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第1話 酔っ払いストリーマー、ダンジョンへ

 ダンジョン配信が今一番”熱い”らしい。


 僕がそれを耳にしたのは仕事帰りの居酒屋でのことだった。お酒初心者みたいな大学生が大きな声で言っていたから間違いない。


「マジ儲かるんだって! モンスターとかバシッと倒すとさ、投げ銭とかサブスクとか貰ったりするんだぜ!?」

「ガチで? 普通に働くのが馬鹿らしいな」

「有名になりゃ、でかい企業がスポンサーになってくれて良い装備で潜れるようになるから更に儲かるってワケ。最高じゃね!?」


 1人、カウンターで飲んでいた俺、『月ヶ瀬将三郎』はそれを聞いてすぐに店を飛び出した。あぁ、もちろん代金は払ったとも。


 ダンジョンは数年前に世界中に現れた、なんでも異世界に繋がってるとかいう迷宮だ。様々な構造のダンジョンから採取されるアイテムは日常の生活を大きく変えた。


 【探索者】と呼ばれる人間がこぞってダンジョンを探索し、アイテムを持ち帰り、高額で売買するのがまとめニュースになるのはもはや日常だ。


 僕もそれに夢を見たことがあるが、結局は普通のサラリーマンになった。現実って大事だねって話だ。


 しかしまぁ、夢を捨てきれない自分が心の奥にまだ住んでいたらしい。


 アイテムが手に入らなくても、その過程を見せるだけで儲かるなら、やるしかないってもんだろう。


 僕がまずやったのは友達に誘われて取得したダンジョン探索者登録票を探し出すところからだった。気乗りしなかったけど夏休みで暇だったこともあって大学の時に取ったアレは確か机の引き出しに突っ込んでそのままだったはず……あぁ、あったった。


 探索者協会から支給されていた埃をかぶった装備を身に付け、カメラ用の魔導バッテリーや食料を鞄に詰め込み、向かったのはうちの県庁所在地にでかでかと生えている真っ黒な葉を茂らせた世にも恐ろしい巨大樹、『禍津世界樹(まがつせかいじゅ)』と呼ばれるランドマークだ。


 世界樹ったら普通、なんかこう、神聖なイメージだが、ここのは真逆だ。地獄から生えてきたんかってくらい禍々しい巨木が市の半分を根っこで乗っ取り、黒い葉が影を落としている。


 そんな場所だからこそ、配信映えするってもんだろう。


 禍津世界樹は物々しい見た目通り、ダンジョンだ。その根元の洞から下は入る度に構造が変わるというローグライクダンジョンになっている。


 何が起きるか分からないからこそ、配信映えするってもんだろう。


 なら、行くしかないってもんだろう!


 僕はやるかもしれないキャンプ用に購入していた外配信用の魔導カメラを起ち上げる。


「どうも~。月ノ将軍です。これから『禍津世界樹の洞』、攻略してみたいと思いま~す」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最高に面白かったです! [一言] これからも追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!!
2023/07/09 17:09 退会済み
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