第1章7 猿山連合国 上
『登場人物』
水瀬 りの
現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
アリア
りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。
【本編】
りのの制服をさるが持って行ってしまった為、りのとアリアは後を追う。
そこで見つけたのは、看板で、看板にはこう書かれていた。
「ようこそ!猿山連合国へ」
この看板を見たりのは、アリアに質問する。
「・・ねぇ?これ何?」
「いやいやいや。見ての通りじゃろ」
「ここって国があったの?」
さる達に見つからないよう、木の後ろに隠れながら再度りのはたずねる。
「これって・・日本語・・て事は日本人がいるのかしら?」
アリアはりのの頭の上に乗ってきた。
「こないだも言っただろ?国を作るのは簡単だと。あのさる達はここに国を作ったのじゃろ」
「・・私だって作ったし」
りのは考える。
ここはさる達が作った国のようだ。
もしここに、自分達が入れてもらっても意味がないと、りのは悟る。
ここは元からある国だ。
神様との約束は、この荒野に自分の国を作るという事。
つまり、ここはさるが作ったものであり、自分のものではない。
お前のものは俺のものなんて、私はジャイアンではないのだ。
りのがアニメで例え、考え事をしていると、アリアが補足する。
「この看板も、あのさるたちが書いたものだろう」
「え、ええええ!!さ、さるって日本語が書けるの?」
「そりゃぁそうじゃろ。お主らの先祖ではないか」
確かにそうなのだが・・それで・・納得するしかないか。
りのは考える事をやめた。
読める字なのは、りのにとってもありがたい事なのだし、何より看板が重要ではない。
食べ物を少しでも、わけてもらえないか、交渉しないといけない。
刺身しか口にしていないので、さすがにヤバい。
「ねぇアリア?どうにかしてバナナをもらえないかしら?」
「もらう為には、お願いする事が1番手取り早いんじゃないか?」
どうするか、考えていたりのとアリアは、再度木の後ろから覗きこむ。
さる達が、りのの制服をジロジロ見ているようだ。
すると、1匹のボスざるらしきさるがやってきた。
ボスざるは、りのの制服をクンクンと嗅ぎ始めた。
「ああ!わ、私の制服に!な、何て事を」
りのは、バッと立ち上がり、さる達の所に駆け出そうとする。
「ま、待てりの!気持ちはわかるが、おさえるんじゃ」
女性がされて嫌な行動TOP10には、確実に入る行動をされたりのは泣きそうになる。
アリアも女の子なので、気持ちがわからない訳でもないのだが、このまま突っ込んだら大変だと、りののほっぺたを連打する。
しかし、次のボスざるの行動を見た2人は、固まってしまう。
ボスざるは、制服をつまんだかと思うと、鼻をつまみながら、ポイっと後ろに投げ捨てた。
りのは絶句し、プルプルと震える。
「ちょ、ちょっと!アレじゃまるで私が臭いみたいじゃない!!」
りのは猛抗議する。
「そ、そうだな・・アレはヒドイな・・」
「でしょ!!って何で私から離れようとするのよ!」
「じょ、冗談じゃ。こ、こら泣くな!」
アリアは流石にやりすぎたと反省する。
アリアは気まずくなる前に話題を変える。
「と、とにかく、何とかしてバナナをもらえないか、考えよう」
りのは、まだ文句がいい足りないが、そっちの方が重要な事なので、反論しなかった。
しかし、さる達にお願いするにしても、どうすれば良いのだろうか?
言語が通じるとは思えない。
お助けアイテムを使ったとして、コンニャクが出てくるはずがない。
アリアは妖精であって、ネコ型ロボットではないのだから。
念の為、アリアに確認をする。
「ねぇアリア?アリアはさる達と会話できないの?」
「できるはずがないだろ」
「そうよね・・どうしようか・・ってゴン太は?」
さっきまで後ろにいたはずなのに、ゴン太の姿が見当たらず焦るりの。
すると、何やらさる達が騒ぎ始めた。
嫌な予感がして、木の後ろから覗きこむアリアとりの。
予感は的中する。
ゴン太が、さる達の群れの中に入っていたのだった。
甘い匂いにつられたのだろうか。
ゴン太はさる達の群れの中に入って、何やらさわいでいる。
モー、ウキー、モーモー、ウキキ。
何を言っているのか全くもってわからない。
しばらく様子を眺めていると、さる達が泣き出し、ゴン太の前にフルーツの盛り合わせがだされた。
ジーっとその様子を眺めていた、りのとアリアは歓喜する。
どうやら、ゴン太が話しをつけてくれたようだ。
今度からもう少し、ゴン太に優しくしようと心に誓い、りのとアリアはゴン太の元へ駆け寄った。
「ゴン太!よくやったわ」
りのは賞賛の言葉をかける。
「さすがじゃ!いゃぁ、ペットは飼い主に似るっていうのは、どうやら本当のようじゃ」
アリアがご機嫌な声で、ゴン太を賞賛する。
りのとアリアを見たさる達は、両手を頭上で叩きながら、りのの周りをぐるぐると周り始めた。
まるで、かごめ、かごめ、と歌を歌いたくなる光景に、りのは戸惑いながら、アリアにたずねた。
「ね、ねぇ。これって歓迎されてるんだよね?」
「そ、そうじゃろ?もの凄い笑顔ではないか」
アリアの言う通り、さる達は笑顔で、両手を叩きながら、ぐるぐる周りつづける。
りのはどうすれば良いのか解らず、正座して、さる達の様子をうかがっていた。
ちらっとゴン太を見ると、モグモグとフルーツを食べているのだが、りのとアリアの目を見ようとしない。
しばらくすると、奥からボスざるがやってきた。
ボスざるの手には、草で作った、特性のアクセサリーらしきものを持って現れた。
「ね、ねぇ。アレってブレスレットのつもりかしら」
「どうやらそのようじゃな。りのに求愛するのやもしれんな」
アリアの冗談ともとれない発言に、りのは固まってしまう。
私はアイドルだ。
誰かと付き合う気はまだない。
さると付き合うなんて事じたいが、おかしいのだが、今のりのはパニックに落ちていた。
パニックになっているりのの右腕を、ボスざるが掴んだ。
どうしようかと戸惑うりのに、アリアが肩の上からアドバイスをくれた。
「ここは我慢じゃ。フルーツを食べさせてもらうまで、下手な事はせんほうがええじゃろ」
確かにそうだ。
下手に抵抗して、喧嘩にでもなったら、怪我をしてしまう。
大人しくしておこうと、心に誓ったりのの右手に、草でできたアクセサリーらしきものがはめられた。
子供の頃、りえと一緒に作ったっけ。
花の冠とか、首にぶら下げるやつとか、こうやって手首にはめる腕輪とか。
りのが懐かしんでいると、今度は左腕をつかまれた。
両手に草でできた腕輪を、はめられたりのの両手を後ろにもっていくさる達。
「ねぇ?これってまずい気がするんだけど」
ようやくりのは、今の状況が異常だと悟る。
これではまるで、手錠をかけられた犯人みたいではないか。
りのが声をだそうとしたその時であった。
さる達が、一斉に鳴き出し、地面を両手で叩きはじめたのだ。
まるで、お祭りでも始まりそうな雰囲気だ。
「り、りの!!まずいぞ!!」
アリアが慌ててりのの鼻先にやってきた。
「ずっとまずい状況じゃない!!」
「冗談言ってる場合か!!向こうから、刃物をもったさるがやってくるぞ」
その言葉に絶句してしまう。
どうやらさる達は、りのを傷付けようとしているのだった。
次回 第1章7 猿山連合国 下
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて、今回はいかがだったでしょうか?
草でできた腕輪を思い出した時、自分が作ったりしていたのは、幼稚園か小1の頃だったか・・忘れてしまいました。
恐らく、今作れと言われて作れる大人の人は(幼稚園の先生以外)いないんじゃないでしょうか。
もしくは、もう作って遊ぶ事じたいなくなってしまっているのかもしれません。
あまり長くなってしまってはあれなので、この辺で。
では次回もお楽しみに。




