一度目の最期
「今すぐその魔女を殺せ!!」「死ね!よくも王族を!!」
周りは私への罵倒で溢れている。やってもいない皇子を毒殺未遂の罪で私、【ウェステリア・デ・ハリス】は今、処刑台の上にいる。
(けっこう人が集まっているわね。)
貴族の処刑にはこんなにも人が集まるのかと考えられるくらいには周りを見る余裕がある。コツコツと誰かがこちらに近づく足音が聞こえる。
「おい、こいつに別れの言葉をかけてやる少し離れていろ。」
「はっ!かしこまりました、殿下!」
今、一番見たくない相手が来てしまった。今じゃなくても見たくないが……ブロンドの髪にエメラルドグリーンの瞳、この傲慢という言葉がこれ以上似合う人はいないであろう男がこの国の第三皇子であり、私の婚約者だった人間だ。
嘲笑、侮蔑を含んだ表情で私のことを見下してくる、
「無様な姿だな!ウェステリア!お前のこの姿を見れたんだから毒を飲んだ演技をした甲斐があったもんだな。だがそのせいでエリカには心配をかけてしまっ…」
被せ気味に私は話す。
「この国は将来戦争に負ける。多くの国民が死に、怨嗟の響くだろう。田畑は枯れ、水源も無くなる。この国に残ってるのは破滅のみだ。」
「…はぁ、またそのくだらない妄言か。自分の立場を理解していないようだな。もういい、これ以上近くにいたらバカが伝染る。
――刑を執行しろ!」
「はっ!!」
――ザシュッ。私の首と胴体が別れを告げる。それなりにいい人生だと思ったが、 最後に見たのがあのクソ男だったことで私の輝かしい人生の汚点がまた一つ増えてしまったわ。最期ぐらい綺麗なものを見て終わりたかったものね。
……こうして私の一周目の人生が終わった。