金槌人間・・?
高野町のスピーカーから、公報が流れた。
金槌人間が出没しています 突然 理由もなく 金槌で頭部を攻撃する 変質者が出ています 金槌を持っています 発見したら 近づかないで 静かに逃げてください 急に逃げると 走って襲ってくるので 非常に危険です
アキラ「今度は、金槌人間かよ?次から次と、変なのが出て来るなあ~~」
よう子「そうですねえ」
「これも、ワクチン?」
「そうでしょうねえ。他に考えようがありません」
「理由もなく、ぶん殴って来る?おっかねえなあ~~」
「ヘルメットが、要りますね」
「そうだな~~」
ショーケン
「安心して、弁当も食ってらんねえなあ」
アキラ「そうだねえ」
よう子「後ろが怖いですねえ」
ショーケン
「一人ずつ交代で食べよう」
「それしかありませんねえ」
金剛峯寺に着いた。
ショーケン
「さて、はじめるか」
よう子は、近くのベンチに座った。アキラは、よう子の後ろに立っていた。
「よう子ちゃん、ここで見張ってるから、大丈夫だよ」
「ありがとう、アキラさん」
「じゃあ、やっていいよ」
「じゃあ、まだ指が動かないから、簡単な曲から」
よう子は、弾き始めた。
「ん?」
「カスケーズの、悲しき雨音」
「ふ~~~ん」
「知らない?」
「聞いたことある」
「吉田拓郎さんが、最初にギターを覚えたという曲です」
「へえ、そうなんだ」
ショーケン
「たくろうがねえ、知らなかったよ。あの頃は、やたらと、悲しき、何とかが多かったなあ。悲しき願い、とか、悲しき鉄道員、とか。日本語にすると、みんな、悲しき」
よう子
「きっと、世の中が、そういう時代だったんでしょうねえ」
「そうだなあ、まだまだ貧しかったからなあ」
アキラ「そんなに、貧しかったんだ?」
「ああ、スーパーもコンビニも無かったからなあ」
「じゃあ、買い物は、どこで?」
「市場だよ、遠くの市場」
「商店はなかったの?」
「あったけど、値段が高いの、市場まで行ってたんだよ」
「ふ~~~ん」
「俺も、祖母と一緒に行ってたよ。歩いて」
「バスは無かったの?」
「あったけど、祖母は乗り物に酔うので乗らなかった」
「遠かったの?」
「3キロくらいだったかなあ?」
「けっこう遠いねえ」
「明治の人は、足腰が強かったなあ」
「そうなんだ」
「帰りが大変なんだよ」
「どうして?」
「重いんだよ。買った物が重いんだよ」
「キャリーバッグとか無かったの?」
「無い、竹で編んだ買い物かご」
「野菜とか、重いんじゃない?」
「そういうのは、近くの八百屋で買ってた。魚は魚屋、肉は肉屋でな」
「市場には、安くて、いいものがあったんだ?」
「あったんだろうなあ、覚えてないけど」
「よく行ってたの?」
「週に1回、土曜日にな」
よう子は、一生懸命に、ギターを弾いて、歌っていた。観光客が集まりだした。
よう子は、無我夢中で歌っていたが、アキラは、彼女の背後で、怪しい者がいないか、警戒しながら、周りを見ていた。
幻魔教団の連中、5人が、やって来た。
彼らは、よう子の前方で立ち止まると、観光客の後ろから、彼女の歌と演奏を聴いていた。
歌と演奏が、ひと段落すると、教団長の毬藻が、ショーケンのところにやって来た。
「焼き芋を、5個ください」
「はい」
「今から行ってきます」
「よろしく、おねがいします」
毬藻は、代金を払うと、出掛けて行った。
よう子とアキラに手を振って「じゃあねえ~~~!」と言いながら、
よう子の、歌とギター演奏で、焼き芋は売れていた。気が付くと、いつの間にか、お昼になっていた。
ショーケン
「よう子ちゃん、お昼の食事タイムにしなよ。俺、代わりにやってるから」
「はい」
「アキラ、焼き芋、頼む」
「あいよ」
ショーケンは、ベンチに座ると、ストーンズの悲しみのアンジーを、下手なギターを弾きながら、歌い始めた。
「ここなら、安全ですね」
よう子は、ショーケンの右隣に座って、弁当を食べ始めた。
「よう子ちゃんが言ってたように、ヘルメットが必要だねえ」
「そうですねえ」
よう子は、ショーケンの歌と演奏を聞きながら、涙を浮かべていた。
「どうしたの、よう子ちゃん?」
「悲しい世の中になって来ましたねえ」
「よう子ちゃん」
「えっ?」
「この歌に、ぴったりの光景だよ」
高野山の鐘が鳴っていた。二人には、悲しく鳴り響いていた。
ショーケンは、下手な英語で、一生懸命に歌っていた。




