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003 剣士と魔法の使用禁止と

「・・・ここは?テントの中??」


目を覚ましたプリシアは辺りを見回した。


「目を覚ましたかい?」

「⁉︎」

「驚かせてすまん。俺はセフィロス。見ての通り剣士さ。セフィとよんでくれ。」

「私はなぜここに?」

「覚えてないのかい?君は帝国兵に殺される所だったんだよ。」

「・・・あっ!?」

「思い出したみたいだね。昨夜、村の異変に気がついて行ってみたら、君が襲われてたので、助けたまでさ。」

「そうだったんですね。助けて下さってありがとうございます。」


そう言って、プリシアは頭を下げた。


「何、当たり前な事さ。礼はいらないよ。それより君の名前を教えてくれるかい?」

「私は、プリシア。訳あって、あの村に居ました。」

「プリシア・・・小さき者か。じゃあ、プリンだね。」

「プリンって・・・可愛い名前ですね。」


プリシアはクスっと笑った。


「・・・笑顔になったね。なら、もう大丈夫。これからどーするつもりだい?」


「あっ。そーだ、私『コッカラ村』って所に行かないと。そこで、待ち合わせしているの。」

「待ち合わせ?プリンの想い人かな?」

「残念ながら、そんな人じゃありません。」

「コッカラ村か、・・・んじゃ俺も行こうかな。」

「そんな・・・助けてもらった上に、一緒に来てくれるなんてご迷惑はお掛けできません。」

「何、いいさ、俺は行く宛もない旅の剣士だから、気の向くままにここまできたんだ。そして、それはこれからも変わらない。それに、女の子1人で心配だよ。」

「ありがとうございます。・・・セフィさん。」


こうして、プリシアはセフィロスとコッカラ村を目指して歩きだした。


「セフィさん、コッカラ村は遠いんですか?」

「順調に行けば、今夜は夜営して、明日の昼前には着くはずだよ。」

「そうなんですか。ゲイルさんは隣村って言ってたから、もっと近いかと思っていました。」

「ちょっと待って。今、ゲイルと言ったかい?」

「はい。」

「ゲイル=インゲート=ガルド?」

「はい。そうですけど?」

「そうか・・・。」

「あの?」

「いや、すまない。きにしないでくれ。・・・

そうか、あのゲイルか。」


それきり、セフィロスは黙ってしまった。

何か思う所があるようだが、とても聞き出せる雰囲気ではないので、プリシアも黙していた。


しばらく歩いてると、正面に1人男が立っている。

気にせず近づくと、その男が声を掛けてきた。


「ここは通行止めだ。通りたければ有り金全部だしな。」

「おかしいな?ここは私有地ではない筈だが?」

「ごちゃごちゃ言わず出せば痛い目に合わなくて済むぜ?」


声がした方を見ると、ぞろぞろと男達が出てきた。


「痛い目?・・・ってこんな目かい?」


そう言うなり、セフィロスは一閃を放った。その刹那、正面に居た男は気を失い倒れた。


「貴様。やりやがったな!やっちまえ!!」


などと、最早テンプレな展開なのだか、プリシアは驚愕していた。


「プリンは下がっていて。」

「・・・え?でも・・・。」

「いいから、いいから。弱い子を守るのが剣士の役目なんだから。」

「・・・わかりました。お気をつけて。」

「ありがとう。」


賊の1人が駆け込んできて、セフィロスの懐に入ろうとする。


「懐に入っちまえば、こっちのもんだ!死ね!!」

「それはどうかな?」

「何!?」


セフィロスは剣を引き抜こうとするが、それでは間に合わない。なので、剣を抜く動作をそのままに剣の柄を相手の鳩尾に当てた。


「かはっ!そんな馬鹿な。」


そして、そのまま意識を失って倒れた男の後ろから、間髪いれず数人の男達が襲ってきたが、まるでダンスをしているかの様な動きで相手の太刀筋を交わしていた。


「・・・セフィさんスゴイ。」


プリシアは誰に言うでもなく、心の声がもれた。

それほどまでに、華麗だったのだ。


もちろん、セフィロスはただただ避けていただけではなく、その隙間を縫って攻撃もしていた。

あっという間に、野盗達は倒された。


「女の子に残酷シーンは見せたくないからな、見逃してやる。さっさと失せろ。」

「貴様。この借りは必ず返すからな。覚えていろよ。・・・野郎ども、撤収だ。」


「・・・やれやれ、どうして三下の悪党達は捨て台詞がみんな一緒なんだ?」

「・・・セフィさん、何となくですがそれを言ってはダメな様な気がします。」

「そんなものか?」

「そんなものです。」


とプリシアが人差し指をピンと立てて、まるで先生が生徒に言い聞かす様な素振りでそう言うと、笑顔を見せた。それを見たセフィロスも、クスりと笑った。


それから、何事もなく順調にコッカラ村を目指していた。暫くしてセフィロスが


「プリン、そろそろ日も落ちる頃だから、野営が出来そうな所をみつけるよ?」

「はい、そうですね。洞穴とかあれば、嬉しいですけど。」

「そうだね。探してみよう。」


それから野営ポイントを探したが、残念ながら洞穴はみつからず、仕方なく大きな木のふもとに決めた。

近くに川もあったので、そこで水を汲んだり、魚を獲ったりして、やがて日が暮れてきたので焚き火を焚いた。


「そろそろ、魚が焼けるよ。」

「美味しそうですね。いただきます。」


プリシアは両手を合わせて、いただきますをした。その仕草を見ていたセフィロスが不思議そうな顔をしていた。それに気づいたプリシアが、セフィロスに声を掛けた。


「セフィさん?どうしました??」


軽く小首を傾げて聞いてくるプリシアにセフィロスは可愛いなと思いながらも、それを表情に出さず答えた。


「いただきますって初めて聞いたけど、もしかして、プリンの故郷の神様に対するお祈りかな?」


「お祈りではなく、作ってくれた人やそれに関わってくれた人に感謝の気持ちを表すんです。この場合は魚を獲ってくれたセフィさんや、魚に対しての命を感謝して''いただきます"って事なんですよ。

あれ?そうするとやっぱり、お祈りになるのかな?」


「そうなんだね。そう言えば、プリンはどこの出身なんだい?」


どうしよう?セフィさんは決して悪い人ではないのはわかってるけど、今の所どこまで信用していいのかわからないんだよね。


何とも困った顔をしているプリシアを見て、

セフィロスは続けてこう言った。


「初めてあった時にプリンはこう言ったね?"私は訳があって、あの村に居ました"・・・と。プリンはどんな訳があってガルド村にいたんだい?そもそもあの村の秘密を知っているのかい?」

「ガルド村の秘密?」

「そうさ、魔法の使用を禁止しているこの世界で、あの村が存在するその意味を」

「え?セフィさん、今何て言いました?・・・魔法が禁止されてる世界?」


「今更、何を言っているんだ?俺たちが生まれる前から決まっていた事じゃないか?・・・そうか、ただでさえ魔法を使える者は少ないとされているから、その事自体も知らない国や村があっても不思議ではないのかな?」


そう。この世界では魔法が禁止されているのだ。なので、実際は魔法を使える者がどの位存在しているのか判っていない。確実に少ないのは事実なのだか。


「・・・ガルド村の人達は普通に使ってましたけど?」

「それこそが、あの村の秘密なんだ。村人達は全員魔法使いなんだよ。」

「村人全員が?」

「そうさ、魔法を使えないプリンには知らないのも無理もないけど、あの村は皇帝を倒すべくして、出来た村なんだよ。」


え?・・・・・・・・どうしよう。私、魔法使えるんですけど。

これも、セフィさんには言わない方がいいのかな?


「なぜ、皇帝を?」

「なぜも何も、魔法を禁止しているのが、その皇帝だからさ。」

「なぜ、そんな事を?それに、なんで、セフィさんが、ガルド村の秘密を知っているんですか?」

「プリン、ちょっと待ってくれ。落ち着いて。そんなにいっぺんに質問されても答えられないよ。」

「あ、ごめんなさい。私ったら。つい。」

「なんか、切羽詰まっているのかい?」

「実は私、記憶を失ってしまっているみたいなんですよ。そこをたまたまゲイルさんに、助けてもらったと言う訳なんです。」


まだ、私が魔法を使える事と、ゲイルさんに助けてもらった本当の理由を教えるのは伏せて置いた方がいいよね?・・・まんざら、嘘でもないし。


「そうだったのか。今日はもう遅いから、寝よう。さっきの質問は、明日コッカラ村に着いたら、答えよう。」


「・・・はい。分かりました。」

「おやすみ。プリン。」

「セフィさん。おやすみなさい。」


そうして、夜は更けて行った。








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