008 2人と復活と
すみません。投稿遅れました。
(な!?結局お前は逃げなかったのか?この馬鹿が。)
(あはは、でも、お陰でまた一緒に居られるじゃない?)
(あのな、そーゆー問題じゃないだろ。ここまでポンコツとは思わなかったぜ。)
(あ、ひどーい。何それ。そこまで言う事ないじゃな〜い。)
(なるほどのぉ。お主達は日本と言う異世界から、転生してきたと言うわけじゃな?)
しれっと村長が会話に加わる。
(しかし、色々な異世界からの転生者は何人か知っておるが、1つの身体に2人分の魂が入ってるのは聞いた事がないわい。目の当たりにしても未だに信じられないのぉ。話しを聞く限りは、死ぬ直前の2人の望みが叶えられたと言う事じゃの。そして、2人同時に刺されて、これまた同時に魂が抜けて、1つになったと考えれば、あるいは・・・)
(待って下さい。私は確かに朔夜くんと一緒になりたいと言いましたけど、同じ身体に一緒って意味で言った訳ではないですよぉ。)
(それはあれだ、ほら。ポンコツ属性が働いたとか?)
(もう〜。朔夜くんは私をなんだと思ってるの?)
(いや、それ以外考えられないだろ?)
(・・・知らないっ。それよりも、私、あ、プリシアが魔法を使えたのは、朔夜くんのせいなのね?)
(せいって、お陰と言って欲しいものだな。ファイヤーボールをぶっ放した感覚がまだあるぜ?きもちよかったな。)
(そのせ・い・で、人を殺してしまったけどね。)
(このアマ。また、せいって言いやがった。でも、そのお・か・げ・で、自分の身を守れただろーが。)
(それはそうだけど。でも、人を殺すのは凄い精神的苦痛なんだからね?)
(・・・それじゃよ。)
しばらく、痴話喧嘩を聞いていた長老が再び会話に加わった。
(アストラルサイドに入って絡まった糸を解いておるとじゃな、不意に本人も気付かない事や記憶が垣間見える時があるのじゃよ。)
(そして、プリシア殿が突然魔法を使えなくなった原因が見えたのじゃよ。それが、その人を殺した事による精神的プレッシャーと罪悪感じゃ、転生前に居た世界は人を殺す事のない平和な所だったのじゃろ?それなら納得じゃよ。それと、アストラルサイドの糸があんなにたくさんあってがんじがらめの理由もじゃな。)
(どーゆー事だ?)
(どーもこーも、お主達2人分の量が見事に絡まってたからじゃ。解くのも2倍じゃぞ?ほんとにここまでくるのに、厄介だったんじゃからな?)
(そりゃ、ごくろーさんでした。)
(なんか、軽いのぉ?さて、原因究明できたし、そろそろ戻るかの?)
(お、おい!2人が戻ったら、俺はどーなるんだ?また、プリシアと言う映画を観なきゃいけなくなるんじゃねーだろーな?)
(そのエイガと言うのが何なのかは解らんのじゃが、戻ったら試したい事があるんじゃ。多分平気じゃろう。)
(ほんとか?ほんとにほんとか?)
(うむ、多分平気じゃ。では、2人はそのままでここで待っておるのじゃぞ?)
村長は、ではな。と言い手を振りながら消えて言った。
「・・・っと。戻ったぞい。」
「あ〜。お帰りぃ。爺ちゃん。アストラルサイドに潜入したって聞いて、ティナちゃんは心配したんだかんね。」
「おぉ、ティナ戻ってきたんじゃな?して、帝国の動きはどうじゃった?」
プリシアのアストラルサイドから帰還した村長に声をかけてきたのは、村長の孫。髪は桃色で背が低く、紫装束を纏っている。スキルは隠密だ。
「この娘がプリシアちゃんだね?ずいぶん可愛いコだねぇ?あ、報告だけど、帝国自体に大きな動きはまだ無かったよ。ガルド村を攻めたのは、事実確認と軽い牽制のつもりだったみたい。」
「それは僥倖じゃわい。てっきり本格的に攻めて来たと思ったからの。今、来られてはちと不味いからの。」
「そうだよねぇ。って、早くプリシアちゃんを起こしてあげなきゃじゃない?可哀想だよ。」
「そうじゃな。」
そう言うと、村長はプリシアの額に指先を添えて、魔力を注入した。
「ん?えっと。・・・村長さん?」
「おぉ、おぉ起きたんじゃな?気分はどうじゃ?」
「あ、はい。大丈夫です。あんな最悪な気分はもう味わいたくないですね。」
「ほんとだよねぇ?ティナちゃんもトラウマレベルだよ。」
「えっと、あなたは?」
ティナに気がついたプリシアが村長に聞いた。
「おっと、自己紹介がまだだったねぇ。私はティナ=アドレイド。そこにいる村長、ウル=アドレイドの孫です。」
(村長さんの名前ってウルさんて言うのね。知らなかったわ。)
そう言えば、村長の名前は知らなかったなと思い、聞けて良かったとプリシアは安堵した。
「で、村長。どうでした?」
ここまで完全に空気を読んで沈黙を守っていたゲイルがウルに声をかけた。
「そうじゃな。驚かんで聞いてくれ。と言ってもワシもまだ信じられない事なんじゃが・・・。」
村長こと、ウルは今まであったプリシアの事を話し始めた。
「そんな。そんな事がありえる?」
「うむ。ワシも驚いておる。そして、ちょっと試してみたい事があるんじゃ。」
「それってもしかして、朔夜くんの事ですか?」
雪乃がそう言うと、ウルは首を縦に振って肯定する。
「プリシア殿、いや、ユキノ殿。お主の中に何か感じんか?そうじゃな、わずかな違和感みたいなものを。」
「違和感ですか?ちょっと待って下さいね。」
雪乃は目を瞑り、両手を胸に当て集中してみる。
すると、違和感とは言い難いが、小さな確かに何があると感じた。
「違和感と言いますか、あります。とても小さくて、そして暖かい。」
「それじゃ。その感覚を覚えておくのじゃぞ?」
「は、はい」
「・・・サクヤ殿。聞こえておるじゃろ?」
当然、朔夜からの返事はない。
「これから、ユキノ殿が思った事を同時に思ってもらう。シンクロってヤツじゃな。」
ウルは朔夜が聞きいているのを当然のものとして続ける。
「よし、ではユキノ殿はそのモノを強く大きく感じるまで集中して、そしてサクヤ殿に話し掛ける様な感じで全てを委ねてみるのじゃ。そして、お互いに交換する事を了承してみるのじゃ。」
「・・・朔夜、交換するよ。」
(・・・雪乃、交換するぜ。)
すると、突如辺りは光に包まれ、プリシアのシルエットが変わる。背は伸びて、髪は短くなって身体は筋肉質に。
やがて、光はゆっくり収まり周りの人の目も開けられるようになった。
「わは、わはははは。俺様ふっか〜つ。」
「お主はどこの魔王じゃ。全く。」
ウルは朔夜の一言目に呆れて、他の連中はその状況に追いつかない。
「な、何が起こった?夢でも見てるのか?」
「こんな事が本当にあるのか?信じられん。」
「・・・」
ゲイル率いるガルド村の人達は今の状況に理解が追いつかない。
「何これ!すっご〜い。ティナちゃんこんなの初めて。」
聞き様によってはアレなセリフをリリィは吐く。
「ふむ。どうやら、上手く言ったようじゃの?」
「おい、じじぃ。俺が出てきたって事は雪乃は今まで俺が居たあっちに居るって事なんだな?」
「じ、じじぃ。・・・そーじゃな、そーなる。」
「なんとかなんねーのか?あそこは孤独なんだ。兎に角孤独なんだ。本当に、孤独でどーにかなっちまうかもしれない位孤独感に細悩まされる。雪乃にはあんな思いさせたくない。」
「優しいのじゃな、サクヤ殿は。」
「うるせぇ。何でもいいから、何とかしろ。」
「少し落ち着くのじゃ。考えが無いわけでもない。」
「本当か?どーすりゃいい?」
「お主が中に居た時に聞いていたな?まずは、自分の中に居るユキノ殿を感じるのじゃ。」
「あ?あの、違和感なんちゃら言ってたやつか?」
「あぁ、それじゃ。」
「やってみる。」
朔夜は目を瞑り、自分の中にいる筈の雪乃を探してみる。
「じじぃ。あったぞ。」
「そしたら、そのまま身を委ね、話しかけてみるのじゃ。」
「雪乃、雪乃、聞こえるか?聞こえたら、返事をしろ!」
数分話しかけるが、返事はない。
「雪乃、雪乃。・・・おい、じじぃ。ダメじゃねーか。」
「ふむ。では、ワシの魔力を混ぜてみるかの?」
「てめっ!なんで最初っからそれをしねぇ?」
「もし繋がった時、本人の力だけの魔力の方がより強く安定するからじゃよ。」
「そーかよ!んじゃ早く魔力を寄越せ。」
「お主と言う奴は・・・。では行くぞい。」
ウルは朔夜の腕を掴むと、魔力を流して言った。
「雪乃、雪乃。頼む、返事をくれ!」
【れ。・・くや・・ん・・える・・】
「!!なんだ?雪乃、電波がわりーぞ。アンテナがねーのか?」
【・・ね・・・ないんだ・・からね。】
「もう少しだ。頑張れ。」
【あのね、電波って・・・。地球じゃないんだか
ら、そんな訳ないんだからね?】
「おぉ、聞こえた。聞こえたぞ。」
雪乃の声は朔夜の頭の中に聞こえているだけなので、周りからしてみれば、朔夜が独り言を言っている様にしか見えない。
「・・・世の中には色んな人がいるのを知っているよ。だから、ティナちゃんはサクヤ君を否定しないよ。」
朔夜はティナに変人のレッテルを貼られた。
ウル以外の人も朔夜にどう接していいか悩んでる。パピィに至っては、丸くなって寝ていた。
「おい!そのおかしな奴を見るような目はやめろ!」
そんな朔夜の言葉が村中に響いたとか響いてないとか。