8話 話の前に
リリナはそう言うと、サツキの方を見た。
意図を察したサツキは三人を部屋に通した。
「どうぞ、座ってください。」
サツキと三人は部屋の中の大きなソファーに座った。
四人が座ったことを確認すると、リリナは再び笑って言った。
「御三方、ようこそいらっしゃったわね。このような教会ですけども、どうぞくつろいでくださいまし。」
リリナは次にそばに控えていた青年の方に目を向けた。
「彼はヤヨイ、サツキの兄よ。先程はごめんなさいね、睨んじゃって。……ヤヨイ、全員分のお茶を頼めるかしら?」
「畏まりました。」
ヤヨイは一礼すると部屋の奥の方へ向かっていった。
その様子を見ていたサツキが慌てて後を追った。
「お兄様、お手伝い致します!」
サツキも奥へ消えると、リリナは3人を見た。
「昨日はサツキがぶつかってしまって、申し訳なかったわね。」
ルエルは焦って口を開く。
「いえ!こちらこそよく前を見てなくて…すみませんでした!」
リリナは笑って言う。
「ふふ、謝らないで。…それと、ありがとう。サツキの心配をしてくれて。」
ルエルは驚いたように当たり前だ、と口にする。
「ここでは当たり前でないのよ。あの子たちは孤児。あまり良く思われていないの。」
リリナは再びありがとうと口にして言った。
「改めて、あなたたちのお名前を教えてくれるかしら?」
三人は顔を見合わせて、ルエルが頷いた。
「俺はルエル、吟遊詩人をしています。」
リリナが頷いたのを見て、ヒカゲが口を開く。
「私はヒカゲ!狐のアーチャーよ!」
リリナがまた頷いたのを見て、シュフレが自己紹介をしようと口を開いた。
「僕はシュフレ、職業は剣士です。」
すると、リリナの口が軽く弧を描いた。
「…ほう?」
小さな声だったが、シュフレは聞き逃さなかった。
「リリナさん、どうかしましたか?」
笑顔で問うシュフレを見て、リリナは笑った。
「あはは、なんでもないわ。」
「シュフレ?どうしたんだい?」
不思議に思ったルエルがシュフレに問う。
「いや、なんでもないよ。」
シュフレがそう答えたところで、ヤヨイとサツキが戻ってきた。
「リリナ様、お待たせいたしました。」
ヤヨイが一礼すると、サツキも慌てて頭を下げた。
「どうぞ!召し上がってください!」
「本日は先日いただいたブルーベリーティーでございます。お茶請けにクッキーもどうぞ。」
サツキがテーブルにティーカップとクッキーを置いていく間に、ヤヨイが説明をする。
説明が終わると再び一例してサツキを手伝うヤヨイにリリナはありがとうとお礼を言った。
「ありがとうヤヨイ。…二人ともとてもいい子なの、ぜひ仲良くしてあげてね。」
「もちろんです!」
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「吟遊詩人は最強を謳う」
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朱秋るい