005 コッカラ村と原因と
「そうか、そんな事があったのか。」
コッカラ村に入るとすぐにゲイルに会えた。
そして、いままでの経緯を話すと、思う所があるのかゲイルはそんな一言を言った。
「しかし、フェンリルの仔とはのぉ。大丈夫かのぉ。」
そう言ったのは、この村「コッカラ村」の村長だ。
村長と言うだけあって、見るからに村長村長している爺さんだ。因みに今いる場所も村長宅だったりする。
集まっているメンバーは、村長、ゲイル、プリシア、フェンリルのパピィ、それとプリシアに暴走ファイアボールをかまされたガルド村の村人3人だ。因みにセフィロスはここにはいない。村までたどり着くとすぐに、「また、縁があったら会えるだろう。」と言って旅立った。
「大丈夫ですって。・・・ね?パピィ?」
「わふ!」
尻尾をブンブン振りながら、プリシアの頰を舐めている。
「確かに、人の言葉を理解する個体もいる様じゃが、リスクが高いのぉ」
「それはそうと、プリシアが魔法を使った時の話しだが?」
突如ゲイルが話しを変えてきた。
「ああ、そうですぜ。ゲイル様からも言ってやってくだせぇ。なんせ、俺、殺されかけたんですからね。」
「殺されかけたって。人聞きが悪いですよぉ。」
プリシアはそんな事を言いつつもシュンとしている。
「どれ、ひとつファイヤーボールでも、掌に作ってもらえんかのぉ?」
「実は、まだ制御する自信がないので家の中だと、不安なのですが。」
「ほっほ。それでも良い。やってもらえんかのぉ?」
「家を壊しても怒らないで下さいね?・・・では。」
そうすると、プリシアは右手に集中し始めた。
が、相変わらず右手には何の変化も感じない。
「・・・やっぱり駄目みたいです。何も感じません。」
「やっぱりとはどーゆー事じゃ?魔法を使えるんじゃろう?」
「実はゲイルさん所の村を出てから、使えないんですよ。」
「ふむ。魔法はアストラルサイドとの因果が深いからのぉ。」
「アストラルサイド?」
「アストラルサイド・・・つまり精神的世界で、その世界の色によって使える魔法の種類が決まってくる。分かりやすく言うと火や水、光や闇などだな。そして、その世界の広さによって魔法の威力やどれだけ使い続けられるかが決まってくるのだよ。」
ゲイルさんがそんな説明をしてくれたが、いまいち理解出来ない。
「すぐに理解は出来ないさ。それを完全に理解すれば、最強の魔法使いになれるはずだからな。まぁ、今はそんな世界があると思ってもらえればいい。」
「はぁ。分かりました。それで、私はどうしたらいいのでしょうか?」
「そうさのぉ。まず、使えなくなった原因を見つける事さのぉ。さっきも言うたが、魔法を使うにはアストラルサイド(深層心理、精神世界)が関係しているからのぉ。精神的な事が原因のはずなんじゃがのぉ。」
「例えば、何か精神的ショックがあったのではないかね?」
ゲイルにそう言われるが、プリシアには思いつかない。
「・・・すみません。全く思いつかないです。」
「ふむ。では、プリシア殿のアストラルサイドに直接干渉してみるかのぉ?」
「そんな事が出来るのですか?」
「ワシの魔法でなら出来るが、精神に負担を掛けるから、プリシア殿はかなり辛い思いをするのぉ。」
「辛いとは?」
「直接、魂を掴まれる感じかのぉ?絡まった糸を一本一本解いていくイメージじゃのぅ。」
「こわいんですけど!」
「何、違和感があって気持ち悪いだけじゃ、痛みは無いわい。」
「・・・こわいんですけど!」
「んじゃ、いくぞい!」
数秒前と同じセリフを村長は華麗にスルーしてプリシアに眠りの魔法をかけた。
直後、プリシアは意識を失った。
「施術中はわしも意識が無い状態になるが心配せんでええぞい。1日、2日で戻れるじゃろうて。では行ってくる。」
周りに居る人達にそう言うと、村長も意識を手放した。
・・・・・。
(ここは?なんか、ふわふわしてる)
(自分が自分でないみたい)
(私は今、どーすればいいのかな)
(う?何この感覚・・・うえぇぇぇ)
(気持ち悪い気持ちわるいきもちわるいキモチワルイキもちワるいキモちわルイうぇぇぇぇぇ)
・・・・・。
(ふむ、これはまた思った以上に厄介じゃのう。少し時間がかかりそうじゃわい。プリシア殿は大丈夫かのぅ。精神世界と言っても、意識を手放してしまえば、少しは楽になるじゃろうが、それまでは辛かろうなぁ。)