004 魔物とスランプと
翌朝目を覚ますと、辺りにセフィロスは居なかった。
「・・・セフィさん?」
プリシアはさらに周りを見渡す。
「どこにいったのかな?」
プリシアは立ち上がり、川の方へ歩き出した。
しばらくすると、セフィロスの後ろ姿が見えた。
「セフィさん、こんな所に居た・・ので・・・す・・か?」
声はかけたものの、セフィロスは3匹の青み掛かった毛並みの狼と戦っていたのだ。
そのプリシアの声に反応したのは、セフィロスではなく1匹の狼だった。
その狼はセフィロスの隙をついて、プリシアに襲い掛かった。
「・・・しまった。プリン逃げろ。」
「きゃあぁぁぁ。こっちに来ないでぇ。」
そう言いつつもプリシアは、ファイヤーボールを撃とうとした。
・・・が、魔法は発動しなかった。
「うそ?なんで?」
「それならフレアニードル。」
やっぱり発動しない。前回魔法を行使した時は、手にエネルギーが集まってくるのが感じられたが、今は全くそれがない。
「!!なんで・・・」
セフィロスは2匹の狼に手いっぱいだったが、一瞬の隙をついてプリシアの隣に駆け付けた。
・・・いや、瞬間移動したのだ。少なくともプリシアにはそう見えた。
それもそうだろう。プリシアに襲い掛かって来ている狼よりも早く、プリシアの所に来たのだから。
「セフィさん、いまのは?」
「詳しい説明は後だ。」
「まずは、この狼たちを倒す。」
「はい。」
「うりゃぁぁぁ。」
そう気合いを入れると、剣を振りかぶって、飛びかかってきた狼をそのまま両断した。
「まず1匹ぃ。」
すかさず、2匹の元へ駆けて行って剣を横に薙ぎ払う。
2匹の狼たちは後ろへ飛んで回避したが、なぜかセフィロスは狼の目の前に居た。
「まただ。」
プリシアはそう呟いた。
あれはセフィさんの魔法かな?そんな事をなんとなく思った。
「これで終わりだ。」
セフィロスは剣を振り下ろすと、1匹の狼を切り裂き、そのままの挙動で剣を振り上げて最後の狼をやっつけた。
「ふいぃぃ。久しぶりに焦ったよ。」
もちろん、プリシアが襲われた事に対しで、狼に焦ったのではない。
「セフィさん、ありがとうございます。また助けられてしまいましたね。」
「ケガはないかい?まさか、プリンが顔を出すとは思わなかったよ。」
「そうですよね。野営地からけっこう離れてますもんね、ここ。」
「それよりこの狼たちはなんですか?・・・それにさっきのセフィさんの移動の速さは魔法ですか?」
「この狼たちはフェンリルと言う魔物なんだよ。それと、速さの秘密は縮地法という、スキルさ。俺は魔法は使えない。」
(この世界には魔物がいるの?・・・まあ、魔法がある世界だものね、魔物がいても不思議ではないのかな?本当にファンタジーだわ。)
「レベルが高い個体だと風魔法も使ってくる魔物なんだけど、こいつらは使って来なかったね。」
「セフィさんが使わせない位、強いだけなんじゃ?」
「そんなことはないよ。」
「・・・きゅうん」
「?・・・なんだ?」
「何かの鳴き声ですかね?」
「あっちから聞こえる。」
プリシアたちは鳴き声が聞こえた辺りを見回すとそこには、1匹のフェンリルの幼生体がいた。
「可愛いぃぃぃ。もふもふしてるぅ。」
「さっきのフェンリルの子供かな?」
セフィロスはそう言いながら、スチャっと剣を構えた。
「セフィさん?」
「このまま、放っといても長くもたないし、見た目は可愛くても魔物だからね。可哀想だが、・・・」
「セフィさん。何とかなりませんか?こんな小さな仔なのに。」
「そうは言ってもな、親に育てられなかった魔物は、餌もとれずそのうち餓死するし、仮に成体になったとしても、親に何も教えられてないから、人の手に負えなくなるおそれもあるんだよ。」
「だったら、私がこの仔に色々教えます。」
「何を馬鹿なことを。確かにテイマーと言う職業もあるにはあるが、色々と難しくて、なれるのは一握りなんだよ?」
「それでも、この仔は殺させません。」
プリシアの目は本気だ。気迫だけなら、そこらの剣士を凌駕しそうだ。
「・・・わかった。そこまで言うなら、出来るとこまでやってみるといい。けれど、少しでも危険と判断したら、その時は・・・。」
「ありがとうございます。今はそれで充分です。」
「・・・全く、プリンには敵わないな。」
早速、プリンは幼生体を抱き上げようとした。
「痛っ。」
「プリン?」
手の甲に切り傷ができたのだ。
「今の、この仔が?」
「今のは、風魔法?・・・ばかな。こんな幼生体が使えるのか?
プリン、怪我は大丈夫か?やっぱりテイムするのは危険なんじゃ?」
「大丈夫です。この仔は、私が面倒みます。」
プリシアは、ゆっくり、ゆっくりと幼生体のあごの下を目掛けて手を近づけた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから・・・ね?」
そしてあごの下に触れようとしたその時、幼生体の口がプリシアの手にロックオン!
「!?」
しかし、ガブリではなく、ペロペロ。
「・・・かわいい」
「・・・全く、ほんとにプリンには敵わないな。」
「ふふ・・・そのセリフ。さっきも聞きましたよ?」
プリシアは幼生体にぺろぺろされながら、優しく抱き上げた。
「名前をつけてあげなきゃ。」
「ペロでいいんじゃないか?」
「なんですか、その安易な名前は。」
「そうかぁ?良い名前だと思うんだけどな?」
「マジメにお願いします。」
「がるる・・・」
「ほら、この仔も抗議してるじゃありませんか。」
「そんなばかな。言葉がわかるのか?」
「わかるんだよね?」
「ワフッ!」
「マジかよ。」
「よしっ。この仔の名前はパピィにしよう。」
プリシアがそう言うと、セフィロスはジト目をした。
「それも安易なんじゃ?」
「いいの。パピィに決めました。ね?パピィ?」
「ワフっ!」
「気に入った?いまから、君はパピィだよ。よろしくね。」
パピィは嬉しそうだ。尻尾をぶりゅんぶりゅんと振り回している。
「さて。一段落したし、そろそろコッカラ村に出発しようか。」
「そうですね。」
「でもその前に、フェンリル達を回収しないとな?」
「回収するんですか?」
「ああ、毛皮とか剥いで売れるし、牙とかそのほかにも素材になるしね。」
「なるほど。」
「ちょっと手伝ってくれないか?」
「手伝うのは構いませんが、やり方がわかりませんよ?」
「んじゃ、まずは…。」
セフィロスはゼロから細かい事まで色々と、教えて行った。
「そう、そう。上手いぞ。それをそうして、そっちは、あ、違う。そうじゃなく、うんたらかんたら…。」
「あ、結構難しいですね。これでいいのかな?・・・出来た。」
「よし、こんなものかな。これをマジックバックに入れれば完了だ。」
「そんな便利なカバンがあるんですね。」
「マジックバック知らないのか。結構メジャーだと思うんだけどな。」
プリシアは、「そうなんですか?」と言いながら、しょぼんとした。
「そんなにしょぼくれなくても。」
セフィロスは悪いことしたなと反省しつつも、どうしたらいいか、オロオロしてる。
「・・・もういいですから、先を急ぎましょう。」
「がう!」
「パピィまで・・・悪かったよ。」
セフィロスが、謝ると、では行くかと先を促した。
そうして、何度か小休憩を挟み数時間歩くとコッカラ村が見えて来た。
「プリン、見えて来たぞ!あれがコッカラ村だ。」
「やっと着いた。ゲイルさんはもう居るのかな?早く行きましょう。」
「わふ!」
そう言って、プリシアはセフィロスの腕を掴んで走り出すのだった。