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高難易度ダンジョン配信中に寝落ちしたらリスナーに転移罠踏まされた ~最深部からお送りする脱出系ストリーマー、死ぬ気で24時間配信中~  作者: 紙風船
第80層 白骨平原 -アスティアルフィールド-

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第39話 ホワイトオークの試練

 一晩だけ部屋を借りて泊まった翌日。僕は次期長老候補ハドラーと、その側近である時期幹部候補3名が行う試練に同行する形で集落を出発した。


 何かの動物の皮で作ったバッグに最小限の荷物を詰めたハドラー達が先を行く。先程聞いてみたがあのバッグの素材はこの白骨平原アスティアルフィールドに生息するモンスターのドロップアイテムを加工して作ったらしい。


 モンスターを倒すと魔力石の他に何かしらのアイテムが出てくることは珍しくない。それを使って何か武器や防具を作るということもよくある話だ。


 しかしそれをモンスターが自分で狩り、考えて制作しているということに驚いた。やっぱりここのモンスター達は凄い。


 ダンジョンに出現するからモンスターとして定義づけられているが、僕はここに来てそれに疑問を感じ始めている。彼等は別次元から来た別の種族っていうだけなんじゃないかと。


 オークにダークエルフ。様々な媒体でモンスターとして登場する時もあるし、亜人といった別の人種として登場する時もある。


 後者なんじゃないかなぁ……と、一緒に生活してると思えてしまう。


 なればこそ、僕はやはり平らかなる王を目指すべきだ。彼等がモンスターではなく亜人種だと周知していく為にも。


「ハドラー、これはどこへ向かってるんだ?」

「盟友の集落を目指してます」

「盟友?」


 ハドラーによると、試練とは89層地点にあるハドラー達の集落【ガラッハ】から、盟約を交わした集落【ベクタ】まで行って互いに交換した長の印を持ち帰ると長になれるそうだ。


「それで、ベクタという集落はどこにあるんだ?」

「82層地点にあります」

「遠いな……」


 1層の移動に使う時間は約1日だそうで、そうなると片道で1週間使うことになる。往復で半月だ。


 この移動がほぼ試練のメインとなる。だからこそのサバイバル生活という説明だったのだろう。


 移動中はもちろん、野営中もモンスターの襲撃に気を付けないといけない。足元に散らばる骨を見ると多くの戦闘がここであったのが伺える。


「この平原は恐ろしく広いです。モンスターに出会うこともあれば、出会わないこともあります。散らばる骨も大半が食料となるモンスターに出会えず餓死したオークやモンスターです」


 通常、モンスターは死ぬと塵となって消え、魔力石と時々ドロップアイテムが残る。だからこの骨はダンジョンがそういう風に設定した筋書きなのだろう。


 ただ、戦闘をして倒した相手が消えて霧散した魔力のような粒子を吸収して経験値とする……なんて話も聞いたことがある。もしかしたらダンジョンでは戦闘を行わずに死ぬとちゃんと死体が残るのかもしれないな。


 或いは、モンスターじゃなかったら……。


 目の前を歩くハドラー達を見る。彼等が死んだとして、骨が残るか魔力石が残るか。


 少し考えて、嫌な光景を想像して頭を振った。



【禍津世界樹の洞 第88層  白骨平原アスティアルフィールド



 1日歩き続けて日が暮れた時点でスマホで見た現在地は88層だった。ハドラーの言う通りの距離感で合っているようだ。


「今日はここで野営をします」

「見張りは任せていいんだよな?」

「えぇ、それも含めて俺達の試練ですから」


 交代で見張りをするべきか提案したが、これは断られてしまった。考えてみればそれはハドラー達の仕事を奪うことになる。モンスターが襲ってきた場合の僕達の行動も難しい。助けてあげたいが、それをすると試練に横槍を入れてしまうことに繋がってしまうし……。


「じゃあ僕達は今日はこれで。また明日も頑張ろう」

「はい、おやすみなさい」


 野原に布を敷いてそのまま寝転がる。見上げた先は天井なのに夜空にしか見えない。時間経過と共に太陽は昇り、ちゃんと沈むから不思議だ。晴れた夜には星も見える。僕は星座には詳しくないから分からないけれど、多分地球の星の位置とは違うんだろうな。


 寝返りをうち、隣のハドラー達を見ると簡易的ではあるがちゃんとテントを設けていた。どこにあんな荷物が……と考えてみたが、恐らくパーツを分割して持っていたのだろう。天幕や骨組みはバラそうと思えばどこまでもバラせるからな。


「僕もテント欲しいな……」

「こうして夜空を見上げながら寝るのもいいですけど、雨の日とかは困りますね」


 八咫を挟んで反対側に寝転ぶアイザが僕の独り言を拾ってくれた。


「そうだなー。今日は良いけど、雨も降るだろうしどっかのタイミングで手に入れたいな……」


 なんて話しながら、今日一日のことを思い返し、ふと気付いたことがあった。


「そういえば今日……ていうかこの白骨平原に来てからアイザ、元気ないけど大丈夫? やっぱり調子悪いとか……」

「あ、いえ……体調は全然問題ないんですけど」


 妙に歯切れが悪い。上体を起こし、アイザの方を見ると首元までかぶった掛け布をギュッと握り締めたまま空を見つめていた。


「まだちょっと、怖くて」

「あぁ……そうだよな」


 カオスオークに攻め込まれたエミの層の惨状を見れば、恐怖心も蘇るか……。


「ガーニッシュ殿の圧力も凄かったですし……でも、ハドラーさん達を見ていると、そんな恐怖も薄れてきますね」

「オークが皆、ハドラー達みたいな理性的な種族だといいな」

「えぇ、そう願いたいです」


 その会話を最後に、僕達はゆっくりと眠りの世界へと落ちていった。途中、不安で何度か目を覚ましたが、モンスターの襲撃もなく、実に穏やかな夜だった。

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