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6話 声の掠れた歌姫

それからしばらく歩き、ルエルたちは無事にアングレカムの門に辿り着いていた。


まだ祭りまで3日ほどあるが、街は美しく飾られていた。



「わぁ、ここがアングレカム…!『ふんすい祭』の舞台か…!!街も人も賑やかで俺もワクワクしてきたよ!」


ルエルはキョロキョロと辺りを見回して言った。



「はしゃぎすぎだよ、ルエル。ちゃんと前を見ないとぶつかっちゃうよ?」


「そうよ、誰かがぶつかってルエルが怪我したらどうするの?」



シュフレが落ちついた声でルエルを注意する。


ヒカゲも続いてルエルを注意する。




トン



「あっ」

「ん?」


「ほら、言ったそばから。」



前から何かがルエルにぶつかった。



「ルエル、大丈夫?」


ヒカゲがルエルに近寄り声をかける。



「ありがとう、大丈夫だよ。」



ルエルが答えると、ぶつかってきた人が頭を下げた。



「あ、あの…す、みませ、ん…」

「ああ、こちらこそごめんね。前を見てなかった。」



ぶつかってきたのは10代半ばくらいの少女だった。


この辺りでは珍しい巫女服を着ている。



「君は…?巫女服を着ているけど…ここの人なのかい?」

「こらルエル、そう人様の個人情報を聞くのは感心しないよ。」

「あ、そうだね。ごめんね…忘れて。」


シュフレがルエルの頭を小突く。

少女は慌てて手を振る。


「い、いえ、大丈夫、です。別、に、知られ、ても、問題ない、ので…」


「?あなた大丈夫?話しにくそうよ?」


ヒカゲが不思議そうに問いかける。



「最近、喉の、調子、が悪く、て、声、が出に、くく、て…すみ、ません。」


確かに、少女の声は少しかすれていた。


シュフレはしばらく考えた後、紙とペンを取り出した。



「はい、無理に声を出すと悪化してしまうかもしれないからね。」


少女はペコリと頭を下げ紙とペンを受け取った。



少女はスラスラと紙に書いてルエルたちに見せた。

少女の字はまだまだ子供の面影が残る見た目に反し、達筆で綺麗だった。



[私の名前はサツキ。姓はありません。ここの街で巫女をさせてもらっています。数日後の『ふんすい祭』でも、歌を歌い繁栄をお祈りする役目を頂いておりました。]


「サツキ…いい名前だね。君の歌はさぞかし綺麗なんだろうね。」


ルエルが言うと、サツキはまた頭を下げた。

すると、ルエルはそうだと声を上げ、口を開いた。


「こっちも自己紹介をしようか。俺はルエル、吟遊詩人さ。」

「僕はシュフレ、剣士をしているよ。」

「私はヒカゲ!妖狐でありアーチャーよ!」


ルエルたちが名乗ると、少女はしばらくそれらの名前を頭で反芻した後、笑顔で頷いた。


「覚えてくれたかな?ありがとう。……えっと、実は俺たち、この街初めてなんだ。だから『ふんすい祭』やこの街について教えてほしいんだけど…いいかな?」



少女はコクコクと頷き、再び紙に書き始めようとする。


すると、ルエルたちの後ろから声が聞こえた。



「サツキ!ここにいたのか!探したんだぞ…!リリナ様がお呼びだ…!」


「えっ!リ、リナ様、が!?今、行き、

ます、ヤヨ、イ兄、様!」


声の正体はサツキの兄のようだった。

サツキは急いでルエルたちに頭を下げ、兄に駆け寄った。



「わ、私の家、は、あの、教会、

です…!すみ、ま、せんが、また、明日い、らして、くださ、い…!それで、は…!」



慌てて駆けていく二人を見送りながら、シュフレがぽつりと零す。


「あのお兄さんから微かに魔物の魔力を感じる。僕の勘違いならいいんだけど、一応注意しておいた方がいいかも。」

「わかった。じゃあ明日、教会に行ってみようか。」

「了解!ひとまず宿を探さなくちゃね!」

「そうだね。旅の疲れもあるし、ゆっくり休もう。」


ルエルが頷き、ヒカゲが提案する。



まずは宿を探さなくては、ルエルたちは街を歩き出した。

ご閲覧いただきありがとうございます!


少しでも「面白い!」「続きが読みたい!」と感じて頂けましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆で応援していただけたら嬉しいです。


「吟遊詩人は最強を謳う」

を、これからもよろしくお願いします!



朱秋るい

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