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鏡のお姫様

作者: KK

今日もいつものように教室に入ると、3人で楽しそうに喋っている女子たちを見た。


「あ、ユウコちゃん、おはよ」

「おはよう」


私は彼女たちが羨ましい。せめて一度だけでも、綺麗な顔になって人生を謳歌してみたいものだ。


学校帰りに、見たことのない雑貨店を見つけた。そこは、小さくて古そうだった。中は薄暗くて、窓からは、あまり見えない。見るぐらいなら良い、と思い、入ってみることにした。重たいドアを引くと、軋むような音がした。


「いらっしゃいませ」


店主は、帽子を目深に被っていたので顔が見えない。他に客はいないので、開店してすぐの店なのかと思った。


商品は不思議なものばかりだった。見たことのない色をした宝石や、何に使うか分からない杖、奇抜な仮面が置いてあった。その中で私は、ある鏡が気になった。近づいて見ていると

「そちらは理想の顔になれる鏡でございます」と言われた。


「そんな鏡あるわけない」と私は呟いた。


「それがもし存在したら、どうなさいますか。1か月無料でお試しできますが、いかがでしょうか」


結局、私は試すことになった。


「必ず期限内にお返し下さい」


家に持って帰ると、鏡を部屋に置いた。覗き込んでみると何も起きない。鏡に映る私は不細工なままだ。半信半疑で試したが、偽物だったか、と思っていると

「本日は体験版をご利用いただき誠にありがとうございます」と鏡から声がした。


「こちらの鏡では、貴方の顔をカスタマイズできます」


「目を大きくして」と言ってみた。すると本当に目が大きくなった。嬉しくなり、次から次へと要求した。


翌日、学校に行くと、皆の視線が私に集まった。


「おはよ。ユウコちゃん、可愛くなったね」と綺麗な3人組が話しかけてきた。


「そうかな。でも、ありがとう」と私は小さく笑う。


それから多くの人に話しかけられた。廊下を歩くだけでも注目を浴びる。これで私も人生を謳歌できる、と思った。


家に帰ると「鼻を高く」と鏡に言った。


来る日も来る日も、私は鏡に要求し続けた。


「今日で1か月です」と告げられた。


だが「うるさい。私はもっと綺麗になりたいの」と言うと、鏡に元の私の顔が映った。


「違う!それは私じゃない!」


すると、鏡から黒い手が伸びた。


「放して!」


――コレガオマエガノゾンダカオダ。


鏡の向こうには雑貨屋が見える。私は今、真っ暗な空間にいる。私はこの世界で一番きれいなお姫様。






最後までお読みいただきありがとうございます。辛口でも良いので感想をいただけたら幸いです。

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