人生とは、いつも唐突に終わったり始まったりする
終わりも始まりも、いつも突然に訪れる。
それは、自分の事なのに自分が一番制御出来ない
人生はそんなもんなんだろう…
………何が起きたのか、分からない
確か俺は…遭難して…洞穴見つけて…大雨が…
それから…
「真上 健太郎さん、残念ながら貴方は落雷に遭いました」
!!?
慌てて声のした方に振り向くと、そこには…
「…どちら様ですか?」
「私はヴェーリンク、あなた方に分かりやすく言うところの…神様です」
神様、と名乗る美女が立っていた。海外のモデルさんでも敵うか?というほどのスタイル、長く腰まで伸びた水色の髪、無駄に育ってしまった俺の189cmの身長とさほど変わらないのでは?と思える程の高い身長…ああ、これが絶世の美女、という奴か…いや、つーか俺の名前を…神様だから分かって当たり前か。
「え、と…神様、ですか…つまり、ここは天国で、俺は落雷によって…」
「ええ、亡くなりました」
認めたくない事をズバッと言うな、神様。
「ここは…うーん、天国と言えるような場所ではありませんが、まぁそれで理解していただけるなら、それで良いです」
ちょっと小首を傾げて悩んだような顔をしたり、またすぐ笑顔を見せたり、神様というのは表情豊かなのだな、羨ましい。
「…で、俺はここからどうなるのですか」
「貴方は驚かないのですね、殆ど表情も変わりませんし…普通なら混乱なさると思いますが」
「こんな見たこと無い場所で、こんな見たこと無い美人の方に、明らかに自分の理解を越えた事を言われている…夢なら今頃飛び起きてますから」
夢なら見たことのある記憶の再現がされる、と聞いた事がある。こんな、明らかに見たことが無い場所や人物を見るのはおかしいのだ。
「理解が早いのか、諦めが早いのか…うーん、初めて合うタイプの方なので…」
「やりにくいですか?」
「…多少」
「それは何というか、申し訳ないです。生まれてこの方、こういう性格なもんで」
まさか神様まで困らせてしまうとは…何せ、幼い頃に両親を亡くして以来、感情を抑えたりする事が得意になり、感情の触れ幅すら小さくなっている…と、医師の診断が出た程だ。
会社でも裏で「無表情、無感情の能面先輩」などと呼ばれていたしな…
「…とにかく」
こほん、と咳払いした後、また神様は話し出す
「貴方は残念ながら命を落としてしまいました。それで、本来であれば魂は向かうべき場所に向かうはずなのですが」
「…ですが?」
「…少々、その、手違いがありまして」
神様でもミスするんだなぁ…とか思う俺は、やはりズレているのだろうか
「実は、私の管理する世界において、とある国によって召還の儀が執り行われたのですが」
ん?召還の…儀?なんだそりゃ
「その魔術の影響が暫く残ってしまったらしく、召還の儀の後でも此方に来てしまった方がいたのです」
あ、それに関しての説明は無いのか…その上、魔術と来たか
「つまり、俺はその影響で引っ張られてきた一人、と」
「そうなります…本来の向かうべき場所とは違う所に、私の管理が行き届かなかったせいで呼ばれてしまい、申し訳ありません」
「なるほど」
…運が良いのか、悪いのか…いや、恐らくは相当に悪いな
「それで、俺はどうなるのですか?」
「…私の管理する世界に行っていただけませんか?」
異世界召還という奴か?流行りの。
「それしか無いんですよね?」
「…はい」
困らせるつもりは無かったのだが、悲しそうな顔をさせてしまった。
「ですが、ただ送る訳ではありません。出来る限りの能力は付与してお送りします」
チート、とかいうアレか?
「正直、別に戦って勇者になりたいとか、そういうのは無いのですが」
「それは恐らくは大丈夫です。最初に召還された者に勇者の祝福は与えましたので」
「それは良かった」
正直、争いとは過去にちょっと荒れた時以降、格闘技とか武術なんかとは無縁の人生を送ってきた。戦え、と言われても、素手での素人同士の対人戦ならまだしも…武器の扱いなんか分からない。
「それで、貴方はどのような能力が欲しいのでしょうか」
「えーっと…能力、ですか」
いきなり言われても分かる訳がない。何せ知らない世界に行くんだ、勝手も違えばルールも常識も何もかも違うのだろう。人種的なものも違うし、国や地図的なもの、文化、風習、言語…あらゆる事が恐らくは違う。
認識のズレは軋轢を生み、争いの種になる…面倒な話だ。
「…大丈夫ですよ、基本的な知識や言語などは分かるようにします」
それは助かる、神様仏様ヴェーリンク様
「じゃあ、どこでも生きていけるサバイバル能力と動植物の知識を」
「…そんなもので良いのですか?」
「むしろ、それが無いと生きるのが大変だと思うので…あ、あと出来れば俺が死んだ時に持っていた荷物は持ち込めませんかね」
俺の財産、大枚叩いて揃えたサバイバルセット。何に使うんだよ、という物まであるが、兎に角あの荷物が丸々無くなるのは寂しいものがある。
「構いませんが、恐らく情報端末は使えませんよ?」
「あー、スマホとかですか?」
「はい」
そらそうだ、異世界に4Gやら5G、Wi-Fiの電波が飛んでる訳が無い。何処でもWi-Fi使えたら、俺がいた世界のどの国よりも便利だろう。
いや、そもそも使えたとして、何処に引き落としされるんだ?料金は…向こうの世界のお金で支払う?
「いや、ですから使えませんよ」
ツッコまれた…いかんいかん、つまらない事を深く考える癖は治らないもんだ。
「えーと、電波が入らないだけですか?」
「そうですね、そもそもエネルギーもある分が無くなれば、力を失うでしょう」
「そりゃ充電も出来ないか…いや、まぁ…あまり未練はないので構いませんが」
「当然ながら、それ以外の消耗品等の補充も出来ません。貴方の世界とは文明のレベルも違うので」
「分かりました」
「…えーと」
またも悩む神様、俺は何かしてしまったのだろうか?
「いえ…物分かりが良すぎて、今までと勝手が違うというか…」
ああ、普通はもっと混乱するし、嫌がったりするもんなのか…
「…兎に角、貴方にはサバイバル能力、言語能力、基礎知識、動植物の知識を与えます…イレギュラーとはいえ、私の世界に呼ばれたのも何かの導き、私の管理する世界で、精一杯生きて下さい」
神様の言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、目を開けていられない程の強い光が俺を包んでいく…更に意識すら飲まれ、薄れ行く中で俺は思った
「そういや、有休切れたらどうなるんだろう」
いや、死んでるからそれ以前の問題か…あー、HDDに何か変なの残してなかったかな…