暗黒エネルギー・ブラックドラゴン
いつの間にか、夜の7時になっていた。
よう子は、いつものシャドーボクシングを、公園でやっていた。
「明日の為に、腰を鍛えておかないと・・」
隆二の声がした。
「よう子ちゃ~~ん、また襲われるよ~」
「大丈夫です。もうヘマはやりませんから」
満月に近い月だった。
「明日は満月かしら?だったら月下美人の花も満開になるわ」
隆二は、いつの間にか、いなくなっていた。
「散歩にでも行ったのかしら?」
よう子は、ストレッチ運動を始めた。
「身体を柔らかくしておかないと・・」
股を目いっぱい広げてみた。
「痛ててて・・、ちょっと硬くなってるかな?」
アキラがやって来た。
「相変わらず、やってますねえ」
「こんばんわ、お出かけですか?」
「ちょっとね」
「明日も、お出掛け?」
「そうだね、多分」
「何時ごろ、お出掛け?」
「7時頃かな?」
「帰宅時間は?」
「多分、10時ごろ。何で?」
「いえ、別に」
「変な事を訊く、よう子ちゃんだなあ」
「今日は早いの?」
「分からない。相手次第だなあ」
「じゃあ、ワク打ち人間に気を付けてね。襲われないように」
「分かってるよ、そっちこそ気を付けてね」
アキラは、手を振りながら去って行った。
「今日は相手次第か・・」
今から行こうと思ったが、躊躇して留まった。
「我慢、我慢!」
どこからか、笛の音が聞こえていた。
「こんな時間に笛を吹くなんて、気持ち悪いわねえ」
・・・
笛の音で不安になった小島よう子は、ショーケンに会いに行った。
「あなたあ~~、今、誰かが笛を吹いてたんだけど、聞こえなかった?」
「何も聞こえなかったよ」
「おかしいわねえ」
「こんな夜更けに?空耳じゃないの?」
「そんなんじゃないわ」
「よう子は超能力者だからなあ」
「おかしいなあ~~」
と言って、帰って行こうとした。ショーケンは止めた。
「せっかく来たんだから、ゆっくりしていきなよ」
「でもねえ~~」
「まあいいじゃない。お茶でも飲んでいきなよ」
「あっ、また笛の音が聞こえているわ」
「ほんと?ちっとも僕には聞こえないよ」
「これは、悪魔の笛だわ」
「悪魔の笛?」
「人を死に追い詰める笛」
「それが聞こえるんだ?」
「聞こえるの、きっと近くにいるんだわ」
「近く?」
「そう、この近くに」
ショーケンは、彼女を抱きしめた。
「大丈夫だよ。僕がいるから」
「きっと、ワクチンを打った人には、この笛の音が聞こえているんだわ」
その頃、転軸山公園では、戦いが繰り広げられていた。
「あんちゃん、こっちだ!」
蛍光BB弾が飛び交っていた。
「マサト、左に回れ!」
笛の音は鳴り響いていた。
「心臓を狙って撃つんだ!」
『お前たち、無駄な抵抗はよせ』
兄「俺たちを苦しめて、いったい何が目的だ?」
『お前たちに、生きる資格はない』
兄「どういうことだ?」
『生きてる意味が無いということだ』
兄「意味が無い?」
『死んでしまったほうがいいということだ』
弟「お前こそ、死ね!」
『苦しんで死ぬがよい、苦しんで苦しんで、苦しみぬいて死ぬがよい』
近くの木の枝が揺れた。
二人は、一斉射撃した。蛍光BB弾が、木の葉に当たって落ちた。
二人の脳裏には、不気味な声が聞こえて続けていた。
愚かなる者よ 苦しんで死ぬがよい
「お前は、いったい何者なんだ?名を名乗れ!」
『暗黒エネルギー、ブラックドラゴン』
「暗黒のエネルギー、ブラックドラゴン?」
『そうだ』
「兄ちゃん、雨が降って来たよ」
「そうだなあ」
「もう帰ろうよ」
「そうだな、帰るか」
二人は、セグウェイに乗ると、急いで帰って行った。
高野山に冷たい雨が降っていた。




