001 少女と記憶喪失と
初作品です。お手柔らかにお願いします。
意識がまどろむ中、記憶を手繰る。
「私、なにしてたんだっけ?いつの間に寝たのかな?」
思いだしていると、微かに声が聞こえてくる。
「・・・るか?」
だれ?何を言ってるの?
「ちゃん、聞こえるか?」
さっきよりもはっきり聞こえてくる。
「おい、嬢ちゃん、大丈夫か?聞こえるか?」
誰かが、身体を揺すりながら声を掛けてくる。
それと同時にびっくりして、目をあけて身体を起こす。
「良かった。嬢ちゃん大丈夫か?」
「・・・はい、大丈夫です。」
「なんで、こんな所で寝てたんだ?馬車に轢かれてしまうぞ」
・・・ここどこ?ってか、何この状況!?
それもそのはず、彼女は馬車道の真ん中に倒れていたのだ。
「すみません。ここどこですか?」
「どこって、ここは北にいけばガルド村に続く道の途中だ。」
そう言ってきた人を見ると、30前後の細身の中世貴族を思わせるような格好をした男の人だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?
「ガルド村って?ここは日本ですよね?日本であるべきです。日本じゃなきゃ困ります。」
パニクった。パニックになっているせいで、言葉が変になっている事にさえ気づいていない。
それもそのはず、見た事のない風景、男の格好、そして聞いた事のない村の名前が出てきて理解が追いつかない。
「ニホン?どこの大陸だ?悪いが聞いた事がないな」
「本当に大丈夫か?なんなら、ガルド村まで、私の馬車でおくるぞ。嬢ちゃん名前はなんて言うんだ?」
「名前ですか?私の名前は・・・」
「・・・あれ?私の名前、何でしたっけ?」
「おいおい、私に聞かないでくれよ。記憶が混乱してるのだろう。・・・そうだな、仮にプリシアとでも名乗っておけば良かろう。」
「プリシアですか?」
「ああ、''小さき者,,と言う意味だ。」
そう言って、馬車へと促す。
名前からして、やっぱりここは日本じゃないんだ。
どーしてこんな事になったのか、やはり思い出せない。それどころか、自分の名前すら思いだせないのだ。焦る、兎に角、焦る。目の前の人は決して悪い人には見えない。だが、素性も知らない人と二人で馬車の中も耐え難い。
「ありがとうございます。あの、お名前をお伺いしても?」
「おや、これは失敬。私は、ゲイル=インゲート=ガルド」
「ガルド・・・さん?」
「そうだが?・・・ああ、ガルド村は私の曾祖父が開拓した村だ。私はその村を管理させてもらってはいるが、本職はまた違う。」
「やはり、村に関係ある方だったのですね。」
「村に着いたら宿を用意させるから、少しゆっくりしたらいい。」
「ありがとうございます。しかし、なぜ見ず知らずの私にこんなに親切にして下さるんですか?」
「実は今日、あの場所、あの時間に、歴史に関わる何かがあると神託があったのだ。まさか、人を拾うとは思わなかったがな。」
「・・・神託ですか?」
「そう。神託だ。それも、巫女長様直々に。」
詳しく聞いてみたら、どうやらこの世界では、宗教が複数存在していて、それぞれの神を祀る協会があり、そこで働く巫女達を束ねる長として、巫女長なる職種があるらしい。そしてこの巫女長は神に次ぐ権力を持っているらしい。皇帝や王様ですら、頭が上がらないとの事だ。
「ちょっと待って下さい。さっき歴史に関わると仰いましたね?私がですか?そんな事いわれても何もできません。」
「まあ、そう言うな。今は自分に出来る事だけをやっていけばいい。どの道行く宛も所持金もないのだろう?」
「あぅ・・・」
そうだ。お金はおろか何も持っていない。着の身着のままなのだ。再び不安と焦りが押し寄せてきた。
「ほら、ガルド村が見えてきたぞ。」
「私、これからどーなっちゃうんだろう。」
プリシアはそう小さく呟くのだった。