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目くらまし戦法

小柄な老婆がやって来た。

「みなさん、ここは、どこですか?」

よう子

「ここは、ドーム村ですよ」

「ドーム村?」

「おばさんは、どこから来たの?」

「わたしは、熊本の人吉から来ました」

「熊本って、九州の熊本?」

「はい、そうです」

毬藻

「おばあさん、ここは高野山だよ。和歌山県の高野山」

「和歌山県の高野山?」

「弘法大師の高野山」

ショーケン

「おばさんの名前は?」

「根占千恵子です」

「いい名前だねえ」

「あなた、ショーケンに似てるわねえ」

「はい、ショーケンこと、萩原健一です」

「どうして、こんなところに?」

「ちょっと、事情がありまして・・」

「あら、そうなのね」

「おばさん、いくつ?」

「85だったかな?」

「お元気ですねえ」

「そうでもないわ。あちこち痛くてねえ」

「人吉から、どうやって来たの?」

「汽車で来たのよ。横須賀に」

「じゃあ、横須賀から来たんだね?」

「そうなのかしらねえ?」

「どうやって来たの?」

「さああ~~、どうやって来たんでしょうかねえ?」

「困ったなあ~~~」

「お腹が空いちゃったわ」

「お腹、空いてるんだ?じゃあ、すき焼きでも食べる?」

「すき焼き?いいわねえ~~~」

よう子

「じゃあ、食器を持って来るわ」

ショーケン

「おばさん、ちょっと待ってて」

「あらあ、悪いわねえ~~」

よう子は、すぐに戻って来た。

「はい、根占千恵子さん」

よう子は食器を置いく、箸を手渡した。

「まあ、冷たい手だわ」

「死人じゃありませんよ、幽霊」

「幽霊?」

「冗談ですよ」笑っていた。

「食べたら、温まるわよ」

「朝、食べただけだからねえ」

きょん姉さんは、老婆の隣に座った。

「あら、高田今日子さん!」

「はい、トラベル・レポーターの高田今日子です」

「わたし、あなたのファンなんですよ」

「それは嬉しいわあ」

「お仕事ですか?」

「はい」

「嬉しいわあ、あなたと、そしてショーケンさんと、食事できるなんて。きっと神様がいるんだわ」

「横須賀の、どこに?」

「浦賀です・・」

「・・浦賀ですか、漫画家の水木しげるさんが、戦場から帰って来たところですね」

「そうなの?」

「そうなんです」

あゆみ

「おばちゃん、将棋できますか?」

「将棋?まったく、できません。挟み将棋なら、できますよ」

「はさみ将棋か・・」

毬藻

「僕は、将棋なら得意だよ」

「ほんとですか?」

「ほんとだよ」

「じゃあ、やりましょう!」

「いいよ」

あゆみは、将棋盤を、テーブルの上に置いた。

「おねがいします!」

食べながら、将棋が始まった。

あゆみ「なに、この戦法?」

「宇宙流、目くらまし戦法」

よう子

「やっぱり、宇宙人だったんだわ」

毬藻は、不気味に微笑んでいた。


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