竜をめぐる冒険
仕事場で伸びをしていたら呼鈴が鳴った。ちょうど書きかけの原稿に行き詰まっていたところだ。気分転換をかねて、両側に標本が積んである廊下を抜け、玄関まで向かう。
ドアを開けると、小学五、六年生ぐらいの男の子が立っていた。その子が身体を前のめりにして聞いてくる。
「琢磨 真先生ですよね?」
「あぁ、そうだけど」
「ぼく、先生のファンです! 尊敬しています!」
突然の告白に面食らうが、こんなことを言われるのは初めてではない。私は普段、恐竜の発掘調査で世界を飛び回っている。その活動を執筆し、恐竜博物館の館長を務め、子ども向けのラジオ番組で解説も担当している。番組で子どもが投げかける質問は直球で、目の付け所に意表を突かれることも多い。恐竜好きの子どもと話すのは、結構楽しい時間だ。
それにしても、家まで訪ねてくる子は今までいなかった。ファンだと言ってくれた少年の瞳があまりにもキラキラしていたから、つい、家の中に招き入れてしまった。
実際、少年の話はじっくり聞くだけの価値があった。私の家は大きな川沿いにあり、近くに橋が架かっているのだが、少年はその橋の中の狭い通路をくぐって来たと言った。橋の上から帰ろうとすると通行止めで、困って歩いていたらうちの表札を見つけたらしい。珍しい苗字だから、ピンと来たのだろう。
少年がうちを見つけたのは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。なぜなら、私も橋の中をくぐった経験があるからだ。ちょうど、この少年と同じ年ごろのことだ。
学校が終わると、子分を引き連れて河原を駆け回る。それがおれの放課後だった。じっとしていると、尻の辺りがむずむずする。発散しないと夜も眠れない。でもその日はたまたま遊び相手がつかまらず、仕方なく河原を一人でぶらぶらと歩いていた。
突然、石だらけの河原でピカッと何かが光った。面白そうなことは見逃せない。そちらへダッシュで駆け寄ると、石ころが光を放っていた。石は手のひらにのるほどの大きさで、白くてつるっとして平べったい形をしている。おれはその石を手に取ってながめた。すると光が消え、かわりに石の表面に黒い模様が浮き上がり始めた。最初は蛇のような胴体、次に角、ヒゲ、牙、鱗、かぎ爪のついた足、翼まで付き、出来上がった模様は、誰がどう見ても竜の模様だった。
石の中の竜は、体をくねらせてこちらをギラリとにらんだ。おれが「わっ」と叫んで石を放り出すと、石は地面に落ちる直前にふわりと浮き上がった。いや、浮き上がったのは石ではなく、石の中から飛び出した竜だった。
竜の体はみる間に大きくなり、翼を羽ばたかせて空中に浮かんだ。おれに顔を向けると、口の間からチロチロと炎を出し、舌なめずりをした。
「ずいぶん長い間、閉じ込められた。さて、今度はどんなふうに暴れてやろうか」
竜は河原の上を飛び回ってから、近くに架かっていた橋の付け根を目指して一直線に飛んだ。おれは腰を抜かしたままその一部始終を見ていたが、竜が長い体を橋の中に滑り込ませたのに気付くと、その後を追いかけた。竜は伝説の生き物だろう? それが目の前に現れたんだ。どんな生き物か突き止めるチャンスだ。
竜が入り込んだのは、橋脚と地面の間の隙間だった。そこには子どもなら入れるぐらいの穴が開いていた。おれが急いでその穴に頭を突っ込むと、目の前を竜の尾が遠ざかっていくのが見えた。おれは竜を追って橋の中に入り込んだ。足元には側溝のフタのような金属の網がずっと先まで続いている。迷うことなく、その上を歩き始めた。
やがて足元の景色は、河原から光る川面に変わった。今ここで足を踏み外したら死ぬな、と思ったが構わず進み続けた。とにかく早く歩かないと竜を逃してしまう。
あと少しで向こう岸、というとき、追っていた竜の尾がするりと吸い込まれるように消えた。慌ててさらに足を速め、竜が吸い込まれた先を目指す。竜が消えたところには、橋の中に入ったときと同じぐらいの穴があり、橋の外につながっていた。土手に上がって周りを見渡すと、竜が川上に向かってすごい勢いで飛んでいくのが見えた。翼で空を飛ぶものにはどうやったって追いつけない。おれは、竜が小さな点になって空に消えるまで、呆然とその場に立っていた。
はっと気づいたときは、夕暮れが迫っていた。帰らないと。
大きな獲物を逃がした気分で、とぼとぼ橋に向かって歩き始めた。いつの間にか、横に中年の男がいた。ゴマ塩頭にひげ面でくたびれたグレーの上着の、見るからに冴えないおっさんだった。
「お前、橋の中を渡ってきたんだろう」
おれはびっくりしておっさんの顔を見た。
「竜が飛ぶのが見えたからな。あいつは、こちら側とあちら側の世界のはざ間から生まれて、災いを引き起こす。お前がこの世界からあの竜を追い出すまでは、家には帰れんぞ」
おっさんはそう言うと、ふっと、かき消すようにいなくなった。
こちら側とあちら側? 世界のはざ間ってなんだ?
家に帰れないことなど、どうでもよかった。それよりもおっさんが、呪文みたいな言葉だけ聞かせて、肝心なことを言わないまま消えてしまったのに腹が立った。どうやって竜を追い出せっていうんだ!
おれは自分の家が嫌いだ。学校から帰ってから暗くなるまで河原で遊ぶのは、家に帰りたくないからだ。父親は仕事で失敗していなくなり、母親はそんな父親の尻ぬぐいをさせられたと愚痴ばかり言っている。家の中は、不満と悪口の雲がたれこめていつも暗かった。
だがどんなに帰りたくなくても、おれは金もなく無力な小学生だ。結局向かう先は家しかない。
向こう岸を目指して足を踏み出そうとしたら、突然、竜が消え去った方角から真っ黒な雲が沸き立った。その雲はみる間にこちらに迫ってくる。雲の下では大粒の雨が川面をたたきつけるように降っていた。川の水がどんどん上昇し始め、おれの体にも雨が降りつけた。
やばい! 早く帰らないと!
慌てて橋を渡り始めたら、土手の方から声が聞こえた。
「危ない! 戻りなさい!」
知らないおばさんが、必死でこちらに走ってくる。川から生臭いにおいが立ち上ってきて、竜が濁流といっしょに橋の下すれすれを滑るように飛んでいくのが見えた。
ひぇ~!
おばさんがおれに追いついて、腕をひっつかんだ。
「鉄砲水だよ! 早く土手を下りて、川から離れなさい!」
おばさんに引っ張られて、転げるように土手を下りた。
「危ないところだったよ。風邪をひくから早く家に帰りなさい」
おばさんはさしていたビニール傘を押し付けて、走っていった。あのおばさんには、竜が見えなかったんだろうか。
おれは傘をさして歩き始めた。川は増水し河川敷も消えて、竜を追ってきた橋の中も通れない。
どうしよう。どこに行けばいいんだろう。
あてもなく歩いていると、「NPO法人 ひなたぼっこの家 どなたでもお気軽にどうぞ」という貼り紙が目に入った。吸い寄せられるように入口のドアを開く。
中では明るいランプがともり、食堂のような部屋からは、ふわっと温かい空気が流れてきた。
「いらっしゃい」
エプロン姿の男の人が振り返った。
いなくなった父だった。
「お父さん……」
「真……」
おれは父にむしゃぶりついた。
「お父さん、今までどこに行っていたんだよ! お母さんとおれを置いて! 勝手にいなくなるなんてひどいじゃないか!」
おれは父の背中を拳でたたき続けた。父は黙ってたたかれるままになっている。
やがて、拳を振り上げるのも疲れ、涙も枯れて出なくなった。気が付くと、周りの人たちが心配そうに見ている。父がぼそりと言った。
「真、お父さんの家に来るか」
おれは下を向いたままうなずいた。
外に出ると、すごい雨だった。水の塊が上から落ちてくる。「滝のような雨」とはこういうことだ。父は傘を広げ、おれをしっかり抱きかかえると、「行くぞ」と歩き出した。
外は暗くて、街灯も大雨でくすんでいる。足元を確かめながら歩いていると、父が突然立ち止まった。まわりが水浸しだ。
「ここには細い用水路があるんだ。これじゃ道がわからんな」
二人で進みかねていると、シュルシュルと変な音が聞こえ始めた。生臭いにおいもする。水の中にいるものに気づいてぎょっとした。
竜だった。無数の小さな竜が鱗をこすり合わせながら流れていく。おれは父にしがみついて叫んだ。
「お父さん、竜だよ! 竜がいるよ!」
でも父は「何を言ってるんだ」という顔でおれを見た。
「真、疲れてるな。早く帰らないと」
父は水浸しの道を無理やり突っ切ろうとした。
「お父さん、そこを通ったらだめだよ! 竜にやられるよ!」
おれが父を引っ張ったときだった。まさに父が足を踏み入れようとした場所が崩れた。目の前をごうごうと茶色い水が流れていく。父は、はっと息をのんだ。
「濁流で道が削られたんだ。真が止めてくれなかったら流されるところだった」
今度はおれがはっとした。
父には竜が見えていない。
おれたちは来た道を戻り、別の道を歩き始めた。父に抱きかかえられながら、一体何が起きているのか考えた。何かが変だ。おれにだけ竜が見えるなんて。それに、父がひょっこり現れるのもうまくいきすぎている。土手で会ったおっさんが、竜が出ると災いが起きると言ったけど、関係あるのか。
やっとの思いでたどり着いた父の家は、崖を背にして立つボロアパートだった。中に入って、父は申し訳なさそうな顔をした。
「こんなところで悪いな」
部屋には、ちゃぶ台と布団、あとはタオルが一枚、針金ハンガーにかかっているだけ。台所には、茶碗と皿と小さな鍋が一つずつだ。父は一枚しかないタオルをとっておれに渡した。
テーブルをはさんで父と向き合う。
「お父さん、いなくなってからずっと、ここで暮らしてたのか」
「借金の取り立てから逃げてあちこち転々とした後、ここに来たんだ。世話してくれる人がいてな」
「おれとお母さんのこと忘れて?」
父はうなだれた。
「忘れたわけじゃない。苦労をさせて悪いと毎日思っている。信じてもらえないかもしれないが」
「じゃあ、どうして戻ってきてくれないんだよ」
「お前たちのところに借金取りが来るのを何とかしたかった」
「そんなの言い訳だろ。お母さんは、お父さんの代わりに銀行から毎日毎日怒られてた。どうやっても返せないからジコハサンっていうのをやったって」
「自己破産か」
父の目をまっすぐに見つめた。
「お父さん、家に帰って来てよ」
「お母さんが許してくれないだろう」
「おれもいっしょに謝るから」
父は何も言わずに、茶碗の水を飲んだ。一口、二口、三口……。
おれはテーブルの端を握りしめて、父から顔をそむけた。
だめだ。こんな父親に戻ってきてほしいと頼むのがまちがってた。
おれはぱっと立ち上がり、父の手をすり抜けてそのまま外に飛び出した。猛烈に生臭いにおいが襲ってきた。
まただ、またあの匂いだ。きっとこの近くに竜がいるんだ。
父が危ないかもしれない。そう思ったが、もうどうでもいい、と考え直した。おれたちに苦労を押し付けて逃げ出すなんて、あいつはもう父親じゃない。
おれは土砂降りの中を無茶苦茶に走った。どこをどう走ったのかわからない。気がついたら、またあの「ひなたぼっこの家」の前に立っていた。カラン、とドアが開く音がして、腰の曲がったおばあさんが、驚いた顔でおれを迎えてくれた。
「あんた、びしょ濡れじゃないか。早く中に入んなさい」
おばあさんは大きなタオルを持ってきて、体を拭いてくれた。おれはブルブル震えながら、されるがままにしていた。乾いた服に着替えさせてもらいホットミルクを差し出されて、やっと体が温まり始めた。
「ねぇあんた、琢磨さんの息子さんじゃないか。顔がそっくりだ」
おれはぶんぶんと首を振った。おばあさんは、とんとんとおれの肩をたたいた。
「琢磨さんもあんたも訳ありだね」
さて、とおばあさんは曲がった腰を伸ばした。
「冷めるから早く飲みな。帰るところがないんだろう。あたしも今夜はここに泊まるよ」
おばあさんは奥の畳の部屋に、布団を敷いてくれた。
「あんたは聞きたくないかもしれないけどさ、琢磨さんの話をするのはあたしの務めだからね」
おばあさんはこの近くの川沿いの家に住みながら、「ひなたぼっこの家」を運営している。ある日、降り続いた雨が気になって、土手に上がって川を見ると、男が増水した水の中に入ろうとしているのが見えた。それが父だったらしい。
「ちょっとそこの人! そんなところにいたら流されるよ!」
「いいんです、流されるつもりですから」
弱々しく答える父に、おばあさんはピンと来た。「ひなたぼっこの家」には父のような人がたくさんいて、生きることをあきらめたり、自らの命と引き換えに保険金を家族に残そうとする人もいる。
「そんなことしたってなんにもならないよ!」
父はおばあさんに引き留められた。仕事を見つけ、ひなたぼっこの家に顔を出しながらお金を貯めているらしい。
「琢磨さんが金を貯めるのは家族のためだろう」
おれは何もない父の部屋を思い出した。そうなんだろうか。それならそうと、連絡ぐらいくれたっていいじゃないか。
「大人には大人の事情があるのさ」
都合のいいときだけ「大人」って言葉を使うな。大人に振り回される子どもの気持ちなんて、大人は考えない。言いたいことは山のようにあるけど、うまく言葉が出てこなかった。頭の中がぐちゃぐちゃでイライラして、話し続けるおばあさんの声が聞こえないように、布団の中で亀みたいに丸まった。
遠くで「真! 真!」と呼ぶ父の声がする。
なんだよ、うるさいな。そんなに何回も呼ばなくたって、聞こえてるよ。
強く揺さぶられて目を開けると、おばあさんの顔が目の前にあった。どこかから救急車の音が聞こえる。
「琢磨さんのアパートが土砂崩れに遭ったんだよ!」
びっくりして飛び起きる。生臭いにおいが頭によみがえった。
竜だ。竜がお父さんのアパートを襲ったんだ。
おれはぎりぎりと下唇をかんだ。土手にいたおっさんの言葉を思い出す。
「竜は災いを引き起こす。お前があの竜を追い出すまでは、家には帰れんぞ」
竜をここに呼び寄せたのはおれだ。おれのせいで、父は土砂崩れに巻き込まれたんだ。
おれは父のアパート目指して飛び出した。外は真っ暗だったけど、救急車の音を頼りに、目指す場所を探した。
父のアパートの前は、警察官が見張っていた。通子止めのロープの前で、おれは崩れた崖に目をこらした。生臭い。絶対に竜はこの近くにいる。
暗闇に目が慣れると、くずれた崖のてっぺんに竜がいるのが見えた。竜は爪のついた足で、土砂を蹴り落としている。竜の目がギラリと光り、おれと目が合った。光る目はまっすぐにこちらに飛んできた。おれは竜の爪をかいくぐって、その体に飛びついた。ごつごつとした鱗の感触が、手に腹にぶつかる。やった! 尻尾にしがみついた! 竜はぶんぶんと尻尾をふりまわしたが、おれは鱗をつかんで必死でしがみつき続けた。
そのうち、竜は尻尾をふりまわすのをあきらめ、どんどん上昇し始めた。おれを高いところから振り落とすつもりだ。負けるもんか。こいつを追い出すまでは、死んでも離れない。
風が冷たい。下を見たら怖くなるから目をつぶっていたけど、ずいぶん高く昇ったはずだ。竜はおれが離れないのが気に入らないらしい。今度は真っ逆さまに下降し始めた。頭が下になり、目を開けてしまった。
町は水浸しだった。
これはおれのせいなのか。この竜を呼び寄せたせいで、父のいる町が水没したのか。怖いよりも腹が立ってきた。おれは悪いことはしてないぞ。ただ、父を憎んだだけだ。
憎む、の言葉にはっとした。ゲームで見たことがある。人の憎しみを利用してパワーを増大させる悪役キャラ。おれは悪役なんていやだ。この竜を倒して、父の町を元に戻すんだ。考えろ、どうすればいいか考えろ。
尻尾にしがみつきながら体を揺らして考えた。すると、竜は再びおれの存在にイラつき始めたらしい。尻尾にいるおれにかみつこうと、頭をぐるりとめぐらせ体をくねらせた。しかしその牙は尻尾には届かない。竜は川に向かって下降しながら、ぐるぐる身体を回し始めた。おれは歯を食いしばってしがみつき続けた。やがて川面がすぐそこまで迫ってきた。川に突っ込む! と思った瞬間、くるくる回る続ける竜の体が川の水を吸い上げた。竜の周りにぐんぐんと水が巻き付いていく。いや、水だと思ったのは、すごい数の竜だ。回る輪はどんどん大きくなり風を呼んだ。やがて巨大な輪はたくさんの竜を巻き込みながら、空へと向かった。おれは猛烈な竜巻といっしょに空に昇った。父のいる町から竜を追い出すために昇り続けた。
「起きろ」
目を開けると、グレーの上着の冴えないおっさんが、おれを見下ろしていた。
「おれは橋守だがな。何十年かに一度、お前みたいなガキが竜にそそのかされて、通っちゃならんところを通るんだ。橋の中を通ると、異世界の扉が開いちまう。それをおさめるのは、扉を開いたやつにしかできんのだ。そういうルールでな」
おっさんは、地面に倒れているおれを立たせた。
「なんとか竜を追い出したな。でっかい竜巻が空に消えていくのはなかなか見ごたえがあったぞ」
土手から周りを見渡すと、川はいつものように流れていた。町には家並が広がっている。まるで洪水なんてなかったみたいだ。おれが目を丸くしているのを見て、おっさんは肩をたたいた。
「ま、そういうことだ。今度から変なところは通るなよ」
早く帰れ、と追い払われて、橋の上を歩き始めた。背中におっさんの声が届く。
「お前がこちらの世界で見たことは現実じゃない。でも現実になることもある」
またあいつ、呪文のようなことを言う。でももういい。クソのような家でも、とにかく今は帰るところがある。大人の事情なんて知るか。おれが大人の世界をたたき壊して、新しくつくり直してやる。
今思えば、私が橋の中をくぐったのは必然だった。あの頃は家のことでむしゃくしゃしていて、周りからも手を焼く存在だったに違いない。
私を訪ねてきた少年はきれいな瞳をしている。だがきっとこの子も、心に何か抱えているのだろう。橋の中に引き寄せられ、あの狭い通路をくぐってきたこの子には、帰り道を見つける試練が待っている。
だが私は、少年にあの経験を語らずにおく。なぜなら、竜との戦い方は自分で見つけるしかないからだ。
ひとつだけ、少年には伝えておこうと思う。
道はある。自分が呼び寄せたものを恐れるな。
私は竜を恐れぬ恐竜博士になった。
(了)