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4話 気持ちの邂逅

「ソフィちゃんはなんでこの学校を受けたの?」

「わたし、ですか?」

「うん、言いたくないならいいんだけどね・・・。ソフィちゃんとあんまりしゃべったことなかったからどんな子なんだろうなって」

「わたしは、その。なんて言ったらいいかわかんないですけど」


 言いたくないわけではないが、言ってもし拒絶されたりしたらどうしようかとか、彼女は考える。どう言い訳するか、ちゃんと言うか。迷う、決められない。だって今までの人生だってじぶんで決めたことなんてほとんどない。


アンジェリーナのように人との会話が得意なわけでもないし、何にもない。彼女の心には何もなかった。ただここへ来たら何かを変えられるんじゃないかと。あの人に憧れてここへ求めに来ただけだ。まだ名前もない何かを・・・。


ただ漠然とした魔法に憧れる自分の気持ちを何かしらの形でかなえられるんじゃないか。そんな曖昧な気持ちしかなかった。


 葛藤の中でそこにたどり着き、ソフィリアは完全に途方に暮れる。

 その様子を見ていたアンジェリーナは、さすがにまずいと思ったのか心配そうな口調でこう言った。


「ごめんね!いいのそんなに考え込まなくても・・・!そうだよね、そんなに喋ったこともない人にこんなあれこれ聞かれても困るよね。あはは、あたしの悪い癖自分でも直そうって思ってるんだけどな。緊張で失敗しちゃった、気にしないでいいからね?」

「・・・・」


 なにも言えずに立ち尽くす。小鳥がさえずる音だけになり、生徒の往来も一切なくなる。そろそろ始業の時間だ。行かなければ遅刻となる、退学基準がかなり厳しいこの学校での遅刻は命取りだ。行かなければ、行くためにソフィリアはアンジェリーナにごめんと言わないと。

 多分ずっと後悔する。それがわかっているはずなのだ。


『いや、クレドになんでそんな気を使わなくちゃいけないんですかー』

『クレド症が移るだろ。近づくな』


『ひどい目にあったね。先生にはお母さんから言っておくから今日はとりあえずゆっくりしなさい』

『なんでこんなことに・・・!お前は、アズベルト家の恥だ・・・!!!!』

『そんなことよく子供の前で言えるわね・・・!あなたはこの子の父親でしょう!?』


「ソフィリアさんって、あたしのこと嫌い・・・だよね・・・?」

「・・・・・・え?」


 過去の苦いフラッシュバックが一瞬ちらつき、彼女の言葉ではっとする。

 まだチャイムはなっていない。だが時計を見る余裕もない。


「せっかく寝てるのに、後ろのあたしたちの声うるさかったよね・・・。仲良くなりたいって思って声かけてもあんまり楽しそうじゃなかったから。もしかしたら高校からなら仲良くできるかもって思ったんだけどな」


 アンジェリーナの顔は今まで見たことないほど萎れてしまい、視線はソフィリアを見つめることなくただただ地面一点を見つめていた。


(違う、そんなことない。そんなこと言わせたいわけじゃないのに・・・!)


「行こっか・・・?ごめんね、変に時間取らせちゃって。教室同じだったら、よろしくね」


 距離感のある話し方でソフィリアの気持ちがざわめく。アンジェリーナはそのまま進行方向に向きを変えて歩き出す。すたすたと歩き、地面から舗装された石造りの道路に足を踏み入れ、ローファーの石を渡る音が森に返る。


 変わるんじゃなかったのか、結局なにも得られないまま学校生活を始めるのか。

 そんなの嫌だ。いやだ。イヤだ。絶対に後悔するとわかっているから、彼女は優しいから、それはわかってる。なにを悩んでるのか。言え、ソフィリア。口を開いて、伝えて・・・・・。


(それで拒絶されたら、どうしよう)

 歩み寄ろうと出した片足が、つま先が地面に触れた段階で止まってしまう。


 ソフィリアと普通の人間の決定的な違いはこれだ。

 人見知りだから?違う。

 友達がいないから?違う。

 話すのが苦手だから?違う。


 クレドだからだ。


 今までの人生、すべてクレドだからという理由で差別されてきた。妹が誕生してからというものの父の興味は完全にそっちに行き、クレド症と分かったときからソフィリアについては放置だ。


 クレド持ちの人間なんて、生きる資格がない。そう言われているような気がして。だからずっと他人と距離をとって生きてきた。自分がかかわるとその人にも嫌な気持ちにさせてしまうから。


 でも、今はどうだ・・・・?距離を取ろうとしてすでに迷惑をかけて、なにをしているんだわたしは。生きる資格だとか、クレドだとか。言い訳しか並べてない。



『あなたは魔法が嫌いなんじゃなく、魔法を使えない体が憎いのではなく、ただそれを理由に逃げてしまっている自分が嫌なだけではないのですか?』


二年前あこがれの人に言われた言葉を思い出す。

あの時に決めたはずだ。逃げないと、向かうと。自分の人生を見つけると誓ったはずだ。



 やっぱり、わたしに魅力なんてない。

 でも、それだけで何もしないのはつまらない。

 固定観念を壊して、わたしがわたしにできること。変えられること、変えたいと思ってここへ来たんだ・・・。


 ここで逃げたら、始まらない・・・!!


「アンジェリーナさん!!」

「・・・・っぇ」


 大声で動揺して、アンジェリーナは転びそうになるが、それをこらえて態勢を整える。後ろを振り向くと、うつむいたままで顔は見えないが、肩を固くしてソフィリアが気持ちをぶつけようとする様子をじっと彼女は見守っていた。




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