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蛍光BB弾

福之助は、セグウェイで、スーパー勝間屋に向かっていた。

安全運転で低速で走っていると、赤いセグウェイに乗った若い男が、福之助を追い越して行った。

「チェックメイトキングツー、チェックメイトキングツー」と言いながら、

「なんだ?・・」

よく見ると、無線機に話していた。

「チェックメイトキングツー、・・・?聞いたことあるような・・」

メモリを調べた。

「戦争映画コンバットのコールサインだ」

走り去る男は、自動小銃みたいなものを、肩からぶらさげていた。

「あんなオモチャを持って、何やってるんだ?こんな時間にに、戦争ごっこか?」

暗闇の中をカラスが飛んでいた。

「あの銃、本物みたいだったなあ・・」

闇に向かって、光るものが見えた。オモチャの銃声と一緒に。

「蛍光BB弾だ!」

そこは、いつも通る小さな公園だった。

「ないやってるんだ?」

福之助は、公園の前でセグウェイを止めた。

また銃声がして、福之助のアルミのボディに、蛍光BB弾が当たって跳ね返った。福之助は叫んだ。

「なにをするんだ!?」

近くに隠れていた男が出て来た。

「ごめん、ごめん、間違えちゃった!」

「間違えた?」

「悪魔と間違えた」

「悪魔?わたしは、ただの補佐ロボットです」

「知ってるよ」

「じゃあ、なぜ、わたしを撃ったのですか?」

「だから、間違えたの、悪魔と」

「悪魔?悪魔って何ですか?」

「俺たち兄弟を追い詰めてる悪魔だよ」

「悪人ですか?」

「違うよ。人じゃないよ、アクマ、おばけだよ」

「そんなものは、この世界にはいません」

「それがいるんだよ」

「まあいいでしょう。いると仮定しましょう」

「ありがとう」

「で、その銃で、その悪魔を撃って、どうするんですか?」

「撃って倒すんだよ」

「倒れるんですか?」

「悪魔は、光る弾丸で死ぬんだよ」

「ほんとうですか?」

「ああ、本当だよ」

「初めて訊きました」

無線機が鳴った。

『チェックメイトキングツー、チェックメイトキングツー』

「チェックメイトキングツー、こちらホワイトロック!」

『天軸山公園で悪魔と交戦中、来てくれ!』

「兄ちゃん、今行く!」

その男は、「失礼!」と言うと、セグウェイに乗り、全速で去って行った。

「なんだ?何事だ?」

福之助は、地面に落ちている、蛍光BB弾を、つかみ取ろうとしたが、指が太くて拾えなかった。

「そうだ、買い物!買い物!」

勝間屋に入ると、篠原英ひで子が買い物をしていた。

「篠原さん、今頃、お買い物ですか?」

「あら、福ちゃん!博多に帰ったんじゃなかったの?」

「ドームハウスに住むことになったんです」

「ええ~~え、ひんとう?何番にいるの?」

「9番です。ショーケンさんとアキラさんの隣です」

「それは、びっくりだわ」

「よろしくおねがいします」

「こちらこそ、そろしくね」

「こんな時間に、何を?」

「悪魔退治の、ロウソクと、お線香です」

「悪魔退治?」

「近くに悪魔がいるって言ってたわ」

「近くに?天軸山公園とかにですか?」

「そう言ってたわ。よく知ってるわねえ」

「さっき、そういう人がいたんですよ。悪魔と闘ってるって人が」

「悪魔と闘ってる?」

「はい。そう言ってました」

「それは、不思議だわねえ」

「それで、ロウソクと、お線香ですか?」

「ええ、悪魔は、光る炎や、お線香の臭いを嫌うって、言ってたわ」

「さっきの人も、光る銃弾で、悪魔は倒れる、って言ってました」

「光る銃弾?」

「ええ、オモチャの銃と、蛍光の銃弾で」

「へええ、そうなんだ」

「セグウェイですか?」

「そうよ」

「じゃあ、一緒に帰りましょう」

「よかったわ。夜道は心細かったの」

買い物を終え、外に出ると、虚ろな表情で、力なく両手を前に出して、

よろよろと歩いている人がいた。

「ワク打ちゾンビだ」

「ワク打ちゾンビ?」

「ああいう人のことです」

「ワクチン打つと、ああなるの?」

「ああなる人もいます。ブレインフォグだそうです」

「ブレインフォグ?」

「脳がやられる病気だそうです」

「恐いわねえ」

「不気味なので、早く帰りましょう」

冷たい風が吹いていた。

「寒くなって来たわ。早く帰りましょう」


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