根占千恵子
隆二とアキラが戻って来た。
隆二「みなさん、お待たせ~~~」
ショーケン「りゅうちゃん、わるいねえ」
隆二は老婆に目を向けた。
「この方は?」
ショーケン
「水俣の根占千恵子さんです」
「水俣って、熊本の?」
「浦賀から来たんだって」
「浦賀?横須賀の?」
「そうらしい」
「らしい?って?」
「よく覚えてないんだって」
「覚えてない?そいつは妙だねえ?」
「認知症かなあ?」
「ワクチンかなあ?」
ショーケンは、老婆に尋ねた。
「根占さん、ワクチン打ちました?」
「さ~~あ、よく覚えていません」
隆二
「まあ、いいや。後でアラシールドと、イチョウの葉のサプリを飲ませてやろう」
ショーケン「イチョウの葉?」
「物忘れにいいんですよ。欧州では、認知症の薬なんです」
「へええ、そうなんだ」
「わたしも、頭の回転が良くなるんで、毎朝飲んでいます」
「ふ~~~ん」
隆二は、老婆に尋ねた。
「おばさん、家族はいないの?」
「息子がいます。浦賀に」
「じゃあ、連絡してあげましょう」
「いいんですよ。わたしは死んだことになってるんです」
「死んだことになってるって?」
「宇宙人に助けられたんです」
「宇宙人に?」
「はい」
「夢でも見てたんでしょう。根占さん、大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「お家の電話番号、分かります?」
「分かりません」
「じゃあ、住所は?」
「忘れました」
「じゃあ、息子さんの名前を教えてください」
「洋一です。根占洋一」
「根占洋一さんですね。後で調べてみます」
ショーケン
「どうやって、調べるの?」
「検索したら、出て来るかもしれない」
「無理だと思うよ」
「とにかくやってみます」
アキラ
「警察に届けたほうがいいんじゃないの?」
老婆は悲しそうな顔をして、涙を浮かべていた。
隆二「それは、後で考えます」
ショーケン
「根占さん、警察なんて行きたくないんでしょう?」
「はい、行きたくありません」
隆二
「みなさん、たくさん買って来たので、どんどん食べてください」
アキラ
「おばさん、俺、横須賀の基地で働いていたことがあるんだけど、横須賀のどのあたりにいたの?」
「防衛大学の近くです」
「っていうと、馬堀海岸の上のほう?」
「そうです。そうです」
「どうやって、ここに来たの?」
「死んだら、宇宙人がやってきて、わたしの病気の無い肉体を複製して、それに魂を入れたんです。気が付いたら、ここに」
「ふ~~~ん?SFみたいなはなしだねえ」
「弘法大師のいる、いいところに連れていってあげる、って」
「どんな宇宙人だったの?」
「よく覚えていません」
よう子
「根占さん、隣で将棋している人、宇宙人なんですよ」
「ええ、ほんとですか?」
毬藻は、食べながら、一生懸命に将棋を指していた。
隆二
「根占さん、遠慮しないで、食べて、食べて」
「はい、ありがとうございます」
老婆は、涙を浮かべながら、嬉しそうに食べていた。




