人類の叡智
(とりあえず私の部屋に来たけど、ちょっとした騒ぎになってるわね。別に魔法を扱えることを隠してるつもりは無いけど、大事にはしたくないわね。)
地盤沈下とかその辺の理由に落ち着くことを祈りながら本命の魔法の準備に取り掛かる。
未来を視る魔法を扱うには準備が必要になってくる。大きな羊毛紙にチョークで魔法陣を書く。前世で飽きるほど書いておいてよかった。見本を見なくても手が覚えている。
「よし、こんなもんか。」
私は魔法陣の中心に立ち目を閉じる。
(詠唱も……うん、いける。)
『天よ、大いなる光を映し出し、地よ、闇より深い陰を映しだせ。我の願いは、世界の真実の姿を覗くこと。汝、我の願いを叶えたまへ!』
私の体が光に包まれる。そっと目を開けると、白い空間に居てそこにはいくつもの絵画が置かれてある。そう、この絵画こそがこれから起こりうる未来の一場面だ。
(さすが私、見事に成功したわね。とりあえず、一通り確認してみようかしら。)
まず一枚目は、ブロンドの髪の小さな子と私が並んで庭園を歩いてる姿。ブロンドの子の方は顔がぼやけてるけど、時期的に婚約者であるブレットとのワンシーンね。
次は、ピンクの髪の女の子とブロンドの髪の少年と私の三人で食事をしている姿。
そして一番近くにあるのが、綺麗にラッピングされた箱を開けて泣きじゃくっている私。
(確か、9歳の誕生日の日のワンシーンね。私は、黒猫を飼いたかったのに、お父様は黒猫なんて不吉だからって白い猫のぬいぐるみをプレゼントしてくださったのよね。その時は散々泣き喚いたけど、ヴァイオレットっていう名前を付けてずっと一緒に寝てたわ。)
「ふぅー、まずはこの未来から変えていきましょうか。」
期限は、九歳の私の誕生日までだから残り一ヶ月。私の本気見せてあげるわ。