悪魔のワクチン狂騒曲
きょん姉さんは、ロボット福之助と、セグウェイで勝間屋に向かっていた。
前方に、ふらふらしながら歩いている若い男がいた。
姉さんは、男の前でセグウェイを止めた。
「もしもし、お兄さん。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。疲れているだけです」
「それならいいんだけど・・、」
「ワクチンを打ってから、ときどき激しい眩暈がするんです」
「ワクチンはいつ打ったんですか?」
「1週間前です」
「じゃあ、副反応ですねえ」
「こんなになるんだったら、打たなきゃよかった」
「そうだよね~~」
「学校に行っても、頭痛がして、勉強が頭に入らなくって・・」
「ワクチンの副反応や後遺症は、アラシールドで治るみたいだよ」
「それを、今から買いに行くんです」
「大丈夫、一人で行ける?」
「大丈夫です」
「じゃあ、私が買って来てあげるわ。ここで、福之助に腰かけて待ってて」
福之助は、膝を折って四つん這いになった。
「どうぞ、お兄さん。遠慮なさらずに」
男は、福之助の背中に座った。福之助は尋ねた。
「頭痛で頭が回らないんですか?」
「うん、さっぱり駄目になっちゃったよ」
「ブレインフォグってやつですね」
「そうみたいだなあ。ロボットはいいねえ、そういうのが無くって」
「頭が回らないってことはありません」
福之助は、頭を一回転させた。
「ほらね」
「君って面白いねえ」
男は笑っていた。
きょん姉さんは、10分くらいで戻って来た。
「はい、買って来たわ、2袋」
「おいくらですか?」
「2袋だから、2千円」
若い男は、代金を渡した。
「歩けるかな?」
「歩けると思います」
「お茶を買って来たわ、これでも飲みなさい」
「ありがとうございます!」
男は、早速、アラシールドの袋を開けて、1粒飲んでから、お茶で流し込んだ。
「お茶、おいくらですか?」
「要らないわ、おごりよ」
「ありがとうございます」
「立てるかな?」
「立てます!」
男は立ち上がった。そして、ふらつかずに歩き出した。
「もう大丈夫です!」と言い残し、去って行った。
「これから、ああいう人が増えそうだねえ」
「そうですねえ」
今度は、前方から、幻魔教団の連中10人ほどが、白いレインコートを着てやって来た。
悪魔の殺人ワクチン 絶対打つな 3年以内に死にますよ
と、手持ち太鼓を叩き、叫びながら。
きょん姉さんの前で、立ち止まった。
「やあ、高田さん」
「毬藻さん、こんにちわ。これから、どちらへ?」
「こうやって、高野町を回ってるだけです。ワクチンの危険性を、みんなに伝えてるだけです」
「それは、すばらしいことですわ」
「あのワクチンは、悪魔の奴隷になるんですよ」
「悪魔の奴隷?」
「はい、一生、悪魔の奴隷になるワクチンなんです」
「自分ではなくなるんですね」
「はい。そして、最後は、病気になって死ぬか、狂って死んでしまうんです」
きょん姉さんの脳裏に、悪魔のワクチン狂騒曲が聞こえていた。




