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007 雪乃と朔夜と

少しだけ残酷なシーンがあります。ご注意下さい。

ここは、日本のとある街。1人の少女と1人の少年が居た。名を東雲雪乃と椿朔夜だ。

雪乃は黒髪で、性格も良く容姿端麗、頭脳明晰の高校生。あまりに完璧な事から周りからは浮いている。しかも、高嶺の花過ぎて誰からも声を掛けられない。そう、幼なじみの1人の少年を除いて。


「よう。雪乃。今日も1人で下校か?」

「あ、朔夜。でっかいお世話ですよ〜だ。」

「しかし、ほんとに誰かと一緒に居るの見た事ねーな。聞いた所によると【何か完璧過ぎて近づき辛い】【オーラが半端ない】ってみんな言うけど、俺からしたらこんなポンコツなヤツはそうは居ねーと思うけど?」


そう。いくら性格良くて容姿端麗で頭脳明晰でも、唯一の欠点。東雲雪乃と言う少女はポンコツ属性だったのだ。その為、朔夜から見れば確かに可愛いと思うが、近づきにくいと言う事は無かった。

確かに小さい頃から一緒に居た為、免疫があったのも事実なのだが。


「う、うるさいわねぇ。それは認めたくないけど、否定が出来ないのが悔しいわね。」

「っと!ほら、そう言ってる側から赤信号で横断しようとしてるんじゃねーよ?轢かれてーのか?」


そう言うと、朔夜は雪乃の手を取って引き寄せる。


「あ、ありがとう。まだ、この歳で死にたくないわね。」

「みんなこの姿を見てれば、女神を見る様な真似はしないと思うのだがな。」

「・・・仕方ないじゃない。話かけてすらしてくれないのだもの。」

「お前から話しかけたらどーだ?」

「それもしてるけど、みんなガチガチになって、【はい。いいえ。わかりました。】とかの一言で会話が終わってしまうのよ。」

「なんだそりゃ?そんなんじゃ、ほんとに教祖様になっちまうぞ?」

「や、やめて〜。」

「はっはっは。そー言えば、今日は仕事か?」

「!!そうよっ。今日はこれから雑誌の撮影があったんだったわ。こんな事してる場合じゃなっ!きゃっ!?」


そう。容姿端麗のJK。周りの大人が放って置くはずもなく、スカウトをきっかけに芸能界に入っていたのだ。


「よく、何もない所で躓けるものだな。逆に尊敬するよ。」

「何の逆ですか、何の。じゃあ、私はこっちだから・・・。」


じゃあね。と言おうとした所で、雪乃に人影が覆い被さる。


「はぁ、はぁ、はぁ。や、やっと会えたんだな。ぼ、僕の雪乃ちゃん。しゃ、写真やTVで見るより、か、可愛いんだな。はぁ、はぁ。は、早くボクの部屋へ来るんだな。」


脂ぎって髪もボサボサの丸メガネで太ったいかにもな怪しい男が雪乃に近寄った。それを見た朔夜が、間に入り雪乃を庇う。


「 おい。何を言ってやがる。なんで、雪乃がお前の部屋に行かなきゃなんねーんだ。寝言は寝てから言え。」

「な、なんなんだな?お前は。ぼ、ボクの雪乃ちゃんを呼び捨てになんか、さ、させないんだな。はぁ、はぁ、ゆ、雪乃ちゃんはボクのお嫁さんなんだな。はぁはぁ、そ、そして、あんな事や、こ、こんな事たくさん、気持ち良いこ、ぶはぁっっっ!」


最後まで言い切らないうちに、朔夜は殴った。

そして、男は背中から倒れた。


「さ、朔夜くん。いきなり殴っちゃダメだよ。そりゃあ、・・・正直気持ち悪いと思うけど。ファンなんでしょうから。」

「あ?馬鹿かお前は!ファンだったら、お嫁さんにするって言うまでだ。それ以降は思っても口にはしねーよ?」

「ほ、本当に、な、なんなんだな。お前は。

あ、そ、そうか、わ、わかったんだな。こ、これは、きっと、か、神様が、ボクに与えた試練なんだな?

こ、この男をたおして、ゆ、雪乃ちゃんを手にいれろと言う事なんだな?」

「な?あんな事ほざくヤツが、ファンなワケねーだろ。」

「ど、どーしよ?朔夜くん。警察に電話した方が良いかな?」

「あ?必要ねーだろ?あんなヤツ。俺1人で楽勝だ。」

「だから、暴力はダメだってば。」

「じゃあ、どーしろと?」

「ぼ、ボクの前で、い、イチャつくんじゃ、な、ないんだな。ゆ、許さないんだな。」

「こいつは何を言ってるんだ?」

「わ、わかんないけど、本当に朔夜1人で大丈夫?」

「こんな変態に俺がどーにかされると本気で思ってるのか?」

「そうは思わないけど、万が一ってあるでしょう?」

「万が一も億が一もあるわけねーよ。」

「だ、たから、イチャつくんじゃないんだな。ぼ、ボクを馬鹿にするのも、た、大概に、す、するんだな。」


男はそう言いながら、どこからともなく、刃渡り20センチ位のナイフを出した。


「!?馬鹿かてめー。そんなん、出すんじゃねーよ。洒落にならねーだろーが。」

「しゃ、洒落じゃないんだな。ゆ、雪乃ちゃんが僕のお嫁さんになるのは、け、決定してるんだな。だ、だから、この試練をの、乗り越えるんだな。」

「どー考えても頭おかしいだろうてめー」

「す、少し、う、うるさいんだな。も、もう死ぬんだな、」

「朔夜くん。やっぱり警察に電話するね。」


雪乃は朔夜の返事を待たずに電話をし始めた。

男もナイフを両手に持って朔夜に突進してきた。


「ほんとに、刺しに来やがった。」

「お、お前をこ、殺してゆ、雪乃ちゃんを手にいれるんだな。」

「だが、遅い。」


朔夜はそれを簡単に避ける。

刺す為に突進。それを避ける。その繰り返しが数分続いた。


「はぁはぁ。い、いい加減あ、諦めて欲しいんだな。」

「馬鹿やろう。それはこっちの台詞だ。」

「な、なら、これならど、どーなんだな?」


男は狙いを電話してる雪乃に変えて突進した。


「!!」


朔夜は完全に意表を突かれた。

だが、一瞬遅れたとは言え、雪乃の方に走り出した。


「ですから、今、ナイフを持った男に幼なじみが襲われてるんです。・・・ええ、そうなんです。

場所は・・・えっ!?」


雪乃は男がナイフを振りかぶって迫ってきたのを確認すると、思わず目を瞑ってしまった。

しかし、数秒経っても何も起こらず恐る恐る目を開けて見ると、向かって来た男は何故か雪乃に背を向けていた。そして、朔夜が来る方に走り出した。


「や、やっぱりゆ、雪乃ちゃんをお、追ってくるとお、思ったんだな。」


そう。朔夜を引きつけた所で、急に踵を返して切りつけた。


「ぼ、僕がゆ、雪乃ちゃんを傷つけるわ、ワケないんだな。」


「!!そう来るか。」


気がついた時にはもう、ナイフが朔夜の腹に刺さっていた。


「!!!」

「・・・マジか・よ。」

「や、やったんだな。試練を乗り越えたんだな。これで雪乃ちゃんはぼ、ボクのモノなんだな。あ、あのカラダをす、好き放題で、できるんだな。」



「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


刺されたのを目撃した雪乃は悲鳴を上げた。そして数メートル先の朔夜に駆けつけて、膝をつき、朔夜の上半身を抱き上げた。


「朔夜、朔夜、さくやぁ。」

「は、はは。やられちまった。は、早く逃げろ。情けない事にもう、動けそうもない。」

「馬鹿なの?そんな事できる訳ないでしょう?今、救急車を呼ぶから」

「馬鹿はお前だ。そんなのは良いから、早く逃げろ。」

「だから、そんな事は・・・。」

「だ、だから、い、いちいちイチャつくんじゃな、ないんだな。もうそ、その男はし、死ぬんだな。は、早くぼ、ボクの所へ来るんだな。」

「いやぁぁぁぁ。触らないで下さい。あっちに行って下さい。・・・さくや、さくや、さくやぁ。」

「ぼ、ぼくと言う彼氏がい、居るのにほ、他の男の名前を呼ぶとはと、とんだび、ビッチなんだな。か、可愛さ余って憎さ百倍とはよ、良く言ったものなんだな。」

「さくやぁ、さくやぁ、さくやぁ、さくやぁ」

「・・・も、もういいんだな。こんなび、ビッチはこ、こっちからお、お断りなんだな。ぼ、ボクを誑かすび、ビッチは死んでお詫びするんだな。」


男は雪乃を目掛けてナイフを振りかぶった。


「!!!」


「雪乃は殺らせない。」


朔夜が、重体の身体に鞭打って雪乃を庇う。


「さくや?何をやってるの?」

「は!とんだ言い草だな。見た通り雪乃を庇ってるんだが?」

「何馬鹿な事言ってるの?もう、ヤだよ。ね、もうこんな事はやめて帰ろう?今日は仕事も休むから、一緒にかえろうよぉぅ」

「・・・そうだな。俺も今日は疲れた。一緒に帰るか。」

「うん、うん。一緒にかえろう。」


(俺もここまでか。こんなヤツに殺されるのなんて、癪だな。次生まれ変わるなら、雪乃を絶対守れる様な魔法かなんかが使える人生がいいな。)


雪乃は冷たくなっていく朔夜を抱き締めた。


「ま、またぼ、ボクの前でいイチャつくんだな。いい加減にす、するんだな。」


男は雪乃の背後に立つと、ゆっくりとその手のナイフを突き刺した。


「!!」

「ごめん・・・ね。さくや、せっかくかばってくれたのに、わたしもここまでみたい。」


(あぁ、次もまた生まれ変わる事があったら、また朔夜と一緒になりたいな。)



そんな2人の心情など知らない男は雪乃と朔夜を変わりばんこに何度も何度も何度も何度も何度もナイフで滅多刺しにしていた。




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