田舎の少女とその故郷
時間は飛ぶように過ぎていった。
夢中で話しながら、シャーロットは自分の胸がどんどん軽くなってゆくのを感じる。こんなに楽に呼吸ができるのはいつぶりだろう。この半年間、どれだけ気持ちを張り詰めて、慣れない都会の暮らしに馴染もうとしてきたことだろう。穏やかな兄の隣にいるだけで、まるで故郷に戻ったように、体から余計な力が抜けていくのがわかる。
ロジャーは少しも変わらない。いや、少しまた背が伸びたかもしれないけれど――贅沢な身なりをして日々社交に興じ、家柄と富をひけらかすようにして裕福に暮らす上流階級の人間とは――その慣習に平然と風穴を開けるラリーや、その中にいてなお超然と星のような輝きを失わないイザベラは別として――根本的に立っているところが違う。
地に足をつけ、ときに過酷な自然とも手を取り合って生きてゆく強さ。
シャーロットの愛した自由と伸びやかさだ。
兄の笑顔を眺めながら、シャーロットは思わず泣き出したくなる。
農場の家に戻りたい。ここは息が詰まりそうなの。連れて帰ってロジャー。
だが、口に出して言うことはできなかった。自分はもう都会のシルヴァートン家の娘で、その上一家の命運が自分にかかっている。
「それで」
会話が一段落したところでシャーロットはロジャーに尋ねた。
「いつまでこっちにいられるの、ロジャー?」
「明日にはもう帰らないと」
「そんな。せっかく来たんだからもう少しいてもいいじゃない。うちに泊まればいいわ。お父様に言えばきっと――」
「それはできないよ」
ロジャーは首を横に振った。
「お前の両親は快く思わないと思う。心配いらない。今夜はローレンスが泊めてくれる。明日の朝の列車で帰るよ。もうすぐ小麦の刈り入れもあるしね。農場の仕事を父さん一人には任せられない」
「そう……そうね」
「そんながっかりした顔をすることはないよ、シャーロット」
ロジャーは笑ってシャーロットの頭を撫でた。
「会おうと思えばいつでも会える。こんなふうにね。そうだろう?」
「ええ……」
「ほら、ローレンスが戻ってきた」
言われて後ろを振り向くと、ラリーが煙草をふかしながらぶらぶらと近づいてくる。シャーロットの顔を見るなり足を止め、
「公園をもう一周してこようか?」
「何言ってるの」
「見たところ俺は邪魔のようだが」
「そんなこと」
ラリーのおどけた口調にシャーロットは笑いそうになって、ふと顔を曇らせる。そもそも今日ここに来た目的は、ラリーを誘惑することだったのだ。思い出したとたん、ロジャーと再会したことで昂揚していた気分が一気に沈んだ。
――キャサリン。わかってるわね?
シャーロットは兄から離れ、ラリーに言った。
「ラリー、ちょっと話があるの」
ラリーは煙草をくわえたまま、片方の眉を吊り上げる。
「何かな?」
「ロジャー、ここで待ってて」
兄に仔猫を預け、シャーロットはラリーを少し離れた木陰に引っ張って行った。




