「人の時代、魔動機」
――世界『フォラストリエ』は神が創りし幻想の地。
と、嘗て此の地を統べた者は述べた。
其の頃より暦が生まれ、人の時代の始まりを告げた。
人の時代は――人は、それからの凡そ1100年の間、ごく緩やかに文明を成長させていく。
水や電気の確保、馬車等の移動手段、生活を豊かにする技術のあらゆるを手に入れていった。
しかし、それはまだ近年の話。
時代の始まりには既に、人は智慧や叡智を深め、物事を想像し創生するだけの技術があったにも拘わらずだ。
つまり遅すぎる成長だといえる。
理由があった。
文明がごく緩やかにしか成長できない理由が。
人の成長を妨げる存在が此の地にはいるのだ。
人はその存在を魔獣と呼ぶ。
魔獣は他の生物と違って人間のみを襲い。訳もなく人の築き上げた村や町、技術を何処からともなく突然現れては破壊していく。
F.S.1100年代以前の人は魔獣の圧倒的な力に対抗する術がなく、ただ蹂躙されるしかなかった。
これが文明の成長が遅れた所以だ。
だが、のちのF.S.1150年。人は大いなる技術を生み出した。
魔動機――世界に遍く魔力を動力源として機械を作動させるための機械。
この技術は世界に、人に、偉大な革命を起こし。あらゆる物に運用しては、人は自らの文明を加速度的に発展させていった。
とりわけ対魔獣用として生み出された武器兵器の数々は、これまでの人と魔獣の立場を逆転させることとなり、なにより急激に文明を発展させる要因となった。
もはや魔獣は人の強大な脅威ではなくなった。
代わりに人の敵は人ともなったが……。それはまた別の話だ。
そして150年後の現在。人の築き上げし国家の一つであるロスティア共和国にて、強大ではなくなったがされど脅威を知らしめる魔獣と、魔動機を用いて戦う者達がいる。
日夜問わず日々、ある者は人の為と、ある者は家族の為と、ある者は金の為と、理由様々に魔獣を狩っている者達がいる。
そんな彼らのことを此の国では駆除屋と呼ぶらしく。
彼らは今日も、この広大な大地――。
その上空を魔動機を用いた船で翔けては今まさに、魔獣の群れを狩らんとしていた。