、何かの役に立つかもしれないから」と鏡の魔道具を置いて行った。

 一度でも不倫をしたダリオには監視魔法がかけられていて、鏡に言えば姿を映してくれるらしい。

 だから、もしまたシアラの面影を求めて別の女性にいくことがあれば……ということなのだろう。


 それからダリオは手持ちの全財産だから、といって慰謝料の金貨をくれた。そして、不自然に優しくなった。

 気を遣っているのかもしれない。

 眠れなくてベッドで寝返りをうち、時折鼻をすすっていた私に寄り添うようにして眠っていた。

 彼なりに反省しているのかもしれないが、魔道具の映像と音声を見たあとでは何も感じなくなっていた。


 それに、夫婦関係も無くなった。


 シアラを抱いて幸せそうな顔をしていた彼に、抱かれたいと思わなくなった。

 むしろ触れられたくなかった。

 抱かれたところで比べられるんじゃないかと思うのも苦しかった。


 結局ダリオはシアラを選んだ。

 私じゃだめだった。

 彼がずっと求めていたのはシアラで、私じゃなかった。

 分かっていたはずだった。

 けれど、それでも二人のときに見せた優しさは本物だと思いたかった。



 結局、亀裂の入った夫婦関係を修復する気力も湧かず、私はダリオに別れを切り出した。

 離婚の書類を突き付けられたダリオは呆然と眺め、表情を青ざめさせた。


「……っ、なんで……確かに俺が悪かったけど、エルシーは許してくれたんじゃないのか……?

 シアラにはもう会えない。もう二度と浮気はしない。だから……」

「シアラさんをずっと思い続けていたのに、私と結婚したあなたの気持ちが分からない。

 結婚したのに、シアラさんに言い寄られて、私の気持ちなんかお構いなしにすぐにそっちに行っていた。私の気持ちなんて、考えもしなかったでしょう?

 二度と会えないから私に戻って来ただけで、もしまた会えるならチャンスを窺うのでしょう?」


 ダリオは言葉を詰まらせた。即座に答えられないこと──それが彼の本音。

 私が大切だと言いながら、シアラがいればそちらに行くのだ。


「あなたは……あなたの好きな人は……愛する人はずっとシアラさんだった。いいえ、今でもそう。それでもいい、私があなたを好きならそれでいい、そばにいるだけで、あなたが私と共に歩んでくれるだけで十分だと思っていた。でも……」


 唇が震え、息が浅くなる。いつの間にか頬が熱く濡れていた。


「もう無理なの。私があなたを好きでも、あなたは私を好きじゃない。あなたは私と共に歩んでくれない。共に歩んでいても、シアラが誘えば、たやすくそちらに行ってしまう。それがよく分かった。二度と浮気はしないと言うけれど、あなたの本命はシアラで、私の方が浮気だったのよ。

 私はあなたが立ち上がる為の踏み台じゃない。シアラの代わりにはなれない。私を身代わりにしたあなたを許せない。

 どうして結婚したの。どうして大切にしたの。

 何も期待しなければ惨めにならずにすんだのに」


 私はいつの間にか、そばにいれば、いつかは愛されるかもしれないと期待していた。

 そばにいるだけで幸せだったのに、それだけでは満たされなくなったのだ。


「あなたは私じゃなくてもいい、シアラさん以外なら誰でもいいのよ」

「違うよ。俺はちゃんとエルシーを選んだんだ。シアラが帰って来ても、もう二度とよそ見をしないから……」


 あんなにダリオに愛していたのに、信じることができなくなった。

 シアラが死んでもとらわれるし、生きていても燻るだろう。遠目でいいからと会いに行くくらいするかもしれない。

 最初にシアラとその子の面倒を見ると言っていた人だ。血の繋がりが無い子を愛するなんて余程のことじゃない限りできない。

 現に私を捨てて、再びシアラとその子を選ぼうとした人だ。

 また選ばないと断言できない。


 そのとき、彼が独身なら今度こそ思いを昇華できるだろう。


「もう無理。あなたから一度だって愛していると言われていないわ。

 子どもがいない今がいいタイミングでしょう?」

「エルシー……愛している。エルシーがいないと生きていけない」

「生きていけないならどうして裏切ったの……」


 ダリオは頭を抱えて泣いていた。

 泣きたいのは私の方なのに、どうして傷付いた振りをするのだろう。


「エルシー、頼む……行かないでくれ……」


 ダリオの言葉を聞かなかった振りをして、寝室にこもり鍵をかけた。


「うぅうー……ふぅぅ……」


 涙が溢れて止まらなかった。

 苦しくて、許せなくて、許せない自分も許せなくて。

 ずっと息も苦しくて、考えたくないのにごちゃごちゃと頭の中を駆け巡る思考がノイズのように蔓延っている。


 鏡の魔道具の中の映像のダリオはシアラを心底心配して、裏切られたのにまだ愛が残っていた。

 諜報員が家に行く前から二人は愛し合い、子どもとも会わせて仲良さそうだった。


 ダリオは子どもを欲しがっていた。

 なかなか授からなかったけれど、私との子をシアラとの子に見立てたかったからなのかもしれない。


「……バカだなぁ。私と結婚なんかしてなければ、不貞にならずにすんだのに。……シアラとその子と、いつかは家族になれたかもしれないのに……」


 運命って残酷だ。

 タイミングがすれ違うだけで全てが台無しになってしまうのだから。



 翌日、腫れぼったい眼を開けて寝室から出ると、ダリオはすでに仕事に行ったようだった。


 テーブルの下にはしわがついた離婚の書類が落ちていて、拾ってみればダリオの欄は既に記入してあった。行かないでくれと言いながら離婚の書類にサインをするあたり、パフォーマンスだったのだろう。

 私の欄も記入し終えると、書類に雫が落ちた。

 一年にも満たない短すぎる結婚生活で、絆を育めてもいなかった。それもまた、私を虚しくさせた。

 涙を拭いて立ち上がる。それを丁寧に折りたたみ、バッグに入れるとあらかじめまとめてあった荷物を持って家を出た。


 迷いは捨ててギルドに提出すると、受付の方は事務的に処理をした。

 こうして、あっけなく私たちの夫婦関係は終わってしまったのだった。



 実家に帰る気にもなれず、街中を放浪していると張り紙が目に入った。


「騎士団の寮母募集中」


 それは住み込みで三食の賄い付きの仕事のようだった。

 ダリオの稼ぎだけで生活し、慰謝料はあるとはいえそれだけでは心許ない今の私には魅力的な仕事に思えた。


 だから真っ直ぐにそこへ向かった。

 迷いは無かった。



 門番に寮母募集中の張り紙を見て来たと言えば、すぐに案内された。

 面談は恰幅のいい女性で、簡単な質疑応答だけで「明日から来てくれる?」と即断だった。

 私にも準備があるだろうからと言われ、その日は近場の宿をとった。


 帰りに市場の露店の食べ物をいくつか買って宿で食べ、その日は早めに休むことにした。


 仕事から帰ってきたダリオは何を思うだろう。

 私がいないと生きていけないとは言っていたけれど、案外また誰かをシアラの代わりに見立てて再婚も早いかもしれない。


 正直、勢いだけで家を出てきたのは分かっている。

 実家にも知らせないで出て来たのも悪手だとも。


 けれど、誰にも会いたくなかった。

 同情されて、惨めにもなりたくなかった。

 説得も、泣き落としもされたくなかった。


 簡単には消えてくれないダリオを愛する気持ちが、簡単には消えてくれないダリオを許せない気持ちとせめぎ合って。

 簡単にはダリオを許せない自分を許せないことが一番堪えていた。


 愛してくれなかったのに、あっさりと捨てられるくらい大切にもされていなかったのに、それでも彼から縋られると許してしまいそうになる。

 だから私は全てを捨てて逃げて来た。


 とはいえ同じ街だから簡単に見つかるかもしれない。

 それでも騎士団の駐屯地からあまり出なければ、そのうちほとぼりも冷めるだろうと思っていた。



 それなのに、まさかそこに元凶となった女性の娘がいるなんて、思いもよらなかった。


今年の投稿はここまでとなります

リリアちゃんの番外編はスローペースですが続けて参りますので、変わらずお付き合いいただけると幸いです


皆様よいお年をお迎えください(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ