六角形の雲が漂っていた
4時半だった。よう子が帰ろうとした時、アキラが急に帰って来た。
「あら早いわねえ、アキラさん?」
「仕事、早く終わっちゃった」
ショーケン「早いなあ~~」
「何やってたの?お二人で?」
ショーケン
「六角オセロゲームだよ」
「六角オセロゲーム?」
「これだよ!」
指差した。
「なに、これ?」
「六角形のオセロゲーム」
「へええ~~、初めて見た」
「だろう」
「面白そうだねえ」
「よう子ちゃん、強いよ。やってみな」
「ああ、いいよ」
よう子は帰るのを止めた。
かくして、よう子とアキラの六角オセロ対戦が始まった。
「兄貴、コーヒー頼む!」
「ああ、いいよ」
よう子は、姉みたいに質問した。
「仕事、どうだったの?」
「気は遣うけど、そんなに難しくはなかった」
「相手の人は、まったく目が見えてない人なの?」
「少しは見えてるって、言ってた」
「ワクチンは打ってたの?」
「打ってないって言ってた」
「それは良かったわ。ワクチン打つと、日に日に網膜がやられるんだって」
「徐々にやられるんだ。それはやばいねえ」
「日に日に腐って行く、悪魔のワクチンなの」
「ひどいワクチンだねえ」
ショーケン「はい、コーヒー」「ありがとう!」
「でも、ワク打ちらしい人が来ると、緊張するねえ」
「分かるんだ?」
「だいたい雰囲気で分かるよ。ボ~~っとしてるし、顔色は悪いし、変な匂いはするし」
「変な匂い?」
「生ごみみたいな」
「へえ、そうなんだ。エキソソームの匂いなのかしらねえ?」
「このゲーム、いいねえ。彼女、きっとびっくりするぞ」
「こういうの好きなの?」
「好きだよ。今度、持っていってやろう。これ、どこで売ってるの?」
ショーケン
「ネットで売ってるよ。メルカリで、3千円で売ってる」
ゲームは、10分ほどで終わった。よう子が勝った。
「強いねえ、よう子ちゃん」
「偶然よ」
「もう1回やろう」
「わたし、もう帰るから、今度ね」
「そう、じゃあ今度」
よう子は帰って行った。
「そうだ、このゲーム、あゆみちゃんに見せてやろう、きっとびっくりするぞ」
ショーケン「そうだなあ」
「ちょっと借りていくね」
「ああいいよ」
アキラも出て行った。外に出ると、ちょうどアニーが歩いていた。
「アキラさん!」
「何やってるの?アニー、こんなところで」
「痴漢や金槌人間のパトロールです」
「大変だねえ」
「お仕事ですから、何持ってるんですか?」
「六角オセロゲーム」
「六角オセロゲーム?何ですか、それ?」
アキラは見せた。
「六角形のオセロゲーム」
「うわあ、何これ?」
「面白いだろう」
「うん!」
「今度、やろうよ、君ん家で」
「いいわよ、今度持ってきてね」
「じゃあ、仕事頑張ってな!」
アニーは、アキラの頬に軽くキスをすると去って行った。
六角形の雲が漂っていた。




