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高難易度ダンジョン配信中に寝落ちしたらリスナーに転移罠踏まされた ~最深部からお送りする脱出系ストリーマー、死ぬ気で24時間配信中~  作者: 紙風船
第80層 白骨平原 -アスティアルフィールド-

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第48話 やっと辿り着いたベクタ

 翌朝。というか同夜。元気が有り余ってるヴァネッサに叩き起こされ、日も昇っていない夜に朝ご飯を食わされ、日の出と共に出発させられた。


「眠い……」

「ふわぁぁ……」

「……」


 ぼやきながら歩く者。欠伸しながら歩く者。ほぼ寝てる者。


「皆と一緒に旅するの楽しい~!」


 そんな皆の元気を吸い取って一番はしゃいでいる者。そんなパーティーだったが、歩けば進むし、日も昇る。運動と日光で温められてだんだんと目が覚め、いつの間にかいつもの歩調で進んでいた。


 突然戦いを挑んできたヴァネッサもすぐに馴染み、ハドラー達も親愛と尊敬の念を抱き、適切な距離感で仲良くしているようで安心した。


 初めて会った時から全然心配はしてなかったが、オークだからって女性に対して創作物的な対応をするような種族ではないとは理解していたが、相手は色欲の女王だ。そっち側から誘う可能性はあるかもなぁと思っていたがそんなこともなく、一旦は平穏無事な朝を……厳密に言えばまだ夜だったが……迎えることができた。


 昼の休憩と腹ごしらえをした後、しばらく歩くと変化のない白骨平原アスティアルフィールドの風景に変化が現れた。


「ベクタだ!」


 キーロが指を差し、嬉しそうに振り返る。目を凝らすと、薄っすらと見えたシルエットがガラッハの集落を囲っていた防壁のようにも見えた。


 いやぁ……長かった。1週間、ずっと歩き通しだったしな……足の裏が擦り切れて何度も八咫の回復魔法に頼った。ブツブツ言っていたけれど、移動の際は僕の頭とか肩に留まって楽をしていたのだから当然の権利だと主張して勝ち得た治療だった。


 アイザに関しては元より体力お化けだったこととモンスターだからか頑丈で、多少の疲労はするが歩いて怪我、なんて軟弱なことは起きなかった。羨ましいね、まったく。


 ベクタが見えてからは早かった。自然と歩く速度も速くなり、夕方になる前、太陽が白くぼやける頃には到着していた。


「ガラッハのガーニッシュの息子、ハドラー、試練の為に来ました。どうか長老にお目通り願いたい!」


 よく通る声が響く。門番をしていたオークが頷き、集落の中へと引っ込んでいった。


 改めて集落の様子を伺うが、見た目はガラッハによく似ている。建材が骨か草ということで大した違いが見られないのかもしれない。多少の文化の違いはあるかもしれないが種族も同じ。体格や習性に合わせた建築だろうし、そういった面でも違いが少ないのだろう。


 しかしこうなると不思議だ。この骨は一体どこから出てくるのだろう。地面から生えてくるのかな。それとも本当は骨じゃなかったり……。ダンジョン七不思議の一つかもしれないな。


 なんてぼんやりと考えていると視線を感じた。視線の主を探すと、門の影に小さな子供のオークが見えた。バッチリと目が合うと隠れてしまう。しかし数秒もするとそーっと顔を覗かせた。怖いもの見たさかな。手を振ってやると今度こそ怖くなっちゃったのか、奥の方へと駆けて行った。


「あんまり刺激するな」

「手ぇ振っただけじゃん……」


 ぴしゃりと八咫に言われてしまう。……まぁ、見たことない生き物だし怖いか……。


 しばらくすると若いオークが何人かのオークを引き連れてやってきた。見た目から年齢は分からないが、ハドラーと同年代な雰囲気があった。


「よぉ、ハドラー! 来たか!」

「エンリケ」

「久しぶりだな! 来いよ!」


 随分と威勢の良いオークだった。しかも話している様子からして顔見知りのようだ。互いに抱き合い、再会を喜ぶ。他の幹部達もブルーノと挨拶し合っているのを見るに、全員が知り合いのようだ。


「ところで……あんたは?」


 エンリケと呼ばれたオークがハドラーから離れ、僕の前に立つ。頭2つ分は大きい相手を見上げながらこの自己紹介するのは、少し情けない。


「僕は将三郎。こちらの八咫烏に王と認められた。たまたまこの層で出会ったハドラーが長になる為の試練に旅立つというので、邪魔しないことを条件に同行させてもらった」

「王、か……俄かには信じ難いな」


 まぁ、いきなり出てきて王様ですって言われても信用できないよな。


「この方はちゃんと王様だよ。それに恐ろしく強い」

「へぇ~! まぁハドラーが言うなら信じるよ。ベクタへようこそ、将三郎殿!」


 エンリケが満面の笑みを浮かべて手を差し出してくる。よかった。ガーニッシュのようなならず者的対応じゃない。


 差し出された手を握ろうとしたその時、エンリケの笑みがにやりとした意地の悪い笑みになったのを、一瞬見逃した。


「ふふふ」

「ん……!」


 ぎゅぅぅぅっと強く握られる。なるほど、そういうやつね。分かってたよ。こういうことする奴、絶対いるだろうなって思ってたよ。


 でも残念。僕にはこういう力比べに勝てる術はない。


「いたたた……」

「はっはっは! なぁんだよ王様! 弱っちいな!」

「いやぁ……強いね、エンリケは」

「ははは! まぁゆっくりしてってくれ!」


 エンリケに歓迎されながら集落内へと進む。ベクタの民の表情を見るが、どうやら敵対心はなさそうだった。


 やっと辿り着いた目的地。長の証とはいったいどんな物だろう?

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